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玄関にある妹の翔子の靴の横にヒールの靴を脱いだ。

翔子の部屋から聞こえる物音を微かに聞きながら私は喋った。




「今そこで和と真理ちゃんに会った~!!

これからドラッグストアに行くんだって!!」




「和って大企業の社長の息子で自分も副社長なのに、庶民派だよね~。」




「普通の人が買うようなお菓子、的場製菓の副社長だからそれが大切なんじゃない?」




「まぁね~、的場製菓の受付どんな感じ?」




「いつも通りな感じ!!」




翔子の部屋の扉に向かって答え、私はウォークインクローゼットの扉を開けた。




そして、お高くて清楚な服を脱ぎ捨てていく。

服だけではなくて下着まで脱ぎ捨てた。

このまま捨ててしまいたい衝動に駆られるけれど、それを手前のハンガーにまとめて掛けてから反対側に掛かっている服を着ていく。




原色の派手な下着、よく盛れるブラジャーにこれでもかというくらいに胸を盛っていく。

その下着の上にお手頃なカジュアルなTシャツとジーンズを着た。




全身鏡の前に立ち、綺麗にセットし可愛らしくまとめていた髪の毛を無造作にほどいた。

そしてそのまま整えることもなく髪の毛をポニーテールにしていく。




それからメイクボックスを開けて使っていたアイシャドウのパレットをまた取り出し、この瞼にもっと色を重ねていく。




焦げ茶色ではなく漆黒のアイライナーも持ち、焦げ茶色のアイライナーを漆黒のアイライナーで塗り潰していく。




こんなぼやけた色なんていらない。




こんなぼやけた顔なんて好きじゃない。




そう思いながら、真っ赤なリップをこの唇に塗った。




別人になった私に私は笑う。




カジュアルなダボッとした上着を羽織り、ウォークインクローゼットの棚に置いていた財布とスマホだけを持ち、スニーカーを履いて玄関から飛び出した。

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