第5話 恐竜が滅んだ理由
真ん中に大きなHのマークのある屋上。遠くにはスカイツリーが見える。
「え? え、ここは」
「このビルの屋上」
燕はそう言って、和音を軽々と抱きかかえる。
その次の瞬間、またもや景色は変わり、足元に雲が広がっていた。
「え、え、な、なに」
「ここはその更に上だ」
「お、おおおお、下ろして、やだ、怖い、やだやだ」
和音は落ちまいと燕にしがみつく。ほとんど半泣きである。
「大丈夫、ほら」
そして燕が声をかけ、そっと目を開けると、最初の部屋に戻っていた。
「怖がらせてごめん。そんなつもりはなかった」
「お、下ろして…ください」
間近に彼の顔があり、しがみついていたことに気づき、和音はか細い声で訴えた。
イケメンに姫抱っこされてる事実に、戸惑う。
「このままでも…」
「お、下ろして」
和音がそう言うと、彼は渋々ながら和音をベッドへと下ろした。
「納得した?」
さっきのは瞬間移動?
宇宙人かどうかは別にして、特別な力があることだけはわかった。
「怖がらせてごめん」
まだ震えている和音を見て、燕が謝った。心の底から申し訳ないと思っているのか、その芸術的な顔立ちに浮かぶ表情を見ても和音には判断出来なかった。
「あなたが…普通じゃないことは…わかりました。でも…私とあなた…何の関係が」
彼が何者であるかは別として、なぜ自分が関わらないといけないのか。なぜ自分が望んでもいなかった妊娠を告げられ、その父親が彼になるのか。
「わたしの星でも、少子化…という問題が起こっていて、それはこの地球より深刻でした。我々はもともと一個体の寿命が長く、技術の発達で更に寿命が伸びましたが、その代償に生殖能力が衰えました」
それが惑星(ほし)全体に広がり、新しい命は殆ど生まれなくなったのだと言う。
「そうですか」
しかしそんな話も和音にはまだ対岸の火事だ。どこに自分との関わりが出てくるのかと、辛抱強く彼の話に耳を傾けた。
「我々の技術力をもってしても、生命を作り出すことはできませんでした。そして全盛期の半分の人口になった時、我々の先祖はある決断をしました」
惑星(ほし)を捨て、自分たちの子を宿せる存在が住む新しい場所を探すものと、そこに住み続け、研究を続けるものとに分かれて、それぞれの未来を託したのだと燕は言った。
「そして我々の先祖が放浪の末に見つけたのが、太陽系のこの地球でした。環境も似ていて、住みやすい。それがちょうど今から六千五百万年前です」
「六千五百万年前」
そんな前から?
地球って今いくつだっけ? 恐竜っていつからいていつ滅んだ?
「元の生態系を壊すつもりはなかったんですが、その頃地上を支配していた恐竜が、そのせいで滅んでしまいました」
「え」
恐竜がどうやって滅んだのか。確かはっきりしたことはわかっていないんじゃなかっただろうか。
さらりとその謎が解明されてしまった。
「恐竜を滅ぼしてしまったことで、我々の先祖は考えました。いきなり変化を与えるのでは無く、徐々に進化させていくべきだと」
ダーウィンが頑張って考えた進化論説も、彼らの先祖によって操作されたものだった?
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