事実・事の経緯

 11月22日水曜日

 私の学校は教育熱心であり、そんな学校の行事の中でも特に知られていたのが、英国イギリス研修旅行である。希望者のみ参加可能で3週間カンタベリーの学生寮に他の参加者87名と引率の教員4名(計92名)と滞在している。

 私は、今それに参加している。この22日から10日の日時が経とうとしていた。


 11月29日水曜日

 始まりから1週間経ったこの日、課外授業としてカンタベリーの街にある博物館『ROYAL MUSEUM and FREE LIBRARY』に行った。そこの1階には、キャンバススタンドが置かれてあり、そこに何枚かの、無地紙白い紙が設置されている。まあズバリ、「自由にお描きください。」と云っているのだ。

 私はそこに人物画を描いた。顔だけで、性別やら何やら細かい設定を定めずに描いた誰かの顔。         …(ふと思い出すと女性の印象が脳裏に浮かんだ。)

 最初に瞳を大きく、いつもの画法で描き込み、そこから、その瞳に合うパーツそれぞれの形を考えた。一番は巻き毛(カール?)が似合うと思い、頭の中で一人の人間が完成していく。そのイメージは、まだ曖昧で霧の向こうに見える者を、私は自分の絵の才能を持って霧を晴らし、一人の人間女性?の顔を、キャンバスという世界に産み落としたのだ。


 だが、しかし、それは、私の眼の前で消えた。

 一人の男子生徒が私の絵に落書きをしたのだ。顔見知りだが、名前は知らない。後に他の生徒から『柳原』とかいう姓を聞いたが、名前程度に時間を要する必要性は皆無なので、仮に、彼の名前を『太郎』とする。

 太郎は、私の描いた彼女?の頬を、朱い色鉛筆で塗り、口から涎を垂らすように見せ私が描き忘れた瞳の瞳孔を描き足したのだ。

 私は激怒した。静かに激怒した。そして私は彼にこう投げかけた。

 私「私の絵に、何をやっている?」

すると、太郎は悪意にまみれたドス黒い眼とどこか嘲笑あざけわらうような口元をこちらに向け、こう答えた。

 太郎「俺は、俺が思うように美しくしただけだよ。」

若干、本当の台詞と異なる部分がある気がするが、今思えば、あのとき軽く鼻で笑われた気がする。

その言葉に私は、怒りが心頭し、

 私「ふざけるな。」

…の一言と共に、彼に軽く平手打ちをした。

……あくまでも今書いているのは、事実であり、この記録も当日の記憶を頼りにしている。

本当に電気信号ワードが頭に流れてくるのを、実感しながら叩いたが、後日事実確認をしてきた他の生徒は…

 他生徒「…なぐって本当?」

…と聞かれた。

撲った…。 撲った、か。確かに、広い意味合いを持たせるなら、第三者から見たら… 私は、太郎を、撲った。のかもしれない。 できることなら、もっと撲りたかったぐらいだ。


その後、私は一旦落ち着こうとしたのか?どうだったか、1m程、彼と距離を取った。 だが、それでも彼はのをやめなかった。私はそれが見ていられなくなった。そこで、キャンバススタンドの隣に行き、紙を破いた。すると、

 太郎「あーあ。ゴミはちゃんと持ち帰ってね?」

か。 くしゃくしゃに丸めた紙を眼にすると、悔しさで涙が湧きそうになる。今でも、思い出すだけで、そうだ。

 確かに、今となっては、ゴミだ。 私が物理的にゴミにしたが、その物理的要因を物理的要因でなく、別の… 間接的要因があると、するなら、私は真っ先に彼・太郎が、それに当てはまると言うだろう。だが、この行為は、ではない。彼が言う美しい美術が、なら、私は、彼の美術に従ったまでだ。


 その後も課外授業は、続く。

だが、ああなってしまえば、私は、不貞腐れ、完全に授業への意欲を失っていた。それどころか、私は、太郎をに対する殺意を自覚し、彼を殺そうかと、考えていた。

 私「階段から突き落としたら、どのように転げ落ちるか。」

 私「彼の身長に対し、この階段の距離で頭を壁にでも打ち付けられるか。」

 私「そこにある消火器を握れば、彼を、撲殺できるだろうか。」 …と。

だが、私は、それで終わるつもりもないので、考えるのをやめて、博物館の外へと出た。そして、気分を変えるため、今練習している THE RAMPAGEを踊る事にした。とにかく、彼と距離を置きたっかった。

そして、全員が博物館を出て、寮に戻ろうとしたとき、太郎とあの時、太郎と一緒にいた者達が、さげすんだような、憐れみの眼でこちらを見ながら、こんな会話をしていた。

 一緒にいた者「破ったのあいつだけど、原因お前なんじゃないの?」

…そうか。確かに只々ただただ純粋に絵を描いていた(?)彼ら・一緒にいた者達からすれば、私のやった行動は、迷惑そのもの。だが…太郎にまで同じ顔を向けられたくは、なかった。


                …続きはまた今度書く。

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