第1話

僕は自分が嫌いだ

具体的にどこがどう嫌いかなんてあげたらキリがない

でも誰かに好かれたい

誰かの注目を浴びたい

誰かの話題になってみたい

自分を否定するのは自分であって、誰かに自分を否定されるのは嫌い

我儘で傲慢な自分が嫌いだ






 今日も自分の部屋の窓は外との気温差で結露していて水滴がびっしりと外の景色を埋め尽くしている

所々ほつれているパジャマの裾で窓を拭いてやると外は一面雪景色であった

季節は冬

もうすぐ11月が終わろうとしていた

家に引きこもってから明日でちょうど半年が経とうとしている

枕元に置いているスマホの電源をつけると時刻は6時30分

最近はやけに早く起きてしまう

あれだけ朝起きるのが嫌いだったのに、今ではふと目が覚めてしまうようになってしまった

不思議なものだ

なんの変わりばえのないいつもの汚い部屋

変わっていくのは窓から見える景色だけだ

あと30分もすれば登校する小学生の耳障りな声が聞こえてくるだろう

そう感じた僕はいつものように耳にイヤホンをして自分だけの無音へと閉じこもる






学校では上手くやっていた

成績は中の上くらい

友達もそこそこいて、彼女だっていた

普段の生活も何不自由なく暮らせていた

でもある日急に将来が不安になった

本当にこのままでいいのだろうか

このまま普通に、平凡な生活を高校を卒業したあとも続けていくのだろうか

死ぬまで

そんな事を今まで考えたことはなかった

将来なんてなるようになると思っていた

よく宇宙の壮大さを想像してみた時に自分の存在の小ささを認識し、怖くなってしまうようなそんな感じになった

未来が急に怖くなった

今がずっと続いて欲しかった

だから籠った

全て捨てて

友達にも彼女にも愛想尽かされて

家族にさえ……







いつものプレイリストの曲を聴き終えて、そろそろ起き上がろと布団をどかす

すると突然窓が割れて"何か"が部屋に入ってきた

あまりにも急な出来事に車のブレーキ音のような甲高い声を上げてしまった

こんな高い声を上げたのは小学生ぶりだろうか

とゆうかここ数ヶ月は誰とも話していなかったから声を出すこと自体久しぶりって感じだった

恐る恐るその"何か"の方を見て見るとそれは、一羽の雀であった

どこか怪我をしているのかピクピクと少し痙攣している

このまま自分の部屋で死なれては後味が悪いというか呪われそうというかとにかく嫌だと思い、とりあえず包帯か何かを羽に巻いてやることにした

ところが自分の部屋には包帯どころか絆創膏の一つもない

下のリビングには何かあるかもしれない

でもリビングに降りる気にはなれない

数分悩んで腹を括ることにした

どうせ自分を家族の誰かが見たところで今更何かあるわけでもあるまい

躊躇いながら、でも少しずつ下のリビングに繋がる階段を踏み締めた







下のリビングには幸い誰も居なかった

おそらく両親は仕事、姉貴は学校に行ったんだろう

両親はどちらも普通の会社員

仕事場が家から遠い関係で昔から朝早く出勤していた

だからよく姉貴が朝ご飯を作ってくれた

ただ最近(半年前だが)は姉貴も早く家を出るようになって最後に自分が家を出る

そんな生活だった

家族が揃う時間が少ないこともあり家族での会話は皆無だった

それが別に嫌だったわけではないが少し寂しさを感じていた

応急処置ようの包帯などが入っていたケースがたしかテレビの下の棚の引き出しに入っていた気がして探してみるとそれはそこにあった

包帯が入ったケースごと上の部屋に持っていった

部屋に戻るとさっきの雀がまだピクピクと体を震わせている

ケースから包帯を取り出して羽に3巻ぐらい巻いてやる

「お前も大変だな」

不意にそう呟いた

一応の処置はしたがこのまま窓から放り投げるわけにもいかないので外で放してやることにした

下まで降りて玄関に向かう

さっきよりも階段を降りる足は軽かった

玄関の扉を開けて家の庭まで行って放した

最初は中々動かずこちらをじっと見つめているだけだったが、少ししたらぴょんぴょん跳ねなが庭を出ていった

最後にこちらに向かって一礼していったような気がしたが勘違いだろう






自分の部屋に戻ると硝子の破片が彼方此方に広がっている

すっかり忘れていたがアイツは窓を割って入ってきていた

改めて考えるとあの体でどうやったら硝子の窓が割れるのだろうか

不思議なこともあるものだ

細かい硝子片を近くにあったコンビニ袋の山の中から適当に選んだ袋の中に詰めてきつく縛る

かれこれ半年、まともに掃除すらしていなかったので部屋は荒れ、棚は埃で覆われていた

毎日同じ光景を目にしているはずなのに今になって気づく

あの雀が窓を割らなかったたら気づかなかっただろう

雀に少し感謝して、部屋の窓のカーテンをめいいっぱい開け切った






 










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