【完結】アルカーナ王国物語〜赤毛の剣士と夜明けの狼〜

創世記より

　むかし昔のお話です。

　あるところに、こころ優（やさ）しい若者（わかもの）がおりました。

　若者（わかもの）は働き者なうえに腕（うで）が立ち、村でとても頼（たよ）りにされていました。

　仲良しの幼馴染（おさななじみ）の剣士と、紅（あか）い瞳（ひとみ）の女魔法使（おんなまほうつか）いの三人でつつましくも幸せな日々を過（す）ごしていた若者（わかもの）は、いつまでもこんな日々が続けばいいと願っていました。

　しかしある日、暗雲（あんうん）が立ち込（こ）めたかと思うと魔王（まおう）が現（あらわ）れ、世界（せかい）を暗闇（くらやみ）の底へ落としてしまいました。

　若者（わかもの）は魔王（まおう）を倒（たお）す為（ため）、幼馴染（おさななじみ）の剣士（けんし）、そして女魔法使（おんなまほうつか）いと共に立ち上がりました。

　魔王（まおう）との戦（たたか）いは三日三晩続（みっかみばんつづ）く死闘（しとう）となり、ついに若者（わかもの）は大地に膝（ひざ）をついてしまいました。

　もう、体も思うようには動きません。

　魔王（まおう）を倒（たお）すための剣（つるぎ）も折れてしまいました。

　もうダメかと思われたその時、女魔法使（おんなまほうつか）いが命と引きかえに自分の血を使い、魔法（まほう）で紅（くれない）に燃（も）える聖剣（せいけん）を作り上げました。

　その剣（つるぎ）は闇（やみ）を切り裂（さ）き、遂（つい）に魔王（まおう）を倒（たお）したのです。

　若者（わかもの）は女魔法使（おんなまほうつか）いの死を嘆（なげ）きましたが、再（ふたた）び立ち上がるとその剣（つるぎ）を背負（せお）い、剣士（けんし）と共に平和な国を作る為（ため）ふたたび歩き出しました。

　……これが、我（わ）が国（こく）アルカーナのはじまりの物語。

　むかし昔のお話です。

　　　　　　　　　　【子どものための創世記（そうせいき）より抜粋（ばっすい）】

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