目の前で可愛らしいロリやショタが闇深く染まって行くのは、見過ごせないわよねー。
あら、怒らせちゃった☆
「でも、アストレイヤ様? 子供の一人二人じゃ済まないのですよ? うちの使用人達の衣食を賄わないといけませんからね。それに……」
「……なんだ、言ってみろ」
ムスッとしたハスキーが続きを促す。
「今、神殿は大変なことになっているとお伺いしました。神殿が経営していた孤児院や救貧院は現在、どのような状況なのでしょうか? 兄のことが契機になっているそうなので、彼らが苦しい思いをしているのでしたら、少々責任を感じてしまいます」
「チッ……全く、本当にお前は子供らしくないことだな? そうだ、ネレイシア。お前の言う通り。既に孤児院や救貧院では影響が出始めている」
苦々しい肯定。
やっぱりか・・・一応、あのド変態神官が捕まったことで、ロリっ子やショタっ子に手ぇ出すクソ外道共が芋蔓式で捕まった。もしくは、破門措置を取られることになったのだろう。犯罪者共が減った。それ自体はいいことだ。
けれど、その捕まった彼らが孤児院、救貧院の経営に携わっていたりすると、管理者不在という形になり、経営に悪影響が出る。大人自体が施設からいなくなっていたら、施設内の子供だけで頑張らないといけなくなる。または、管理者の長期不在を格好のチャンスと見て、地上げ屋などが横行することも考えられる。
経営者不在が数日から半月、長くても一月……程度なら持ち堪えられても、それ以上になると色々と悪影響が出て然り。今は、あの事件からは既に半月程が経っている。どうにか管理者以外の大人や子供達だけで頑張っていても、犯罪者達に目を付けられるとかなりまずい。
そろそろ、なにか問題が上がって来ていてもおかしくはない。
シビアな話、一番は食料問題だろう。代金が支払われなければ、品物は入って来ない。最悪、餓死者が出る。
「最低限、死者が出ない程度の支援はするように手配済みだが……神殿側も大わらわで、どうするのかという見通しは立っていない状態だ」
「では、孤児院や救貧院の立て直しをわたくしとネロに任せては頂けませんか? その、わたくし達だけでは不安だと仰るのでしたら、アストレイヤ様かライカ様のお名前をお貸し頂ければと思います」
「え? 僕っ?」
「はい。今回は時間が惜しいですからね。わたくしとネロの名前で、大至急動いてくださる方がどれだけいるか……」
ま、ネロリン信者の人達は迅速に動いてくれちゃうかもしれないけど。あの人達、基本使用人だから。そんなに権力を持ってるワケじゃないのよねー。彼ら彼女らの実家が貴族家だとしても、跡取りじゃない人がうちに来てるワケだしさ? 貴族子女ってことで、ちょびっとだけ堅気じゃない人達の牽制にはなるかもだけど、実権がなきゃ本格的に動くのは難しい。
「いいだろう。わたしが後ろ盾になってやる。ライカ、シエロ。お前も協力してやれ」
「はい。わかりました」
「わかりました。母上」
「では、三人で相談してどうするか決めろ」
うっし! アストレイヤ様の後ろ盾の下、ライカとシエロたんこと蒼。そして、ネロリン(ネロたん&ネリーちゃん)ことあたしの合同で孤児院や救貧院立て直しプロジェクト始動!
アストレイヤ様の執務室。
三人寄って立て直しプロジェクトの相談しろとのお達しなので、同じテーブルに着くと・・・
「ネレイシア。ネロは呼ばなくていいの?」
不思議そうにライカが聞いた。
そう言えば、まだライカには教えてなかった。気付くまで黙っている方が面白そうではあるけど、暫くは一緒に行動することも増えるだろうし。仕方ない……
「あの、ライカ様」
と、手招きしてひそひそとライカに耳打ちをする。
「実はわたし、ネロなのです」
「は? 今日は入れ替わっていた、ということ?」
う~む……やっぱり、ライカはネロたんよりもネリーちゃんの方がお気に入りらしい。若干、声に不機嫌成分が混じり始めた。
「いえ……その、これは内密にお願いしますね?」
「内容による」
なんてやり取りを、心配そうに見守る蒼へ微笑みを返し、ライカへ説明をする。
「実は……妹のネレイシアは、乳児の頃に亡くなっているのです」
「っ!!」
「この格好は、クソ親父にそのことがバレるのを恐れた母が、わたしにネリーの代わりをさせたのが始まりです」
「母上は、このことを?」
「ええ。知っていて、わたしとネリーを養子にしてくださいました」
「・・・母上が、知っているなら。僕は、なにも言わない」
「ありがとうございます、ライカ様」
「・・・シエロは、このことを知っているの?」
「ええ。わたしのことを信用して頂くために、最初に教えました」
「知らなかったのは僕だけ、か……」
あら、なんだか落ち込んじゃったかしら?
「知る人は、少ない方が宜しいことなので」
「なぜ、君はその格好を続けているんだ? もう、その必要はないだろう」
その方が便利で面白いから! というか、どちらかというとあたしの精神安定の為って感じも含むかしら? ま、それは言わないけど。
「物心付く前から、わたしはこうしてネリーと一緒にやって来たのです。なので、もう少しだけ。わたしからネリーを取り上げないでください、とアストレイヤ様へお願い致しました」
「・・・わかった」
コクンと頷くライカ。幼少期のキラキラぷにショタなライカは、素直でいい子だ。これが、大人になると鬼畜美青年になるのか……
ヤンデレスキーな腐女子としては、美形なヤンデレ男子(無論、BLに限る!)もいいっちゃあいいんだけど・・・やっぱり、目の前で可愛らしいロリやショタが闇深く染まって行くのは、見過ごせないわよねー。ということで、やっぱり『ライカ健全育成計画!』は、なんとしても成功させなきゃっ!!
「ありがとうございます、ライカ様」
微笑んでお礼を言うと、
「……やっぱり、ネレイシアは君なのか」
少し複雑そうな顔を見せるライカ。
「お話は終わりましたか?」
少し困ったように割り込むシエロたんこと蒼。
「うん」
「ええ。では、立て直し計画の話を始めましょうか」
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