第20話 何故か騒ぎを聞きつけてやって来た礼儀作法の先生に怒られそうになりましたが、王子様が魔法師団長を連れて来てくれてうやむやのまま終わらせてくれました

私は水まみれの先生の顔を見て、唖然とした。何と、髪がほとんど無くなっていたのだ。

そんなに水流がきつかったのか?

私は流石に先生の髪の毛を流してしまったことを不味いことをしたと思ったのだ。


「す、すみません。先生の髪の毛を流してしまいました」

「な、何!」

生徒の椅子の上に落ちていた先生は慌てて自分の髪の毛に手をやって

「な、無い、カツラがない」

大慌てで探し出したのだ。


それを見てどっと私のクラスメイト達が笑うんだけど、そこは笑うところじゃないのでは?

私は先生がカツラだって知らなかったのだ。てっきり私の水魔法で髪の毛をすべて抜いてしまったと思って慌ててしまったのだった。


私の後ろのライラも大うけしているんだけど、

「ちょっとライラ」

私が注意すると

「ニーナ、大丈夫だって、あれかつらだったから」

「えっ、かつらって、先生の髪の毛ってかつらだったの」

「しっ、声デカい」

私は慌てて口を押えたが、もう遅かった。驚いた私の声が大教室中に響き渡ったのだ。


それでどっとまた皆笑うんだけど。


ヴィルタネン先生が私を呪い殺しそうな目で睨んでくるんだけど、いや、待って! 確かに水魔術出したのは私が悪いけれど、していいって言ったのは先生じゃない!


私はそう心の中で叫んだのだが、


「これはどういう事ですか? 教室の中が水浸しではないですか」

とても冷たい声が教室中に響いた。

そこには目を怒らせた礼儀作法のペトラ・タルッコネン先生が立っていたのだ。

笑っていた連中も慌てて口を閉じた。

教室の中を冷気が走り抜けたのだ。

シーンと静かになる。


「これはペトラ先生」

慌ててヴィルタネン先生がペトラ先生の方を向いた。


その瞬間ペトラ先生の顔が変になった。私には吹きだそうとして必死に抑える様にしているように見えたのだが、気のせいだろうか? いつも冷静沈着で厳しい鬼のペトラ先生が笑うなんてあり得ないと私は思ったのだが。


「ヴィルタネン先生。これは何事ですか。貴方がついていながら」

上ずった声でペトラ先生は話されたんだけど。声が変だし、先生の目が泳いでいるんだけど……


そして、ペトラ先生は足元にあったかつらを見つけてヴィルタネン先生に差し出したのだ。

「有難うございます」

慌ててヴィルタネン先生がかつらをつけた。少し歪んでいて変なんだけど、それを見てまた一部の生徒が噴き出した。


その笑い声を聞いて更にヴィルタネン先生は真っ赤に怒りだしたのだ。


「私が魔法適性検査をしていたのですが、そのニーナ・イナリが突然私に勝って水魔法をぶっ放してきたのです」

怒り狂った目で先生は私を見るんだけど、


いや、先生が私にぶっ放していいって言ったんじゃない!

「そんな事をしたんですか」

でも氷のようなペトラ先生に睨みつけられて私は蛇に睨まれたカエルよろしく何も話せなくなったんだけど……


「何をおっしゃっていらっしゃるんですか! ヴィルタネン先生がこの子にそうしろと命令されましたよね」

担任のヒルダ・トゥーり先生が私を庇ってくれた。


「嘘をつくな。俺は命令などしていないぞ」

ヴィルタネン先生はヒルダ先生に詰め寄ったが、

「『やれるものならやってみろ。私に向かって水魔術を使ってみるが良い』とはっきりこの子に言われました」

先生は反論してくれたのだ。

クラスの面々も頷いてくれた。


「ヴィルタネン先生、どういう事なのですか?」

氷の声が今度はヴィルタネン先生に向かったのだが


「この生徒は新入生歓迎会の時に王子殿下にエスコートされた事を自慢して、遅刻をしてくるわ、授業態度は悪いは、なおかつ適性検査の結果に文句を言ったのですぞ」

「確かにそれは問題かもしれません。しかし、何故この子に水魔術を使ってみるがいいと言ったのですか」

「いや、まさか本当に使うとは思ってもいなくて。そもそも適性検査ではこの生徒は弱い風魔術しか使えないと出たのです」

「それはおかしいではないですか? 適性検査で風しか使えないと出れば水魔法なんて使えるわけは無いですよね」

ペトラ先生が言ってくれた。

「そこがおかしいんです。本来ならばこの子は絶対に水魔術など使えるわけは無いのです。

そうだ。この生徒は何か誤魔化しをしたのです。神聖な魔法適性検査で誤魔化しをするなど許されることではないかと」

ヴィルタネン先生は必死に言ってくれるんだけど、そんなの私が出来るわけないじゃない!

「ニーナさん。貴方は適性検査で誤魔化しをしたのですか?」

「そんなのしていません」

私は思いっきり首を振った。


「ペトラ先生!」

その時に後ろの方から大きな声がした。

私達はそちらの方を見るとそこには会長がいたのだ。そして、かれはピンク色の髪のとても美しい女性の腕を握っていたのだ。


それを見て私は一瞬ずきりと胸が痛んだ。彼女が会長の思い人のマイラなんだろうか?


「彼女が話したいことがあるそうです」

「ちょっと殿下、何言ってくれているんですか」

女の人は逃げようとして、皆に見られているのを知ると愛想笑いをした。


そのまま会長にぐんぐん引っ張られて女の人は連れて来られたんだけど。

「カーリナ魔法師団長」

ヒルダ先生が驚いて彼女を見た。

「カーリナ魔法師団長?」

「カーリナ・ウルホ魔法師団長、王宮の魔法士のトップよ」

横からライラが教えてくれた。

マイラじゃないんだ。私は少しほっとした。


「これはカーリナ。久し振りですね」

「お久しぶりです。先生」

魔法師団長もペトラ先生は苦手みたいだった。


「で、今回の適性検査の件、どうなっているのですか」

「えっ、何の話ですか」

「判っていますよね。カーリナ」

ペトラ先生はにこりと笑ってカーリナ魔法師団長を見た。でも目が笑っていないんだけど。

「そう、どうしてこうなったか、俺も知りたいんだが」

横で会長も睨んでいる。


「いや、これも色々ありまして」

魔法師団長は愛想笑いして誤魔化そうとしたが、

「カーリナ。最近魔法士の礼儀作法がなっていないと王宮から文句が上がっているのです。なんでしたら」

「いや、先生。それだけはやめてください」

そう言うと会長とペトラ先生を連れて隅で何かいろいろ説明していた。


「少し、検査紙におかしいのが混じっていたみたいで、なんかいろいろ皆さんにご迷惑をおかけしたみたいで」

そう言って皆に愛想笑いするとうと風魔法の一つ温風魔法をずぶ濡れの皆にかけて一瞬で乾かせると

「では、そういう事で」

「ちょっと!」

「カリーナ!」

ペトラ先生と会長の声を無視して魔法師団長は皆に手を振ると一瞬で消えてしまったのだ。

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このピンク頭は何をしに来たのか?

ニーナは結局誰の下で魔法の練習をするのか?

続きはまた今夜


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