ゴルフ勝負お嬢様ズ!(2)


 まずはクロナお嬢様のプレイだ。

 クロナお嬢様の陣取ったのは先におススメしていた7番ホールだった。


[@tam323]:”マジで7番ホールおススメだったのか”

[じょあ坊]:”クロナお嬢様正々堂々すぎひん? ファンになりそう……”

[リエル]:”ゴルフお嬢様、紳士的淑女ですわ……!!”


「だっ、騙されちゃだめだよカロナイトさん達! これがニコノワールのやり方なのよ!」

「ユキ先輩。私、アカリ先輩が小物に見えてきましたわ……?」

「ようやく気付きましたかカロナさん。そう、アカリは小物ムーブがとても上手い……そして負けフラグを立てるのも上手い」


 ユキがカロナの肩を叩いてやれやれと首を振った。

 負けフラグを立てるのは止めてもらいたいところだが……と、そんなことよりクロナのゴルフを見てみよう。


「チャー・シュー・メーーーン!!」


 足元のスライムに3番アイアンを振り抜いて、パカーン! とコアを飛ばしてゴブリンを撃ち抜く。命中率は8割といったところか。


「チャー・シュー・メーーーン!!」

「……ところでなんですのその掛け声は!? なんでチャーシュー麺!?」

「む、最近の若者は知らんのか?……げふん。あー、伝統あるゴルフの掛け声だよカロナ君。私がゴルフを習った時に師に教わったものでな」


[くさしげ煉牙]:”昭和臭する古の掛け声だ……中の人相当だぞ……?”

[@smallwind]:”し、知らねェーー!!!”

[@beruki]:”ルーティーン、ってやつだとしてもなんかあっただろ!?”


 どうやら一部のカロナイトは知っている様子。


「な、なるほど? とにかく掛け声なのですわね」

「! カロナちゃん、タンタン麺とか餃子とか生ビールとか叫んで妨害しよう!」

「アカリ先輩? 私、そういうの良くないと思いましてよ? ゴルフは紳士淑女のスポーツでしてよ」

「勝たなきゃ負けなんだよッ!」

「ソラ先輩、アカリ先輩の言動が……悲しいまでに悪役側なのですがッ!?」

「ああ。アカリはニコノワール相手にはどうにもこういう反応になってしまってな……今日は特に過剰だが、新人を前に気合が入っているのだろう」


 そういう問題じゃない気がする。


「ククク。この私のチャーシュー麺ショットに勝てるかな……? ちなみにタンタンメンも生ビールも同じテンポで打てるのでバリエーションに入っているぞ」

「クロナさん。生ビールとか叫びながらゴルフクラブ振るうお嬢様ってどうなんですかね?」

「黒川君。まさか味方から刺されるとは思わなかったよ」


[俺氏0436]:”フレンドリーファイア草”

[軽有]:”いやでも確かに生ビールはお嬢様らしくないかな”

[@torutoru]:”チャーシュー麺も大概な気がするぞ?”


「見て! ニコノワール同士で仲間割れしてるよカロナちゃん!」

「そうですわね。生ビールよりはせめて赤ワインとか白ワインとかそういうのにして欲しいですわよね」


 カロナの発言に「確かに。生ビールよりお嬢様らしいな。ちょっとやってみるとしよう」とクロナがゴルフクラブを構える。


「赤・ワイ・ンー!!……うん、少々やりにくいな。ボジョ・レー・ヌーヴォー!……ふむ、こっちの方がマシか」

「なんですのそのボジョボジョなんとかって?」

「……カロナ君。君にはニコノワール研修プログラム・お嬢様育成コースを受ける事をおススメしたいね。まぁ、ニコノワール所属ではないから有料だが」


[秋猫]:”お嬢、ボジョレーヌーボーってな、ボジョレー地方の新酒ワインのことでな”


「……ワインって古い方が強いんじゃありませんでしたっけ?」


[秋猫]:”まぁうん、その、それもそうなんだけどな。あれ?”

[葉生]:”ん? 言われてみたら確かになんで新しいワインを有難がってるんだ……?”


「いや、それはその年の出来栄えを確認するというものでな……って、しまった。無駄口を叩いているうちに時間が来てしまった」


 トン、とゴルフクラブを肩に置いて戻ってくるクロナ。

 48匹。それがクロナのスライムゴルフによるゴブリン撃墜数だった。


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