好き好き大好きの嘘
Bu-cha
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今年29歳、4月
お高いブランドの清楚な洋服を着て、目の前のお高いフランス料理を綺麗に食べていく男の子に笑い掛ける。
色白でスッキリとした完璧な顔、センスの良い・・・むしろセンスが良すぎるであろう服、お洒落にセットされ崩しすぎていない髪型、手足もスッと長く完璧な体型。
「この前結子さんが勧めてくれた映画観てみたよ。
ジレジレの恋愛映画で、俺としては結ばれなかった男の子の方に今回も感情移入したな。」
「私も!私は結ばれなかった女の子の方に感情移入しちゃった。
主人公の女の子よりも主人公の男の子のことを本当に大切に思ってるのはあっちの女の子の方だと思う。
主人公の女の子は“好き好き”っていう感情だけの子でモヤモヤしちゃった。
もう1人の男の子の方にもフラフラしてるし。
でも・・・結果的にハッピーエンドになるのはやっぱり好きで。」
「それはあるよね、ハッピーエンドが1番だよね。」
「うん、ハッピーエンドが1番。」
お互い、仕事の話は基本的に笑顔になれる話だけ。
たまに少しだけ意見も聞き合ったりもする。
とても優しくて穏やかで、この男の子の言葉や行動はとにかく綺麗で。
「私達の結婚もそろそろだね。
私の誕生日、5月22日。」
「そうだね、あと1ヶ月ちょっと。」
目の前で優しい笑顔で笑い続けるこの男の子に私も笑顔で頷く。
この人でいい。
この人でいい。
私は、この人でいい。
でも・・・
「もしも・・・もしも、嫌だなと思ってたら、逃げ出したいと本当は思ってたなら、ちゃんと教えてね。
その時は私がどうにかするから。」
そう伝えた私にこの男の子はやっぱり優しい優しい笑顔で笑ってくれる。
「結子さんがそんなことを考えなくて大丈夫だよ。
あの主人公の女の子みたいに“好き好き”の感情だけでワガママにいていいんだよ。
あとは男がどうにかするから。
絶対に、どうにかしてみせるから。」
優しいくて穏やかな顔、そして声。
それなのに思わず泣き出してしまいたくなるくらいに、頼ってしまいたくなるくらいの強さを感じる。
この人でいい。
この人でいい。
私は、この人でいい。
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