転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて恋してしまいました。
古里@3巻発売『王子に婚約破棄されたので
第1話 王子様に助けてもらいました
幾多の物語からこの話選んでいただいてありがとうございます。
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私はニーナ・イナリ、この世界では珍しい黒目黒髪だ。そして銀縁メガネをしているんだけど、見た目はとても地味で、他の男の子らが言うにはダサイそうだ。そう言った男の子は思いっきり蹴飛ばしてやったけど……
私は、この髪の色のせいで、「魔王」とか、「化け物」とか言われて、同い年の子らにはやし立てられて虐められることも多かった。
なんでも、千年前にこの世を支配していた魔王が黒目黒髪だったそうだ。
そんな昔の話を持ってくるなよ!
昔は何を言われても黙っていた。そして、皆が言い飽きるまでただひたすら堪えていたんだけど、最近は反撃している。
それも魔法で!
そう、なんとこの世界では魔法が使えるのだ。
まあ、私の使える魔法なんて、水をぶっかけるとかお尻に火を付けるとか本当に簡単な物しかできないんだけど。
一度火魔法で逃げられて家具に火がついて慌てて水をぶっかけて消したことがあって、それ以来火魔法の使用は禁止されているんだけど。
もっとも魔法が使えるのは一部の人みたいで、平民の中では少ないみたい。
そして、どうやら、私は前世の記憶があるらしいのだ。
もっとも病院とかいう所でずうーーーーっと寝ていた記憶が大半なんだけど。
前世は病弱で外で遊んだ記憶なんてほとんど無かった。
前世で死ぬ時に来世は健康な体で生まれたいってお祈りしたら、本当に健康体になっていたのだ。
今まで風邪一つ引いたことはない。
前世の記憶はふざけて、川に突き落とされて溺れかけた時に、一気に甦ったのだ。
そのまま、3日間高熱にうなされて大変だった。
この生まれ変わった世界が前世の小説によくあったようなゲームの世界かどうかは判らない。だって親にはゲームは目が悪くなるからだめと言われて、あまりさせてもらえなかったし……
でも、どのみちなら、公爵令嬢とか、王女様とかに生まれ変わりたかった。
それをおばあちゃんに言うと、
「欲張るんじゃないよ!」
って怒られたけど、まあ、五体満足で健康に生まれたのだから、そこでよしとすべきなんだと思った。
そんなおばあちゃんが私をおいて亡くなった。
両親を事故で亡くした私をここまで育ててくれた大切なおばあちゃんだった。
私はついに一人になってしまったのだ。
私は大泣きした。
葬式は近所のおばちゃん達が総出でやってくれた。私は悲しくてそれどころではなかったのだ。
そんな涙にくれているなかだ。
私の前で、駆けていた向かいの家のキッカが盛大に転けてくれた。
血を出して、盛大に泣き出したのだ。
私は思わずキッカを片手で抱いて、やってしまったのだ。
「痛いの痛いの飛んでいけ!」
そう、おまじないをかけたのだ。
私の手からキラキラした光が光って、それがキッカの傷に向かって飛ぶと、その傷を包んだ。そして、傷ががあっという間に塞がったのだ。
皆が、ぎょっとして私達を見た。
や、やってしまった!
前世の記憶を思い出した頃から急にこんな事が出来るようになったのだ。
そして、喜んでおばあちゃんに自慢したら、おばあちゃんには人前では絶対に使うなときつく言われていたのだ。こんなの使うって皆に知られたら、どこかに連れ去られて監禁されてしまうよと。
まずい、やってしまった……
「おい、今の見たか?」
たまたま通りかかった、冒険者らしき男達が言っているのが聞こえた。
みんな驚いて私を見ているし……
「何をやっているんだい。そろそろ葬儀を始めるよ」
そんな時、となりのおばちゃんが声をかけてくれて、慌てて皆、動き出した。
そう、何も無かったかのように。
私は完全に誤魔化せたと思ったのだ。
その夜中までは……
私は葬儀を終えて疲れきっていた。
大半は近所のおばちゃん達がしきってくれたのだけど……
最後に大家さんに、言われたのだ。
「今まではあんたのおばあちゃんがいたから、格安に貸し出していたんだけど、おばあちゃんがいなくなったんだから、出来たらさっさと出て行ってほしい」と
「あんた、こんな時に何を言うんだい!」
となりのおばちゃんが文句を言ってくれたから、大家さんは引っ込んでくれたけど、すぐとは言わなくてもいずれは出て行かざるを得ないだろう。
出るったって、どこに行けば良い?
私はおばあちゃんが亡くなって天涯孤独になってしまったのだ。
行くところなんてあるわけない。
それやこれやを考えてたら、いつの間にか私は寝てしまっていた。
そして、夢の中で私はこけたキッカに
「痛いの痛いの飛んでいけ」
と魔法をかけていた。これはおそらく、前世の物語に見た癒し魔法のヒールだと思う。普通は「ヒール」ってカッコよく呪文を唱えるんだけどなんかヒールではうまくいかなくて、いつも「痛いの痛いの飛んでいけ」なんだけど。
そう思っていた私は突然、男に襲われたのだ。
伸し掛かられて、必死に抵抗しようとしてはっとして目を覚ましたのだ。
そして、私は目の前に男の顔を見たのだ。
現実にも私は男にのしかかられていたのだ。
「えっ?」
とっさに何が起こったか判らなかった。
「動くんじゃない!」
そんな私の首筋にナイフが突きつけられたのだ。
私は恐怖のあまり声も出なかった。
とっさのことに魔法も何も使えなかったのだ。
金縛りにかかったみたいだった。
「結構かわいい顔しているぜ」
男がいやらしい目で私を睨めつけた。
「どのみち奴隷として奴隷商に売るんだ。皆でまわそうぜ」
私の頭の上にいる男が言った。
私は周りを男たちに囲まれているのに気付いた。奴隷として売るだ? この国では奴隷の売買は禁止されている。見つかったら下手したら処刑だ。こいつら、本気で私を売る気なんだ! 私は逃げ出そうとするも、動けなかった。
抵抗しようにも両手も他の男に押さえられていた。
こいつら葬儀の時に側にいた冒険者だ。この国境の村の近くに小さなダンジョンがあって偶に冒険者達がこの村に滞在することがあった。そいつらだ。たまに冒険者崩れの奴らが犯罪にてを出すって聞いたことがあった。こいつらがそうみたいだ。
「いや!」
私は恐怖のあまり小さく首を振ることしかできなかったのだ。
男がナイフを私の首に押し付けたまま、私の服に手をかけたのだ。
「きゃっ」
そして、男は片手で私のブラウスを引きちぎったのだ。
私は恐怖で体が固まっていた。
声も殆ど出なかったのだ。
でも、男がニヤリと笑った。
「胸は貧相だな」
しかし、私はその一言で私の金縛りが解けた。
平常心に戻ったのだ。
絶対に許さない! こんな男に私の素肌が見られて、それも貧乳だと言いやがった!
私の怒りに火が着いたのだ。
私は渾身の火魔法を男に叩きつけてたのだ。
「ギャッ」
男が叫んで火達磨になると同時に何故か男が吹っ飛んでいた。
男の今までいた空間に別の男の人が立っていたのだ。
その男はとてもイケメンで、その立ち居振舞いは王子様のようにりりしかった。
私はこんな時にもかかわらず、思わずうっとりとしてしまった。
そのイケメンは私の上にいた男をけとばしてくれたのだ。
「な、何奴だ」
「ふんっ、冒険者崩れか。か弱い女を襲うとは許せん」
男は次の瞬間には私の手を押さえていた男を殴り倒していた。
「ウィル、後ろ!」
後ろから声がかかり、その男の人に殴りかかろうとした男をウィルと呼ばれたイケメンが避けて、男をその勢いを利用して投げ飛ばしていた。
周りの男たちもあっという間に、ウィルの仲間と思しき他の男達が倒してくれていた。
「大丈夫か、お嬢さん」
ウィルが私に声をかけてくれた。
「は、はひ。アイがとうございまちゅ」
私は噛みまくっていた。
「さ、これを着て」
ウィル様は自らの上着を私にかけてくれた。
凄い、ものすごくスマートだ。
今までの恐怖もなんのその、私は真っ赤になっていた。
「でも」
私が遠慮しようとすると
「服が破けている」
「きゃっ」
私はウィルに指摘されて、慌てて王子様の服で前を隠した。
ブラウスが半分裂けて、おっぱいが半分飛び出していたのだ。
嘘! ウィルに見られた。それも貧乳を。
私に火魔法で焼かれた男は転がりまわって火を消そうとしていた。
このくそ冒険者をもっと燃やしてやりたい気分だった。
周りは大騒ぎになって、周りのおじちゃんやおばちゃんらが慌てて駆けつけてきた。
「うちのニーナに襲いかかるなんてこんな冒険者ら許せない」
「本当だ。コイツラのあそこをちょん切ればいいさ」
おばちゃんらが、庭いじりに使う大鋏を持ち出して、拘束された冒険者たちのあそこを実際に切り落としかねない勢いだった。
直ちに国境警備の騎士が飛んできてて、冒険者らを拘束していった。
そんな中、いつの間にか私を助けてくれたウィルらはいなくなっていた。
国境警備の騎士たちがそのウィルにペコペコしていたのが印象的だった。
そして、いなくなってから私はそのウィルの上等な上着を着ていたのを思い出していた。
私は国境警備の人たちに、その上等な上着をウィルに返してお礼が言いたい旨を伝えた。
でも、何故か国境警備の人は微妙な反応をしてくれた。
隊長と思しき人が来て、直接返すのは難しい旨を説明してくれた。
良く要領は判らなかったが、どうやらウィルは貴族の、それも私達平民が一生涯お目にかかれないような高位の方みたいだった。
私は騎士隊の隊長に、ウィル宛に一生懸命御礼状を書いて上着を預けたのだった。
でも、礼には及ばないし、当然のことをしたまでだ、上着はそちらで適当に処分してくれればいいと口頭で返事をもらっただけだった。
私にはその人の仲間がその人のことをウィルと呼んでいたことしか判らなかった。
「ウィル様」
私はさっそうと現れたウィルがさっそうと悪漢を退治してくれた所を何回も思い出した。
「さっ、これを着て」
スマートに私に服を着せてくれたところも……
なんて格好良かったんだろう!
私の中ではそのウィルが私の憧れの人になるのに時間はかからなかった。
そう、たとえ二度と会えなくても、私の心には一生涯残るのだと。
その上着は私にとって宝物になったのだった。
そして、そんな私に王立学園の入学願書が送られてきたのは翌年の1月だった。
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よろしくお願いします!
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