第42話:豊臣秀吉という漢
「氷が穴から生えただと!? リザ、サルが目覚めたようだぞ!」
「どうするんだリザ!? ボクは痛いのは嫌だぞ!」
「ウルサイ馬鹿ども。いい? 奴らは自分で作った檻から逃げ出せないの。いかにサルが強力な精霊だろうと、アイツはブレスしか吐けないのだから」
その言葉を聞いて二人は「「おお!」」と頷く。
「だがそのうち焼け落ちる。ドッヂ、あの壁が焼け落ちたと同時に、ミリーへきつい一撃をぶちかませ」
「しかたないなぁ。後で報酬を上乗せしろよ?」
「わかったよ。リザ、俺はサルの首を落とす」
「了解。じゃあアタシは……それを跡形もなく凍らせて砕いてあげる。氷の魔術師としての矜持、取り戻させてもらうわよ、お猿さん♪」
三人が焼け落ちる球体を見守る最中、球体内部ではミリーが秀吉をまた抱きしめて喜ぶ。
「お猿さん! 助かったのです! 本当にありがとう。でも……この後どうするでアリマスか……」
喜ぶミリーだったが、それもすぐに消沈する。
なぜならもうすぐ焼け落ちるか、酸素がなくなり息が出来なくなるのだから。
そんなミリーの胸に顔を埋めて喜ぶ、どうしようもない秀吉が嬉しげにしている。
「おほ♪ いい埋もれ具合やん。ってちゃう、ミリー……今すぐ頭を地面にこすりつけておき」
ミリーは不思議そうに「はぇ? じ、地面に」とまで言ったと同時に、秀吉がミリーの頭の上に乗りポムリと蹴りながら、「ええから早よしい!!」と無理やりねじ伏せる。
その時だった。
外から聞こえる声が、この球体がもう持たないのだと知らせる。
「くく、いよいよだ。お前ら準備はいいな?」
「おうよ。出てきたミリーの胸に、強烈な一発を打ち込んでやるんだ」
「それはアタシのセリフよ。二人共、ちゃんと始末しちゃってよね」
ブスブスと燃えていた木の根が、一気に燃え落ちたと同時にドッヂが勢いよく突っ込む。
それと同時に炎の壁が消失し、氷のドームが現れた。
「今さら土下座か? 遅いんだぞ、ぶぅわ~か! そのまま砕いてやるんだぞ!!」
ドッヂは右手にはめた鋼鉄製のナックルで、地べたに頭をこすりつけるミリーへと一撃を加える起動に乗る。
思い切り右腕を引き絞り、そのまま氷のドームへとぶち当てた瞬間、ドームに亀裂が〝真横一文字〟に入る。
「もろい! こんなモノかサル野郎の氷は!!」
「誰がサルやねん!! ま、この怒りはお任せしまっせ。
ドッジは「はぁ?」と秀吉の言葉につっこみを入れようとした刹那、自分の右腕が右の目尻の端に見える事に気が付き、「はぁ?」ともう一度もれ出た次の瞬間。
「ッ!? ぎゃああああボクの腕があああああああ!!」
強烈な痛みが二の腕から
そのまま無様に背後へと転がり、「うで、うでええええ?!」と大粒の涙を落として落ちた腕を拾う。
ドッヂは何が起きたのかが分からず、泣き転げるだけだったが、サンダーとリザはその原因を凝視する。
見た目は十代後半。頭は黒髪を乱雑に縛り上げ、後頭部より毛を束ねたおかしなスタイルの男。
黄金郷で流行る和装という着衣に身を包み、これまた黄金郷で一部の剣豪しか持つ事を許されないという、日本刀まで持っている。
その男がゆらりと歩を進めつつ、すでに死んだレオナルドをさみしげに見ながら、日本刀を右肩に担ぎ、彼の遺体の前へとしゃがみつつ口を開く。
「そちらも運がないものよ。被害者がミリーだけなら、キツイ仕置きだけですまそうと思ったがな。で、そちらは地べたに額を擦り付けて何をしておるのだ?」
「信長?! 助かったでアリマスよぅぅ」
「大殿様ぁ~気配を感じましたでな。だから頭を低くしておったんですわ」
「え? まさかお猿さん……信長なら、あのままミリーごと斬ると分かっていたでアリマスか?」
ミリーが顔を青くして二人に尋ねると、「「無論」」と声を揃える。
それを聞いたミリーは更に青くなり、「ミリーの命が軽いでアリマス」と白目になった。
「なんだテメェ……どこかで見た気が」
サンダーがそう言いながら、日本刀を担ぐ漢――織田信長を睨む。
するとリザが「あいつ! ほら、さっき言っていた、
「あぁアイツか。なら殺すっきゃねぇな」
「ほぅ、下郎如きが余を殺せると?」
「たりめぇだ。テメェこそ俺ら……いや、オレを誰だと思ってやがる? ゴールドランクの冒険者にして、太陽への翼の主。雷のサンダー様だぞ!!」
「なるほどな。存在だけではなく、頭痛が痛いみたいに名前までおかしなものよ」
「……死んだぞテメェ」
「死ぬかどうかは余が決める。無論キサマの生死も、な?」
「口のヘラねぇガキがッ!!」
サンダーは素早く抜剣すると、信長の上段からまっすぐに振り下ろす。
それを「笑止」と笑いながら鬼切丸で軽くいなす。
渾身の一撃だったのか、サンダーは「何を
すると信長も同じく鬼切丸を真横に一閃することで、空中に一文字の火花が散る。
それに驚くサンダーだが、そのまま剣戟をやめず、左上からの
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