ねーちゃんを思い出さなきゃ、ネロは普通にものすっごい天才少年だったのかっ!!


『うえ……そんな酷いのかよ? ねーちゃん、本当に大丈夫か?』

『大丈夫大丈夫。お姉ちゃんね、確実にネロリン信者を増やして行ってるから』


 グッとサムズアップすると、不思議そうな顔。


『なに? そのネロリン信者って』

『ネロたんとネリーちゃんを、慈愛の天使の如く崇め奉ってくれてる人達。滅多なことじゃ裏切らない味方……と言っても過言じゃないわね。かなり使い勝手よし』


 ネロリン信者の内訳としては、以前うちの離宮に勤めてた人や、その親族達。及び、ネロリンのこの幼いながらも妖艶さ漂う神秘的な美貌に魅入られた人達などが中心となっている。ちなみに、身の危険などはあまり感じない。なんせ、彼らはネロリンを天使のように崇めているから!


『マジもんの信者じゃねーかよっ!?』

『いや~、ほら? ネロたんとネリーちゃんが慈悲深いって噂あるでしょ。あれ、割と事実なんだわ。あのクソアマの癇癪で死に掛けた人やら大怪我した人に腕の良い医者手配したり、手厚く福利厚生を実行して慰謝料を包んだりして、離宮から逃がした人の次の職業斡旋までしたらもう、めっちゃ慕われちゃってねー? ネロリン信者爆誕☆』


 まぁ、ガチの狂信者を出さないよう、常に気を配っとかないといけないのがちょっとネックかしらねー? ネロたんorネリーちゃんとしてのあたしの動きを邪魔されると困るし。話の通じない人特有の独善的で勝手な判断されて、シエロたん……蒼の排除に動かれても困る。


 だから、アストレイヤ様がシエロたんのことを気に入ってくれて本当に助かるわ♪


 手綱は確り握っておくつもりだけど、万が一ということもあり得る。もし、ネロリン信者が狂信者になって変な暴走しても、止めてくれる可能性が高いものね!


『・・・なぁ、ねーちゃん』

『なぁに?』

『それ、やったのねーちゃんだよな?』


 恐る恐るという風な蒼の質問に、


『ノンノン、あたしを思い出す前のネロたんが全~部一人でやってたことよ♪』


 人差し指を横に振って答える。


『天才かっ!?』

『ホントよねー? あたしも思ったわ、ネロたん天才かっ!? って。ちなみに、我が側妃宮の管理はネロたんが三歳の頃から一手に請け負っているのです。あ、あたしがあたしを思い出したになったのはついこないだね?』


 シエロたん……【愛シエ】のことを思い出したときだから、そんなに前じゃない。


『マジもんの天才だっ!? なんて、ことだっ・・・そんな天才なネロが、ねーちゃんみたいなヤンデレスキーな腐り切った腐女子に乗っ取られるだなんてっ・・・ガチで世界の損失じゃないかっ!! 可哀想過ぎるだろっ!?』


 なにやら心底悔しげな蒼。


『いやねー? 乗っ取ってないわよ。異世界ものでよくある憑依って感じしないし。ネロたんは死んでないわ。茜だった頃前世の記憶を思い出して、なんかこう……いろんな意味ではっちゃけただけよ☆つか、そう言うアンタの方こそ、シエロたんを乗っ取ったの?』


 以前のネロたんとビフォー現在のあたしアフターでは、多少性格や価値観諸々が確実に変わってはいるけど、ネロたんとしての継続した記憶があるし。同一の存在だと思う。蒼の方もそうだと思うけどね? 違うのかしら?


『ぁ~……そう言や、俺の方も、自分が蒼だったってことを思い出しただけだな。ちゃんと、シエロとして育った記憶もあるし』

『ま、そういうことよ』

『そう、か……ねーちゃんを思い出さなきゃ、ネロは普通にものすっごい天才少年だったのかっ!!』

『そうねー? あたしを思い出さなきゃ、ネロたんはシエロたんへのブラコンを拗らせた闇深~いヤンデレリバース男の娘になっちゃう可能性が高いんじゃないかしら? 天才! なネロたんに狙われてたら、アンタ逃げ切れそうにないわよねー。ほら? ネロたんルートで、ネロたんが国王になってシエロたん囲う話あったし? シエロたんとのリバカプはネロリンルートだけなのよねー? 蒼を思い出す前のシエロたんは、ネリーちゃんと会う選択しちゃってるし。あのままだと、ネリーちゃんかネロたんルート確定かしら?』


 なにげに、クソ親父ことレーゲンやライカがシエロたんに耽溺して国政を蔑ろにする国王になってるより、ネロたんが国王してる方が国が上手く回ってたりして? ネロたん、元々は慈悲深い性格してるし? シエロたん関係やその他の地雷を踏まなければ、そんなに無茶なことはしない……ような気がする。とは言え、メンヘラなネロたんならある種の恐怖政治に近いかしら?


 まぁ、ネロたんの生い立ち考えるとねー? 父親には無関心で一切不干渉を貫かれ、母親には父親が無関心であることを理由に疎まれ、暴言を吐かれ続け、ヒスを起こした母親の後始末をさせられて、亡くなった妹の身代わりで女装をさせられて……ある意味、シエロたんより寂しい思いをしてた子だと言える。


 ホンっト、ネロたんは凄い。茜だった前世の記憶あたしを思い出すまで、よく心病まずに育ったものよ。ネロたん健気! ネロたんマジ偉い! 誰がなんと言おうと、あたしがネロたんのこれまでを肯定して、絶賛誉め捲る! よく頑張ったネロたん!


『いやぁ、前世のお姉様とまた再会できて、俺は世界一幸せ者だと思います!』


 キリっとした……かなり必死な顔で蒼が言う。


『素直で宜しい。ま、考えてみると……今の状況からして、おそらくはまともに教育を受けてはいない状態で、側妃とその実家に第一王子、ストーカー騎士、国王、正妃、正妃の実家までをも全て排除。または無力化した上で、シエロたんを囲う為だけに国王にまで上り詰めるんだから。ネロたんは本当に天才! だという可能性が高いわね~?』

『ねーちゃん! このままずっと俺のねーちゃんでいてくれっ!!』

『はいはい、妖艶美ショタなネロたんの中身は、ちゃ~んと蒼のお姉ちゃんの茜で。お姉ちゃんはアンタの味方だから、安心なさいな』


 なんて話して、蒼と別れた。


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