クールな幼馴染が失恋したので相談に乗ったら婚姻届を渡されました

ブラックコーヒー

第1話 求める者

 僕の高校にはクールな天使が居る。普段は素っ気ないが、困っている人や先生の手助けをしてる姿を見た、特に男子から「天使」と呼ばれている。


 僕の幼馴染はいつの間にか天空を舞っていた。



「ふぅ.......終わった」

「お前はいつもその調子だな有馬」


 今日の授業を全て終えて、僕こと有馬隼也は近づいてきた親友であり憎きイケメン野郎の坂井春夜に話しかけられていた。


「坂井もお勤めご苦労様です」

「他人行儀だな、それより聞いたか?」

「何を?」

「お前の幼馴染が..........失恋したらじいぞ」

「へぇぇぇぇ」


 目の前に居る親友は下唇を噛んで少し不機嫌ながらも僕に一大ニュースを教えてくれた。何故一大かって?.....僕の幼馴染はこの学校の心臓だからだ。


「有馬、お前は何故悔しくないんだよ。あの天使が失恋したんだぞ」

「???......失恋したなら坂井にもチャンスあるだろ?」

「有馬......お前は浅いな。天使様が失恋したと言う事は、天使に愛しの相手が居る」


 坂井は悔しいのか、半泣きになっていたが、僕はどうでも良かったので親友を置いて教室を出る事にした。



「聞いた?天使様恋してたらしいよ」

「聞いた聞いた。誰だろうね」

「坂井君じゃない?」

「可能性は高いね」


 僕の前で話している女子達を少し後ろで見ながら坂井を可哀想に思ってしまった。坂井も雪葉に片思いだった事をさっき知ってしまったから、


「坂井..........お疲れ様」


 親友の顔を思い出して哀れみを重ねながら学校を出て家に帰ろうとした時、


「.........雪葉?」


 数m先に今学校中の話題を一色に染めている僕の幼馴染が一人で歩いていた。

 彼女は佐藤雪葉、黒髪ショート・大人びた性格・モデル級の異次元なスタイル・綺麗なお顔、彼女の全てが大人になりかけの特に男子高校生にドンピシャだったりする。



 隠れる、戻る、走って逃げる、この三つが頭に浮かんだので僕は、


「..............」




「隼?」


 すれ違う時に呼ばれた感じがしたが、僕は振り返らず家にダッシュしていたら、



「はぁはぁはぁはぁ......」

「............」

「偶然だね、雪葉」

「〇〇すよ」

「すいませんでした」


 今見えるのは幼い時によく見ていたアスファルト、僕は強制的に正座させられて幼馴染とアスファルトを交互に見ながら謝罪していた。


「何で逃げたの?」

「........家に帰りたかったです」

「そっか、なら行けば」

「ありがとうございます」


 さっきより足を痛めているので初速はそれ程ではなかったが、徐々に回復していき幼馴染の姿も感じなく.........アレ???


「何故居るんですか?」

「隼が早く帰りたいなら止めないよ」

「違うよ.......何で居るの?」

「私も早く帰りたいから」

「そっか........ならバイバイ」


 足を再度稼働させて幼馴染から逃げた。


 二度ある事は三度..........良かった。後ろを見れば雪葉が居なかったので、さっきまでの恐怖感は少し薄まった。


「雪葉は失恋したから今日は怖かったのかな............うん、通常だな」


 僕は後方を確認しながら早歩きで家に帰る事にした。





 私は感情をコントロールする事が人より上手であると自負している。そんな私にも唯一感情をコントロールできない現象がある。..........私には幼馴染が居る。


「良かった。今日も話せて」


 最近の悩みは長年一緒に居た幼馴染が、時間と共に疎遠になっていっているという、事実だ。


 勿論最初は恥ずかしいのかと思ったが、会ってもそんな素振りを見せなかったので、私は自分の胸が火傷しそうになりながらも、


「.......いるのかな、カノ.......」


 最後まで言えなかった。言葉と連携して想像していたら、隼が私の知らない女と仲良く歩いている光景は........無理だ。

 私には隼しか居ない。長年一緒に居て私の性格上キツく当たる事もあったけど、いつも近くには居てくれた。


「そんな隼がもしかして........」


 優しい目、笑ったら笑い返してくれる事、相談にのってくれる事、料理上手な所、こんな捻くれた幼馴染とも一緒に居てくれる事、



 隼の全てが私を幸せにしてくれた。

 そう...........小学校卒業までは、


 私はやっぱり疑ってしまう。高校に入って友達ができて相談にものってもらったけど、現状は変わらなかった。.......私が意気地なしだから、


 でもでもでもでも諦めたくない。さっき見た隼の顔がずっと離れない.....嫌、離したくない。これからもずっと........近くで一緒に居たい。



「隼..............絶対に離れないから」


 私は...............彼以外要らない人間だった



 



 


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