元支援特化の最強大賢者

ココア餅大福

プロローグ

「こいつを倒すのに1分32秒か・・・。まだ、あの世界には及ばない。どうしたらさらに強くなれるだろうか・・・。」


 俺ことラジアードは今、とても悩んでいる。

 惑星最恐のダンジョンと呼ばれる「アルサンド迷宮」の最下層である987階層の階層主「コラプス・シャドウドラゴン(別名:神殺しの龍)」を約1分半で攻略したのだが、俺自身が納得していないのだ。

 そのドラゴンの死体は白く凍りつき、形が潰れて原型をとどめなくなっていた。それでもその死体の高さは30メートル近くある。

 まあこのレベルのドラゴンをこんな速さで攻略する人間など俺以外に存在しないはずだが、俺からするとあまりにも遅すぎる。

 噂話で聞いた話だが、この惑星の外に存在する宇宙や今いる空間や別の「妖魔界」と呼ばれる空間の魔物はこのドラゴンが足元に及ばない程強力な魔物が存在するらしい。中にはこのドラゴンが数百体いても敵わないものがいるのだとか。

 俺はその存在すら軽く凌駕するような存在を目指している。つまりこの程度の魔物に1分半もかけていたらその世界の魔物と戦っても話にならないだろう。

 そういう俺はある意味、「戦闘狂」なのかもしれない。

 だからと言って永遠に鍛錬を続けたとしても、俺はその世界の魔物の足元にも及ばないだろう。

 そして、その原因はもう分かっている。その原因も主に2つあると思うが、そのうちの1つが、今の俺の属性である「支援特化属性」にあるだろう。

 この惑星の人間には生まれつき、魔法の性質が4種類に分けられる。回復魔法や支援魔法特化の「支援特化属性」、比較的遠距離の攻撃魔法に長けている「遠距離魔法特化属性」、比較的中距離の攻撃魔法に長けている「中距離魔法特化属性」、近接攻撃に使用する補助魔法に長けている「近接特化属性」の4つの属性のことを示している。

 詳しく説明すると・・・・・・、


 まず、「支援特化属性」は回復魔法や結界魔法、援護魔法に特化している。初期の頃から多数の支援系魔法を取得できるため、最初こそ最強の属性だが、他の属性より攻撃系の魔法を覚えることを圧倒的に苦手としている為に成長率がとても低く、戦闘には弱い。だが、支援魔法に特化しているだけあって、パーティーには重宝される。


 2つ目の「遠距離魔法特化属性」は長射程の魔法を扱うことに特化している。魔法の連射にあまり向かず魔法を撃つのに時間がかかるが、鍛錬することで魔法の射程と威力が際限なく上昇するという特性を持つ。狙撃に向いているため、射撃パーティーに重宝される。


 3つ目の「中距離魔法特化属性」は中射程の魔法を扱うことに特化している。ある意味、「遠距離魔法特化属性」とは対照的な属性だ。

 つまり、鍛錬しても射程があまり伸びないがその代わりに連射速度と魔法の威力が際限なく上昇するという特性を持っている。様々なパーティーに採用される汎用的な属性だ。


 最後の「近接特化属性」は剣術などと魔法を併用して戦闘するのに特化している。「遠距離魔法特化属性」や「中距離魔法特化属性」を足して2で割ったような存在だが、文字通り射程がたった5メートル程しかないため剣や槍などの武器を使いながら魔法を扱うような属性だ。

 他の武術と魔法を併用できなくてはいけないため、扱うのが最も難しい。だが、連写速度も魔法の威力も他の属性とは圧倒的に高く、使いこなせば最強性能の属性となる。精錬された技術を持つ者はとても重宝されていた。


 そう思った俺は根本的な属性を変えようも考えた。だが、よく考えると遺伝子レベルに刻まれた「属性」というものを変えるということは魔法では実現不可能な時間遡行をするのと同じことだった。つまりそんなことはいくら努力したって無理だろう。

 それからも今という時まで戦闘経験を積み重ね、さらに強くなろうと試みたが、何のヒントも得られなかった。

 そして俺は最終手段に入った。人は生まれたから魔法の属性が決まっているのなら、新しく生まれ変わればいい。それは確実な手段だった。

 俺はそんな魔法を開発する。記憶だけを来世に持っていくなら肉体だけを破壊すればいい。魂を保存しつつ死ぬことができる魔法を開発すべく、尽力した。

 ・・・あれから1ヶ月半後、俺は転生魔法を完成させた。

 そして、転生する前に中の良かった知り合いの元に手紙を送った。その手紙の内容は、

『さらなる実力を求めて転生します。またいつか会えることを願います。

 ラジアード 』

 その手紙を配り終え、俺は誰にも干渉を受けないように結界魔法を展開して、転生魔法を起動した。・・・・そうして俺は第一の人生を終えた。


 どうか、次の属性が「支援特化属性」以外でありますように・・・・・。



 ちなみに、もう一つの理由は俺はパーティーに属していなかった(破格の実力すぎて相手にしてもらえなかった)からだ。ある意味、集団戦術が取れなかった。

 ・・・・未来の社会では魔法も進歩して俺でも生きていけるだろう。

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