第51話 突然の襲撃
ドオオオン!
激しい爆発音に驚き、俺は慌てて飛び起きてテントから飛び出した。
するとなんと、ベースキャンプ全体が激しい炎に包まれていた。赤々燃え上がり、夜だというのにまるで昼間のように周囲を明るく照らしている。
ベースキャンプの外れにある俺たちのテントはまだ延焼を免れているが、これはきっと時間の問題だろう。
「坊主! こっちだ! 囲まれてんぞ!」
「え!? はい!」
ケヴィンさんの声のしたほうへ向かうと、そこにグラハムさんとアルバーノさんの姿があった。それからも続々とテントの中からメンバーが出てくるのだが、なぜかニーナさんとテオの姿はない。
「あれ? ニーナさんとテオは?」
「……火の中だ。それ以上は分からねぇ」
「え? どういうことですか?」
「テオがさっき便所に行ってな。一緒にニーナも行った。そんとき爆発があって、まだ戻らねぇ」
そんな……。
俺は不安に駆られつつも、燃え盛るテント群を見つめる。
……一体どうなってるんだ?
あそこには大勢の騎士たちがいるはずだ。それなのに叫び声一つ聞こえないなんて……。
「リ、リーダー! あれを!」
「どうした? うっ!?」
リナルドさんとケヴィンさんの声に思わず後ろを振り返った。
するとなんと! 森の暗闇の中に無数の赤い目が浮かび上がっている。
「え? モン……ス……ター?」
一体、何匹いるんだ!? 百匹? 二百匹? いや、もっとかもしれない。
というか、そもそも昨日まで影も形もなかったのにどうして?
あまりに不可解な状況に頭が真っ白になってしまう。
「クソッ! いいか! お前ら落ち着け! 武器を持て! 要らねぇ荷物は捨てろ!」
「皆さん、突破しますよ! 囲まれないよう火を背にし、スピネーゼの方向にベースキャンプを迂回します! ケヴィンに続いてください!」
「よし。お前ら! 俺に続け!」
グラハムさんの言葉にケヴィンさんも同調する。
「ちょっと待ってください! ニーナさんとテオは?」
「……置いて行く。このままここにいれば全滅だ!」
「そんな!」
「いいか? ニーナはCランク冒険者だ! 武器だって持って行った。ならニーナは自分で自分の活路を切り拓くはずだ」
「でも!」
するとグラハムさんが俺の両肩を掴み、真剣な目で俺を見てきた。
「レクスくん、いいかい? ニーナが戻って来られる状況ならば、とっくに戻ってきているはずだ。ということは、ニーナはこちらに戻らないほうが良いと判断したということだ。だから僕たちがまずやるべきことは、自分たちの身の安全を確保することだ。分かるね? このままここにいたら僕たちは全滅だ」
「……はい」
悔しいがそのとおりだ。あれだけのモンスターがいるのに、この人数でこのキャンプを維持するのは不可能だ。
「よし! 行くぞ!」
こうして俺たちは隊列を組み、スピネーゼの町を目指してゆっくりと移動を始めた。するとすぐに赤い目が動き、俺たちのほうへと向かってくる。
「来るぞ!」
暗闇から飛び出してきたのはフォレストウルフの群れだ。進路を塞ぐように現れたフォレストウルフたちをケヴィンさんとダニロさんが斬り伏せていく。
すると今度は俺たちの背後から二頭のワイルドボアが横に並んで突進してきた。
「俺が止めます!」
俺は剣にホーリーをエンチャントし、前に出た。タイミングを合わせて左のワイルドボアの突進を右に向かって躱しながら軽く一撃を与える。
ホーリーが起動したのを確認したらすぐにエンチャントし直し、今度は右のワイルドボアに剣を突き立てた。そのまま俺は剣から手を放し、ワイルドボアの体を蹴って上にジャンプする。足がワイルドボアの突進に持っていかれ、前につんのめるような格好になるが、それに逆らわずに空中で前転して着地した。
よし。上手くできたぞ。
正面を確認すると、やはり無数の赤い目が俺たちのほうを見ている。
「レクス! 剣だ!」
リナルドさんの声に振り返ると、ワイルドボアに突き刺さっていた剣をリナルドさんがこちらに投げてくれていた。
「ありがとうございます!」
俺は投げられた剣を受け取って正眼に構えると、森のほうを警戒しながらゆっくりとみんなのいる位置まで下がっていく。
「ようし、坊主。このままゆっくり行くぞ」
「はい」
こうして俺たちはゆっくりゆっくり進んでいくのだが、次々とモンスターたちが襲ってくる。それをなんとか防ぎつつ、ベースキャンプの縁を四分の一ほど進んだときだった。
突然頭上が明るくなり、そして――
ドオオオン!
隊列の真ん中で爆発が発生し、俺は吹き飛ばされてしまった。
「う……ぐ……」
一体……何が……?
全身からずきずきとした痛みが伝わってきて、同時に体が冷えていくのを感じる。必死に目を開けようとしているのだが、
これは……ヤバい。早く……ヒールを……かけなきゃ……。
「おい、こいつらは?」
男の……声がする……。
「冒険者のようです」
「そうか。そういえば、ペットが必要なんだったな。頑丈そうなのを何匹か持っていけ」
「ははっ!」
ペッ……ト……? 一体……何を?
「この少年も息があるようです。あまり頑丈そうには見えませんが、いかがいたしましょう」
「少年? ……ああ、ガキならちょうどいいな。それも連れていけ」
「かしこまりました」
俺は突然持ち上げられ、それと同時に激痛が走る。あまりの痛みに俺はそのまま気を失ったのだった。
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次回更新は通常どおり、2024/01/06 (土) 18:00 を予定しております。
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