勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~
竹間単
【第一章】 勇者パーティーから追放されたら、美少女に拾われた!?
第1話
「あー、大変言いづらいんだが、そのー、だな……」
いつものようにパーティーメンバーで円形になって焚火を囲んでいると、勇者が歯切れの悪い切り出し方をした。
「惰性でここまで一緒に来てしまったが、さすがにおかしいと思う」
何の話だと思いつつ、狩ったばかりのウサギ肉を頬張る。
すると全員の視線が俺に集まった。
「俺がどうかしましたか?」
そう言いながらもウサギ肉をもう一口食べようとすると、横にいた戦士に肉を取り上げられた。
「あっ、何するんですか!?」
「大事な話の最中に肉を食うな」
肉を取り返そうと手を伸ばしたが、屈強な戦士に押さえつけられてしまっては、諦めるしかない。
「なあショーン、僕たちは勇者パーティーだ。魔王を倒すために結成された」
「何ですか、今さら」
勇者は当たり前のことを急に改まって言い出した。
「……僕の役職は何だ?」
「勇者です」
「じゃあ俺は?」
「戦士」
「わたくしは?」
「僧侶」
「私は?」
「魔法使い」
勇者は長い間を開けてから、最後に質問をした。
「…………君は?」
「運気を上げるラッキーメイカー」
これに全員が呆れた顔で首を横に振った。
「君自身はそう名乗っているが、実際は……荷物持ちだ」
「勇者、戦士、僧侶、魔法使い、荷物持ち。どう考えてもおかしいでしょ!?」
「そのくせ飯だけは一番食いやがって」
「だって能力を使うと腹が減るから……」
俺は今にも鳴り出しそうな自身の腹を押さえた。
「どうだかな。その能力だって怪しいものだ」
「俺の能力に何度も助けられてきたじゃないですか」
「私はずっと、勝てたのは自分たちの実力だと思ってたわ」
「実はわたくしも……もしかすると本当に運気が上がっていたのかもしれませんが、それが無くても勝てていたと思います」
「つまり、勇者パーティーにお前は必要なかった」
戦士、僧侶、魔法使いの三人は、俺をパーティーから追放する意志が固まっているようだった。
仕方がないので救いを求めて勇者を見ると、勇者は諭すような視線を俺に向けていた。
「どうか分かってほしい。ここから先は魔物も強くなりさらに厳しい旅になる。君のような役に立たないのに大飯食らいの仲間がいると、パーティーが全滅しかねないんだ」
どうやらこの場に俺の味方はいないようだった。
それでも一度はすがってみようと思った。
同情心からまた一緒に旅をしてくれるかもしれないから。
「ラッキーメイカーなんてユニークスキルは俺以外にいませんよ。やっぱり勇者パーティーにラッキーメイカーが欲しいと思っても、絶対見つからないんですよ?」
「その能力、パーティー全体の運気を上げるだけじゃない。全員が運気の上がる装飾を付ければいいだけよ」
「それに運悪く怪我をしてしまっても、わたくしが回復できます」
「コストパフォーマンスが悪いんだよ。ただ運気を上げるだけで戦闘中ボーっとしてる奴が、パーティーの食料をどんどん食うのは」
そう言いながら戦士は、俺から取り上げたウサギ肉を頬張った。
「ああっ、俺の肉! 戦闘中だけじゃなくて、獲物の獲得にも役立ってるじゃないですか。その肉だって俺のラッキーメイカーのおかげで狩れた獲物ですよね!?」
「ウサギくらい、あんたがいなくても狩れるわよ」
「じゃあ荷物持ち! パーティーには荷物持ちだって必要ですよ!?」
「他にやることが無さそうだったから持たせただけで、あの程度の荷物は俺で事足りる」
俺の必死の訴えは、戦士によっていとも簡単に打ち砕かれた。
確かに戦士の体格なら、荷物を持っていてもどうということはなさそうだ。
むしろトレーニングになって良い、まである。
「俺だって魔王に会いたいんです。でも俺一人じゃ無理なのは分かるでしょう!?」
「そもそも魔王に会いたいからって理由で勇者パーティーに参加してること自体がおかしいんだよ!」
確かに理由は不純だが、俺だって勇者パーティーに選出された人間だ。
魔王を倒す力があるということだ。
「でも……」
「ああもう、面倒くせえ」
低くドスの聞いた声に驚いて顔を上げると、いつも優しい勇者が俺のことを冷徹な顔で見下ろしていた。
「勇者……?」
今の勇者の顔はとても世界を救うヒーローには見えない。
どちらかと言うと、町で悪事を働くチンピラみたいだ。
「お前、邪魔なんだよ。貴重なユニークスキル持ちだって国王に押し付けられたから一緒に旅をしてたけど、役立たずは勇者パーティーにいらねえの」
「きゃははっ。本性出ちゃってるよ、勇者」
「荷物持ちさんは、勇者さんの本性見るのは初めてだから驚きましたよね。荷物持ちさんの悪口を言うときはいつもこうなんですよ」
「お前が寝てから、お前の悪口で盛り上がるのがお決まりだからな。睡眠魔法で寝てたお前は知らないだろうけど」
勇者の変貌ぶりを見ても、俺以外の三人は特に驚いている様子は無かった。
「でもいいの? 勇者、睡眠魔法で眠らせた荷物持ちを殴るのが好きだったじゃない。いなくなったらストレス発散できないわよ?」
「もう飽きたからいらない」
「あら、飽きたなら仕方ないですね。あっ、安心してください。勇者さんが殴った後は、わたくしが回復魔法で荷物持ちさんを回復させていましたから」
「そのせいで殴られてることにいつまでも気付かず、毎日殴られてたんだけどな」
信じられない言葉の数々に眩暈がする。
勇者の本性?
俺の悪口で盛り上がる?
睡眠魔法?
俺を殴るのが好き?
殴った後に回復させていた?
毎日殴られていた?
俺は仲間たちにここまで嫌われていたのか。
「ここまで一緒に旅をしたんだ。国王への義理は十分に果たしただろ」
あまりのことに何も言えなくなっている俺に、勇者が最終通告をした。
「お前、勇者パーティー追放な」
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はじめまして。竹間単と申します。
そしてお久しぶりの方は、小説転生でお手数をおかけして申し訳ございません。
カクヨムコンに参加するために、これからはここで小説を更新していきます。
今後の予定ですが、第二章終了までは数日で投稿、第三章からは毎日一話ずつ更新する予定です。
なお現時点で、第三章終了まで書き上げています。
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初のカクヨムコン参加でよく分かっていないのですが、☆をもらえると良いのかな?なので、☆評価を頂けるととても嬉しいです^^
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