第12話 お泊まり会ならず……
昼休みが終わり数時間後――。
学校が終わった僕たちはそれぞれ一度家に帰ってから、加賀の最寄駅近くに集合ということになった。
(さて……加賀たちはまだ来てないみたいだ)
駅前は会社帰りのサラリーマンなどでごった返していて、僕はその様子をぼーっと眺めていた。
……ちなみにお泊り会は南戸の「学生の身分で何を考えているんですか……?」「男女でお泊り会など不潔です」等の反対によりなくなり、今日は勉強会だけとなった。
加賀はその意見に不満そうだったが、烏丸の「くすっ、これってお家デートだよね……?」の一言で「そ、そうか、そうだよね……! えへへ……」と、すぐに機嫌を直した。
(……単純な加賀は可愛んだけど……ちょっと待てよ。付き合った初日にファミレスでお茶はしたけど……ちゃんとしたデートってこれが初めてじゃないか……?)
お試し期間を始めて2週間。
学校で毎日会っているものの、こうして学校以外で会うのは初めてだ……。
やばい……お試し期間自体がトンデモ事件過ぎて、デートをすることがすっかり頭から抜けていた……。
2週間もデートに誘わないとか、男としてどうなんだよ……さすが僕、童貞の名に恥じないダメっぷりだ……。
『あっ! 先輩! こっち、こっち!』
『くすっ、時間通りだね』
マイナス思考で考えがいっぱいになっていると……後ろから聞きなれた声が聞こえてきて、反射的に振り向くと、10メートルほど先に加賀と烏丸が立っていた。
2人とも初めて見る私服姿だ。
加賀はピンクの薄手のガーディガンを羽織い、短めの青のスカートだ。
可愛らしい加賀の容姿にあった今時の女子高生感が上手に出ている感じだ。
どこか読者モデルと言われても納得できるレベルだ。
烏丸は清潔感あふれる白を基調としたワンピースで、烏丸が持つ清楚さを引き立たせる服だ。スカートから伸びる白くて長い足に目が行ってしまう……。
さらに……上半身部分がスタイルを目立たせるフィット感があるタイプなので、胸の大きさがよくわかる……。
2人とも制服とは違った可愛さがあるな……。
(こんな2人と勉強会だなんて感動するなぁ……)
「ねぇねぇ、先輩先輩っ! どう? この服? 先輩に私服姿を先輩に初めて見せるから気合を入れたんだぁ~」
加賀は僕に私服姿を見せるのがよほど嬉しいのか、楽しそうに笑ってその場で一回転した。するとふわっとスカートが持ち上がり、見えそうで見えない感じに……。
「あ、ああ……可愛くて似合ってる」
「そ、そっか……ふふっ、可愛いかぁ……ふふっ」
もうスカートに意識が行ってしまい上手い感想が出てこない……。
だが、僕のそんな簡素な言葉でも嬉しいのか、加賀の顔が一気ににやける。
すると隣にいた烏丸が僕の横に来て肩を右手の人差し指でトントンと突っついてくる。
「くすっ、私も感想欲しいなぁ。高円寺君に褒められたいなぁ~ねぇ? 私褒められると頑張っちゃうタイプだよ?」
「あ、ああ、美人だなぁ……っと、思う」
「やった、私も美人って褒められちゃった……!」
烏丸は喜びを表すようにその場で軽くジャンプした。すると烏丸の大きな胸がプルンっと揺れた……。
「……!」
で、でけぇ……なんだこの重量感は……! 制服の時はまだその力を見せてなかったというのか!
そんな風に考えていると、烏丸が悪戯っぽく笑いながら、内緒話をするように僕の耳元に口を近づけた。
「くすっ、今私の胸を見たでしょ……? さっきはさくらちゃんの足を凝視してたし……くすっ、高円寺君って結構エッチなんですね♪」
「えっ……先輩がわたしのあ、足を凝視……」
「ば、馬鹿……。そんなんじゃねぇよ」
大当たりっす……だけど男のちっぽけなプライドを守らせてくれ……。
「くすっ、隠さなくてもいいのに。高円寺君にならいくら見られてもいいのに……」
「そ、そうだよっ! わ、わたしはその……先輩がえっちでも……いいと思うし……」
小悪魔的な笑みを浮かべてこっちの反応を楽しんでいる烏丸に、顔を赤くしながらごにょごにょと歯切れの悪い言葉を並べる加賀。
どちらも可愛い……この時だけは学校で嫉妬にさらされても仕方ないと、そう思えた……。
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