第14話 ライラに捕まって根掘り葉掘り聞かれました

私は疲れ切っていたので、そのまま部屋に帰ってベッドにダイブして寝ようと思っていたのだ。

でも、私が自分の部屋の扉を開けようとしたとたんに、隣の扉が開いて、ライラの部屋に引き込まれたのだった。



「どうだったの? 殿下は」

私はたちまちライラに根掘り葉掘り聞かれ出したのだ。


「えっ? 私、もう疲れて眠いんだけど……」

「何を言っているのよ! あんた、あの後、殿下を連れ出して二人して逃げてくれて、もう大変だったんだから」

ライラが言うには、私が連れ出した、違う! 私が連れ出されたんだっていくら言い張っても、全くライラは聞いてくれなかったんだけれど……


高位貴族のお嬢様方が、私が会長を独り占めにしたって、怒り心頭で怒っていたとのことだった。

だからやばいって会長には言ったのに!


「あんた、明日から、気をつけて歩かないと、何をされるか判らないわよ」

って、ライラは脅してくれるんだけど、私も被害者だって言うのに!


あの後どうなったって、ライラがあまりにも煩いので、そのあとあったことを話したのだ。


「ええええ! あなた、殿下の執務室に入らせてもらえたの? 未だかつて生徒会の役員も女は一切立ち入り禁止だったのに」

疲れた私の耳にライラのキンキン声が響く!


「何であなたはいれてもらえたのよ?」

ライラが聞いてくれたが、


「私が歓迎会の食べ物を食べられなかったって、文句を言ったからじゃない?」

「食べ物と執務室に入れるのとどう関係するのよ」

「会長はお腹を鳴らした私を憐れんで、執務室の戸棚から焼き菓子出してくれたのよ」

「ええええ! あなた、殿下と一緒にいたのに、お腹を減らして腹時計を鳴らしたの?」

もう、ライラは非難轟轟だった。


「だって仕方がないじゃない! お腹が減って勝手に鳴ったんだから」

私の言葉にライラは頭を押さえた。


「なるほど、殿下はあなたを見ていて、あまりにも可哀相になったのね」

ライラが残念なものを見るように私を見てくれるんだけど……


「うーん、あなたは、絶対に殿下が今までに遭遇した事のないタイプなのよ。だから殿下も興味が湧いたんじゃない?」

ライラは好き勝手な事を言って一人で納得してくれたんだけど。

そんな訳無いでしょ。


「私は普通の大人しい平民なのよ!」

そう私がそう言ったら、鏡を出されて


「鏡に向かってそう言いなさいよ。言える?」

ライラが意味のわからないことを言ってくれるんだけど。


私が鏡に向かって同じことを言ったら


「わかった。あなた大人しいの意味を勘違いしているのよ」

ともっと訳のわからないことを言い出してくれたんだけど。


「良い? 普通は大人しい女の子は学内で一番注目されている殿下に近づいて借り物競争に参加してくださいなんて、口が裂けても言えないのよ」

「そんなのわからないじゃない。殿下がとても親切そうに見えたから話しかけられるかもしれないわよ」

私の言葉にライラは頭を抱えているんだけど。


「ニーナ、じゃあ、言い方変えるわ。私は、これでも弁が立つ方なの。これまで貴族の令嬢に言い負かされたことないんだけど、そんな私に平然と反論できるあなたが大人しいなんて言えると思う?」

「……」

流石の私も言葉が詰まってしまった。


「でも、それって単に私がおしゃべりだってバラしている単なる馬鹿じゃないの」

言っていたライラも自分の事を貶めていると理解したみたいで首を振った。


「まあ、そんな事どうでもいいわ。問題は何故か殿下があなたに興味を持ってしまったことよね」

「それはないんじゃない。殿下は私が無理やり頼んだから付き合ってくれただけよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」

私は珍しくまともなことが言えた。


「でも、殿下が今まで誰かをエスコートしたことはなかったのよ。あなたが初めてなのよ。殿下が誰かと踊ったのも初めてだってアスモ様が言っていたわ。

皆はあなたが踊ったから次は自分だと期待していたのに、あなたが殿下を連れて行ってしまったから本当に怒っていたのよ」

ライラが説明してくれたんだけど、


「だから連れて行ったのは私じゃなくて殿下でしょ!」

「あなたがそうそそのかしたんじゃないの?」

私の言葉にライラがとんでもないことを言ってくれるんだけど。


「唆してなんかいないわ。それにあの会長が私が言ったことを聞いてくれると思うの?」

「パーティーでエスコートしてくれたじゃない。いまだかつて誰もしてもらったことがないのに!」

「それは借り物競争で私に付いて来てくれたからで」

「その借り物競争ですら去年も皆断られているのよ。『俺は運営だから』って。でも、あんたには付いて来てくれたじゃない」

「確かに私には付いて来てくれたけれど、それは強引に私が誘ったからで……」

「まあ、確かにアンタの強引さは群を抜いているけれど」

「何よそれ」

私がむっとして言うと

「そんなアンタの変なところに興味を持ったんじゃない?」

「そんなわけは無いと」

「でも、殿下が無理矢理会場から連れ出したのよ。普通女から逃げるならば一人で逃げれば良いじゃない」

「私を置いておくと皆に虐められると哀れんでくれたんじゃないのかな」

「それはそうかもしれないけれど……」

何かライラは納得していなかった。


「それよりもライラ。ウィル様って見つかった?アスモ様とかにも聞いてくれたんでしょ」

私は強引に話題を変えた。


「ウィル様なんて、王子様の前には関係ないでしょ」

「そんな訳無いわよ。私には王子様よりもウィル様なんだから」

そう言うライラはつくづく呆れて私を見てくれたんだけど……


「あんたね。皆、殿下に必死に近づこうとしている中で、近づけたただ一人の女が他の男の事気にする?」

「だって、私には別の銀河の王子様の事よりも私を助けてくれたウイル様の事の方が大切だもの」

私は言い切ったのだ。


何か盛大なため息をライラがしているんだけど。


「アスモ様には聞いてたげたけれど、ウィルなんて茶髪緑眼の男は知らないって言われたわ。他の先輩にも聞いて見たけれど皆知らなかったわよ」

「そうか。やはりもう少し年上の方なのかな」

私はがっかりした。


「もう、ニーナ止めてよ。今頃学内の高位貴族の令嬢の多くがあんたに王子殿下を盗られてため息ついているのよ。その嫉妬対象のニーナが別の男のことを考えているなんてありえないわ」

「だから、会長は私のことはなんとも思ってはいないって」

私がいくら言ってもライラは聞いてくれなかった。


そして、当然他の貴族連中も全く聞いてくれなかったのだ。


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ここまで読んでいただいてありがとうございました。


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