2-4


 これを誰かが聞いてるんだとしたら、「いやいやこれだけ語って結局はそれかよ…」って言われそう。でも結局はそういうことになるよな?何をやっても中途半端な凡人の俺が一流以上…超一流になるには、えげつない量の鍛錬をして努力し続けるしかない。


 誰にとっても簡単なようで難しいこと。だけど、「今」の俺にとっては非常にイージーだ。あの古びた懐中時計で時間を巻き戻して、全てを引き継いだ状態で人生をやり直せるのだから!

 これってつまり、無限に努力が出来るってことじゃね?てかそうじゃん!

 リセットすれば若返るから、老いは全く気にならない。しかもリセットする度に強くもなれる。

 こうなってくれば救いようがないくらい無才で凡な俺にも、「一万時間の法則」が適用されるだろ!

 リセットしても努力が0になることが無い以上、諦めさえしなければ俺は誰よりもたくさん努力出来るということになる。いつか必ず超一流の次元に上りつめれることだろう…!


 てなわけで夢を実現する為にやることその一つ、たくさん鍛錬し努力をしよう…だ。

 あともう一つやること…というか心がけてくことだが、それは「自我わがままを通す」 だ。


 やり直し前の自分が陽キャか陰キャかと問われたら、自他共に陰キャと答えられる。ただ陰気なだけならまだしも、俺は自分を全く出せないタイプの陰キャだった。

 小学高学年ある時期までの俺は陽キャというかわんぱくキッズだった。けど6年生になってからは騒いで目立つことを恥じるようになり、悪目立ちを避けて慎み、親しい奴以外とはほとんど話さなくなった。

 あとカースト上位の同級生と揉めることも避けるようにした。別にそいつらが怖かったわけではなく、みんなが揉めるのを避けてたから。日本人あるある同調精神にやられたクチだ。

 結果俺はそれを拗らせてしまい、6年生の時も中学の時、さらには高校の時もカースト上位には強く出られずなすがまま、いつも溜め込んでばかりいた。

 

 あの内気を拗らせて溜め込んでたばかりだった学生時代を、凄く悔いた。もしやり直せるなら、遠慮なく自分を出してわがままになり、あいつらをぶちのめしてやりたい!大人になってからいつもそんな妄想をしていた。


 だから、俺はもう、陰キャにならない。溜め込んだりしない。自重すべきところは自重するけど、強さの本質ともとれるわがままを通してやろうと思う。適度に無敵思考になれば、意外と簡単にやれるもんだろ。

 大丈夫、未成年のうちならある程度のこと世の大人どもは目をつむってくれるさ!


 誰よりも鍛錬を積んで努力をし続ける。

 溜め込まない、自分を出しわがままも通す。


 これらを決して忘れず、改めて俺は人生を好き勝手に修正し、やり直してやる!!


 




 てなわけで、既に始めてしまってる2回目のやり直し人生、その中学生編。

 

 正直スクールライフ…授業やクラスメイトとの親交・交流については、ガチでどうでもよくて、テキトーに流して過ごしてた。


 このクラス…親しい友達がガチで一人もいない!3年5組、俺史上いちばんのハズレクラスだったと言っていい。中1中2のクラスで仲良かった同級生が、見事に一人もいないのだ。クラスの女子も可愛いかと聞かれたら「うーん……」だし。そしてムカつく陽キャで不良でもあるクソ男子、尾西がいる。ああもう、最悪だよマジで!

 そんなハズレクラスなわけだから、俺は昼休みと放課後以外はずっとぼっちで過ごしていた。昼休みになったら仲が良い同級生がいるクラスにお邪魔して、そこで昼飯を食うようにしていた。

 たまに自分の教室で昼飯食うことあったが、その時はあぶれ者同士の男子と一緒になった。中学当時は教室でぼっち飯してると担任の先生に心配される強制イベントが発生するから、それを回避するべく必ず誰かと一緒に食うようにしていた。

 

 ――とまあ、これだけでもこの頃のクラスが俺にとって地獄だったか、大体想像出来たと思う。自分の教室にいる間はほぼ虚無になって過ごした。それはやり直し人生でも同じとなり、修正しようとも思わなかった。


 ただ一つ良かったことを挙げるなら、勉強がガチクソ楽だったってこと。やり直し1回目の時は約15年ぶりの中学の勉強ということで、かなり苦労させられた。何なら中1の基礎にすらつまづいてしまい、いち時期は先生や親に本気で心配された。

 けど「今」の俺は高校2年生までの学習をおさらいしたばかりだから、この頃の勉強なんて余裕楽勝。お陰様で中学の学習内容はほぼ完ぺき、テスト勉強してなくてもテストで高得点とることが出来た。

 さらには勉強が不要になったことで小学から通っていた学習塾も辞めれた。お陰でより多く自由な時間が確保出来た。


 この点に関してはマジでありがたかったな。学校の基礎学科なんて社会に出てからはほとんど使わなくなる。正直勉強なんて無駄な努力としか思えない。だからこういうめんどくさい努力が無くなるのはホントにありがたかった。お陰でより一層やりたいことに時間を割くことが出来るから!


 そんな味がほぼ無いスクールライフを漫然と送っていた。ただし、それはやり直す前の時に限る。

 前回に続き今回の中3スクールライフでは、俺に関して波風が立つ事が色々あった。その内容のほとんどが、カースト上位のクソ男子どもとの衝突である。


 「3年5組の松山祐有真は~~~!小学5年の時、コンビニで万引きしたことがありました~~~~~ぁ!wwwww」


 夏休みに入る前のこと、2組の山峰が同じ野球部やその他取り巻きを連れながら、廊下でそう言い広めやがった。

 今回のやり直しで俺はあいつを一対一の喧嘩で叩き潰してやった。それを恨んで今度は暴力でなくそういった陰湿なやり方をとって、俺を精神的に追い詰め社会的に潰しにかかってきたというわけだ。


 「………はぁ。否定できひんのがまた質悪いんよなー」


 山峰が言いふらしてる内容は実は本当で、俺は小学5年夏頃に万引きをして警察に補導されたことがある。

 しょうもない出来心だった。当時よその府営住宅に住んでる同級生たちと遊んでた時のこと。ちなみにその中に山峰もいた、小学時代はあいつと割と遊んでいた。

 でそんな中遊びと称してふざけて万引きしようって流れになって、俺が先陣を切って近くのコンビニでパクりをしてしまった。でその後店長に見つかり、警察に通報された。

 事件というか黒歴史はそこで終わらない。一部始終を目撃していた山峰らの誰かが後日小学校で喋ってしまい、さらに当時通っていたサッカークラブにまでも伝わってしまった。クラブには里野もいて、万引きのことを知ると俺を盗人だのと散々貶めてきた。結果肩身の狭い思いをすることになり、クラブを辞めることになった。


 以上が学生時代最大の黒歴史の概要になるわけだが、今になって山峰がそのことを蒸し返してきやがった。やり直す前の頃には無かったイベントだ。あいつ喧嘩で俺に敵わないからって、今度は人の過去のトラウマをほじくりにきやがったな。

 この場面、当時の俺だったらどうしてたかな。「やってない」って嘘をつく悪手をとってたか?やりかねないし、そうなれば余計こっちの立場がまずくなって挫けてただろうな。



 けど「今」の俺は違う。精神は大人(のつもり)なんで、ある程度の対処法は心得てる。


 「なぁ松山ー?ホンマのことやんなー?」


 俺に気付いた山峰たちが詰め寄ってきて、悪意たっぷりに振ってくる。対する俺はというと―――


 「あー、あれ?いやー、あの頃の俺はやんちゃが過ぎとってなー。やってはいけない事に対する理解が全然なってなかったっていうか?ははは。

 まーあれから俺もの凄く反省したんよ。もうあんな馬鹿なことやらへんよ。

 松山祐有真、今もすごーーく、反省して過ごしてますっ!」

 「な……っ」



 全力で開き直り、テキトーにあしらってやった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る