第23話:悪党との邂逅

「オイ! なんでテメェがここにいるんだ!?」


 びくりと震えながらミリーが「サンダー……」と呟く。

 それを聞いた隣の女が、「様をつけ忘れているわよ? これだから雑種は」と呆れている姿を見て、「リザ……様」と声を震わす。


「ボクは不愉快だぞ! 雑種は食われているはずだろ!?」

「でかい声でいうなよドッヂ。まるで俺らが雑種が死ぬのを知ってるようじゃねぇか」


 そう言うと、三人は声を揃えて笑い出す。なるほど、やはりこ奴らがミリーを殺そうとしたと言うわけか。

 ざすざすと周囲をかき分けて、こちらへと歩いてくる三人。

 サンダーは顔を怒りにそめ、リザは優しげに、ドッヂは嫌らしく表情豊かに目の前に来た。


「おい雑種。テメェはギルドは無論、この街への立ち入りは禁止にしたはずだろ? なんで来た?」

「ご、ごめんなのですサンダー様。すぐに出ていくでアリマス」


 ミリーはそう言うと、くるりと振り返りギルドの入り口へと向かう――が、その肩をガシリと掴み「待つがよい」と止める。

 それを見たドッヂが「なんだお前?」と、口と手が同時に動き余を殴りかかる。

 

 だが遅い。こんな羽虫でも当たらぬ速さの突きなど、半歩さがり鼻先でかわす。

 するとあてが外れたその力は、勢いが突きすぎ体ごと動いたことで前へと進む。

 そこに足をかけてやると、ドッヂは玉が転がるみたいにギルドのテーブルへと突っ込み、盛大に料理や酒を浴びて止まった。


「……てめぇ。何もんだ? ドッヂのパンチを躱すとは」

「さてな? 貴様もあの男のようになりたくば相手になるが?」


 サンダーは「てっめッ!?」と額に青筋をたてるが、リザが「サンダー今はそれより熊ヤローが優先よ?」と言う。


「ち、そうだった。命拾いしたなガキぃ。おいドッヂ、いつまで寝てやがる。さっさと起きて熊狩に行くぞ!!」


 ドッヂは何が起きたのか分からず、「あれ……ボクはなぜ頭に肉を載せている?」と言いながら、肉汁したたる赤身を頭からつまんで口に放り込む。

 よほど美味かったのか、「うまッ」とご満悦だ。どうやらミリー以上に鳥頭とみえる。


 ドッヂを蹴飛ばし起こすサンダーを尻目に、リザが余の隣を通り過ぎたと同時に「あなた、死んだわよ?」と冷たい視線で過ぎ去っていく。

 そのまま三人はギルドを出て、足早にどこかへと去っていった。

 それを見たミリーは「助かったでアリマス……」と言うと、へたりと座り込む。


「やれやれ、あ奴らに思い知らせるために来たというのに、これでは先が思いやられる」

「せやでミリー。無駄に乳ばかりデカくなってないで、気持ちもデカくど~んと大きく持ちぃ。大殿様と俺様がついてるさかいな」


 ミリーは「うぅ。そうは言っても」と涙目になるが、その頭を軽く二度なでてやりながらギルドの入り口を見る。


藤吉郎サルの言う通りぞ。余らが居る限り、無駄にでかい乳なみに心を大きく持つがよい」

「無駄って強調しながら、左右の胸を指ささないでほしいであります! はぁもぅ……でも、うん。なにか元気が出たでアリマスよ」

「うむ。それは重畳よな。さて、まずはギルド員とやらに加入しようぞ。目的のために・・・・・・、な?」


 そう言うと、ミリーは「はいでアリマス」と表情を固くして頷く。

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