雪山の魔物(後編)

「まぁそんなところかな。何度振ってもしつこく食い下がって来るって真理ちゃんこぼしてたぞ。最後は根負けしたって言ってた」


 確かに俺は諦めずに何度も彼女に告白をし続けた。しかし俺の知らないところで、彼女がこいつにそんな話をしていたかと思うと少し腹が立った。


「卒業してからも口を開けばお前の愚痴ばっかりだ。その度に俺はお前を庇ってきたんだぞ」


「ん?卒業後も俺の知らないところで二人は会ってたのか?」


「ああ、相談事にのったりしてな。お前仕事にかまけて彼女を放置してただろ?」


 まぁ確かに俺にも悪いところがあったと思う。彼女には謝らなければいけないなと思った。だがもう遅い。やはりまた眠気が襲ってきた。


「許してくれとは言わない。最初はその場の勢いだったんだ。子供は俺が責任をもって育てる」


 その言葉を聞いて俺はまた目が覚めた。



 翌日救助ヘリが二人を発見した時に一人はハーケンが胸に刺さって死亡していた。生き残った男は妻と再会した途端に言い合いを始めた。

「そんなわけないでしょ!あなたを助ける為の作り話に決まってるでしょ!!」


 妻の言葉を聞いて男は愕然とする。

「…話は下手でも嘘は上手いんだな…」


 しかしその後夫に見えないところで妻は舌を出していた。魔物は雪山以外にもいる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る