第28話 全てを見渡す三者面談
そんなこんなで僕たち3人はファーストフード店で向かい合う。
湯島を正面に座らせ、僕と美恵はその正面に仲良く座る。それこそ面接みたいだ……。
「えっ? え、えっ? し、師匠、どうなってんのこれ?」
面接のような空気感のせいか湯島はさっきから見苦しいぐらいテンパってるし。
「わかるぞ。湯島……人間という生き物は面接という化け物が放つ空気感に呑まれる生き物だ。ガキの頃から様々な面接を受けて人は育つ、だが……面接に確実性などない。どんな強者でも面接に落ちることがある。あの最強のサイヤ人でさえ仕事の面接に落ちるんだ……人が面接を恐れるのは仕方がないことだ……そもそも――」
「いやぁー、その長ったらしい話はどうでもいいんだけどぉー」
普通に傷ついた。場を和やかにしようとした僕の心遣いを返せ。
「ちっ、何だよ? 言いたいことがはっきり言えよ」
「あのぉー。私ツッコミどころか多すぎてどこから、ツッコんだらいいか、わからないんだけどぉー……この大きいハンバーガーは何?」
「あっ、最初にツッコむとこそこ? 喜べ僕のスペシャルチョイスだ。あっ、これ全部で1800円だからあとで払えよ?」
「師匠ぉー普通に最低ぃー」
そんなゴミを見る目で見るなよ。照れるじゃないか。
たくっ、ちょっとしたお茶目だよ。いいじゃん。コンドームに2万使うよりは健全だろう。
「はぁ、今ダイエット中なのになぁ……もぐもぐ……」
文句を言いつつも巨大バーガーにかぶりつく湯島。
その表情はどこか嬉しそうでもある……なんだよ。嬉しいのかよ。
うむ。人間、無理なダイエットほど悲しいことはないからな。
「それで……何でいつの間にこの人までいるのぉー」
「おお、やっと私のターンだね。私は烏丸美恵だよ? あなたは?」
「えっと……湯島。師匠とは同じクラスで……もぐもぐ……わぁ、本当に可愛いなぁ」
「くすっ。ハンバーガーよりも紹介が遅いのは若干悲しみだったけど……ねぇねぇ師匠って慎太君のことだよねっ。くすっ、さすが慎太君、面白いことになってるなぁ」
文句を言いつつも美恵は気にしてる様子はない……はぁ、なんでこいつはこんなにワクワクしてるんだよ……。
……楽しいからだろうな。いい加減付き合いが長くなってきたから、わかってきた……こいつ優等生の皮を被ってる問題児だしな……。
「そうそう師匠に相談したいのぉー」
「相談……?」
「うん……もぐもぐ……私、7人の男と付き合ってるっていう噂がクラスに流れてて……」
「そんな噂が……? 同じクラスなら慎太君聞いたことある?」
「…………初耳なんだけど」
まあ、湯島の名前を知らなかったしな。そんな噂など聞いたこともない。べ、別に僕は、ほらアウトローだし……。
「ああ……慎太君、ごめんなさい……友達いなかったね。つらかったね……よしよし」
おい、そんな純粋で綺麗な瞳で謝るな。なでなでするな。優しくするな。ちょっと……涙が出てくる……。
「それ……もぐもぐ」
湯島は僕の頭をなでる美恵を指さす。その顔はめちゃめちゃ気まずそうだ……。
「えっ……」
「師匠は愛してくれる彼女がいる……それもふたり……」
「はっ? それはお前も同じだろ? というか7人なら俺よりもレベルが高い」
てか、愛してくれるとか……恥ずかしい。
「いや……その、私のは……その、もぐもぐ……」
僕の言葉を聞くと湯島はいしゅくする……。まるで悪いことを隠してる子供のような反応だ……おい、こいつまさか……。
「うん、全部嘘……彼氏がいっぱいいるどころか……つ、付き合ったことも……もぐもぐ」
「え、えっと……お前コンドームいっぱい買おうとしたよな? 彼氏がいっぱいいるからじゃ……」
「ああ、南戸さんが言ってたのって湯島さんなんだね」
「その……嘘なら本当にすればいいと思わない? 7人の男と付き合ってる風に見せるには小道具の用意を……もぐもぐ」
「い、いや! そんな嘘つき続ける必要ないだろ!」
こいつ馬鹿なの!? さっさと嘘だって言っちゃえばいいのに!
「だって! せっかく得たビッチ王の称号だよぉー! 簡単に手放したくないじゃん! 海賊王みたいでかっこいいしぃー! ……だから、本物である師匠にアドバイスを貰おうかなっと……」
「…………はっ?」
「くすくすっ、さすが慎太君。面白い人に頼りにされてるね……くすくす」
笑いごとじゃねぇ……僕も笑い飛ばしてすぐに帰りたいんだけど……はぁ、ずっと付きまとわられてもやっかいだしな……さて、どうするか……。
「くすくすっ、とりあえずクラスでの湯島さんの様子を観察したら? 丁度来週の頭は登校日だしね。そうしたら適切なアドバイスができるかもしれないよ? くすっ」
お前楽しそうだな……はぁ、とにかく様子を見てみるしかないか……。
こいつの話だけじゃ、なんか信憑性ないしな……。
安心しろ、ビビリの俺には二股なんてできない シマアザラシ @shimaazarashi
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