エルフの雑貨屋さん。

猫野 尻尾

第1話:ファーゴット雑貨店

ここはアルフヘルムって国のアルモース地方の片田舎。

その村はずれに一軒の雑貨屋さんがあった。

元はエルフの老人が営んでいた店だったが今は孫娘があとを引き継いでいる。


その雑貨屋さんの名を「ファーゴット雑貨店」といった。


店主の名はエルフの少女「マーテルベル」

「マーテルベル・ファーゴット」

マーテルベルの年齢は人間界で言うと17才。


店は雑貨を中心に諸種雑多な日用品を扱っていた。

あまり繁盛しているとは言えなかったが、この店にない品物はないと言われた。


それはマーテルベルのおじいさんエランドルがドワーフから手に入れた

「なんでも箱」と言って、「本当の名前は誰も知らない、マーテルベルが

そう呼んでるだけ」

欲しい物が箱から現れるという魔法の宝箱を持っていたからだ。

もちろん箱より大きなモノは出せないんだけど・・・。


魔法の箱について、どうやってエランドルが手に入れたかは、またのちのち

出てくることになります。


今のところ魔法の箱のことはマーテルベルと小間使いのドワーフしか知らない

ことだった。

店には、今言った執事みたいなことをしているドワーフがひとりいる。

ドワーフの名は「スモールアンクル」


彼は、おじいいさんが生前どこからともなく連れてきたドワーフ。

店に来た時は彼に名前がなかったからマーテルベルが「スモールアンクル」

と名付けた。

それ以来、スモールアンクルはマーテルベルに忠実に支えていて、兼、

彼女のボディーガードも務めている。


「スモールアンクル・・鉢植えに水やりしてくれた?」


「あ、忘れてました」


「ちゃんとあげてね・・・お花が枯れちゃうからね」


店の入り口のドアの両方に何鉢か鉢植えが置いてあった。


「それにしても今日もいいお天気ね」


そう言ってマーテルベルは背伸びした。

今日も雑貨店には客もあまり来ないだろう的、暇な1日が始まろうとしていた。


「おはようマーテルベル」


「あ、おはよう、オリバー」


朝早くから、自転車に乗って雑貨店にやってきたのは牧場の息子

「オリバー・ブルームズベリー 」

彼はエルフではなく人間の青年。

彼の両親は牧場を営んでいて、彼は朝早く牛乳配達を手伝っている。


正直者で好青年でのんびり屋でマイペース。


マーテルベルとは幼馴染。

ってことで彼も歳は彼女と同じ17才。

マーテルベルは密かにオリバーに好意を持っていた。


「毎朝、ご苦労さま」

「おじさんとおばさん、元気?」


「ああ、元気で牛の世話してるよ」


「ねえ、牛乳配達終わったら、お店に寄って?」

「美味しいお茶、ごちそうするから・・・」


「分かった、かならず寄るよ・・・じゃ〜ね、行ってくる」


「気をつけてね」

「時々、ゴブリンとか、うろうろしてるからいたずらされないようにね」


「ほ〜い」


マーテルベルは自転車に乗っているオリバーも好きだった。


「いつまで見てるんです?」


ドワーフのスモールアンクルが言った。


マーテルベルはクスッと笑った。


オリバーは牛乳配達のあと、雑貨店に寄って、お茶をおよばれてして

マーテルベルといっぱいしゃべって、また自転車を漕いで帰って行った。

オリバーもこのひと時が好きで、彼も密かにマーテルベルに好意を持っていた。


まあ、それがふたりの朝のルーティーンだった。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る