ビデオレター『10年後のユイへ』

 レイの部屋の片隅。

そこには二三重に鍵がかかった箱があった。

その箱を開けるとひとつのビデオテープが入っている。

ビデオカメラに使う小さいヤツ。

 『10年後のユイへ』。

 と書かれたビデオテープ。


⬛︎⬛︎⬛︎……。


 「これでいいのかな。」

 映し出されるは陽の光が差し込む窓際の病室のベッド。

簡素な服装に身を包み、髪を短く切ったレイ。

 「こんなカメラ初めて触ったよ。」

  ……。

 「改めてなにか言おうとすると緊張するね。」

 …………。

 「ユイ……。あなたはこれから後悔したり苦しんだりすると思う。」

 …………。

 「それこそ。目覚めたことを後悔するような。」

 …………。

 「でも大丈夫とは言わない。」

 …………。

「けどこれだけは忘れないで。」

 …………。

 「ユイが好きに生きて。前世とか、転生とか、そんなの気にしなくていい。君はここにいる。ここに生きてる。私はもう長くないけど。でもそばにいるから。ずっと見守っているから。」

 ……ドタドタドタ……。

 『お母さん。』

 「ユイ。もう。」

 『お母さん何やってるの?。』

 「ん。未来のお手紙だよ-。」

 『ふーん。ビデオレターってやつ。』

 「よく知ってるね。ユイ大好き。」

 『えへへー。私もお母さん大好き。』

 「ユイが将来大きくなったら一緒に見ようね。」

 『うん。それまでいい子にしてる。』

 「約束よ。」

 『約束!。』

 …………⬛︎⬛︎⬛︎………………。

「ごめんね…。約束果たせなくて。」

 …………。

 「そう。もうわかってたの。」

 …………。

 「あの日からずっと。」

 …………。

 「ユイ。ごめんなさい。約束を果たせなくて。一緒にこれを見れなくて。」

 …………。

 「ふふ…。んっ。ユイ、ペンダントは大事にしてる?。私のかわいいかわいい妹からの贈り物なんだから。なにかあったら許しませんからね。」

 …………。

 「ユイ。誕生日おめでとう。大好き。」

 …………⬛︎⬛︎⬛︎……⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎……⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎…………。

 プツン……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る