新文字体系に於ける母音

 長母音や二重母音を原型である短母音、単母音に組み込めば、大抵の言語は3から10種類で収まる。アラビア語には3種、日本語には5種、韓国語には7種、北京語には10種など。一方で、特にゲルマン語派の言語にはそれを優に超える数の母音を用いる。英語やドイツ語には13、デンマーク語は14、スウェーデン語は16など、とても多い。ラテン語派ではあるが、フランス語にも母音が12種ある。

 子音と異なり、母音を全て体系に繰り込むことは実際に難しい。現在、国際音声学会では母音を3つの要素で体系化している。舌を盛り上げる場所の前後、舌の盛り上がった位置と上顎との間隔の広さ、そして唇の丸みの3要素である。この3要素でも僅かな口の形の違いにより、母音を無限に作ることが可能である。それでは膨大な数の記号を作らねばならなくなるので、国際音声記号では28の標準的母音を定めている。この標準的母音から若干外れた母音は発音区別符号によって表記されている。当然、発声法により鼻音などといった要素も存在するが、これらも全て発音区別符号によって表される。

 新文字体系では、有声排気音の母音のみを扱う。体系で母音を表す文字は8つあり、以下がその一覧である。


 Aa Ee Iı Oo Uu Yʏ Rʀ Ωω


 国際音声記号には基準母音が28もあるが、これら全てを文字化する必然性はなかった。というのも、これら28の母音でも、短母音としてしか使われないものと、長母音としてしか使われないものがあり、こうしたもの同士で対を成すことが多い。例えば、外来語を日本語に表記する際、イ段に書き換えられる音節のうち、実際原語で用いられる発音は、長母音ならば[iː](ːは長音を表す発音区別符号)、短母音ならば[ɪ]である。それぞれの発音は互いの役割を入れ替えることもあり得ない。これは、発音のしやすさによって自然発生した差異と考えられる。このような性質により、ゲルマン語派の諸言語は母音の種類は多いが、実際に母音を表す文字は、ウムラウトなどの発音区別符号を付けたものを別個で数え入れても、10以内である。

 それでは各々の文字の発音を見ていきたい。


・Aa(読み方は[aː])

 一般的に短母音は[a]、長母音は[aː]と発音する。ラテン文字「A」を基づく。


・Ee(読み方は[eː])

 一般的に短母音は[ɛ]、長母音は[eː]と発音する。ラテン文字「E」に基づく。


・Iı(読み方は[iː])

 一般的に短母音は[ɪ]、長母音は[iː]と発音する。ラテン文字「I」に基づく。


・Oo(読み方は[oː])

 一般的に短母音は[ɔ]、長母音は[oː]と発音する。ラテン文字「O」に基づく。


・Uu(読み方は[uː])

 一般的に短母音は[ʊ]、長母音は[uː]と発音する。ラテン文字「U」に基づく。


・Yʏ(読み方は[yː])

 一般的に短母音は[ʏ]、長母音は[yː]と発音する。元々この文字は[j]として割り振り、[y]などの発音はドイツ語同様に「Üü」を使うことにしていたが、モデルとなった「Yy」は元々ラテン語では[y]の発音をしていたことを考慮して変更した。尚、[j]はJᴊに割り振った。


・Rʀ(読み方は[ɜː])

 一般的に短母音は[ə]、長母音は[ɜː]と発音する。元々は「Ωω」にしていたが、ラテン文字で唯一「R」を採用していなかった点、また「R」の方が発音を表す際に相応しいという点で「Rʀ」に変更した。[ʌ][ɤː]の対の発音も表す。


・Ωω(読み方は[øː])

 [y]などの発音を単独の文字として表したため、もう1つの母音に固有文字を設けることにした。一般的に短母音は[œ]、長母音は[øː]と発音する。一度は使用を却下したギリシャ文字「Ω」をここで登用。


 二重母音を表したい場合は、基となる母音を表す文字を繋げることで表すことが可能。例えば[ɔʊ]を表記したい場合は「ou」と表せば良い。長母音と短母音の区別に関しては2つの案がある。1つは、短母音を示す場合は後続する子音を二重にすることである。もう1つは、長母音を示す場合は母音自体を二重にすることである。

 母音は特に実際に会話で用いた際は大きく発音を変えることがあるので、以上のものはあくまでも初期設定である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る