ライブ配信ってどうなのかしら……!
「セバス! セバス!」
「はい、何でしょうかお嬢様」
その日、カロナは今後やってみたいことの相談をセバスにしてみることにした。
「セバス。先日私、歌枠をしましたわよね」
「ええ。しましたな。なかなか楽しゅうございました」
「私、ライブ配信をしてみたいですわ! なんかAI秘書がいればほぼほぼ無料でできるらしいじゃないですの!」
そう。ライブ配信だ。
BCDにおいて、ライブ配信はそうそう難しい話ではない。まずライブステージだが、これはホームを変更すればよいわけだ。また、観客を招くことを考えた場合に「ライブステージのマルチダンジョン」なるものも公開されていたりもする。
もちろんダンジョンコアを破壊しても報酬は貰えないが。『入場条件:特定アイテム(ライブ参加チケット)の所持』という形で、入場を制限してライブを行うこともできる。
勿論チケットを有料にすれば有料ライブになる。企業枠のB-Casterはこの手法でよくライブ配信しているらしい。
「カメラの操作をAI秘書に任せてライブしてる配信や、ホームでAI秘書に演奏してもらって歌ったりしてる人もいるみたいですわ。楽曲も歌枠同様に包括契約でOKでしょう? 企業枠のB-Casterだとまた縛りが違うらしいですけれど。配信するだけならソロモードで十分いけますわ!」
と、目をキラキラさせてセバスに相談するカロナ。
「……僭越ながらお嬢様。ライブ配信というものは、それは結構、本人の負担があるのです。それは金銭的な点ではなく、体力・気力面で、です」
「と、それはつまりどういうことですの?」
「ふむ……まぁ色々あるのですが、まずはそうですね。例えば、こちらのライブ配信をしているB-Casterの方をご覧ください」
と、セバスはちょいちょいとブラウザを開く。
そこにはマルチダンジョンのライブ会場に観客を集め、バンドメンバーと共にライブを行っているB-Casterがいた。
「……とても素晴らしいライブですわね! 私もこういうライブがしたいですわぁ」
「こちらの方、個人勢ながら登録者16万5000人。現実では人気声優で、その声のままBCDを行っています」
「……じゅ、16万!? 個人勢で16万……しかも人気声優ですの!?」
あ、ホントだこの声聞いたことありますわ! とカロナはその声のキャラクターを何人か思い出すことができた。
「そして、この配信は同接が650人、会場には50名といったところですね」
「えっ!? 登録者数が16万もいる人気声優のライブなのに、そのくらいですの!?」
「そのくらいです。零細B-Casterのお嬢様では、この10分の1も埋まらないでしょう」
「うぐう!! 現実が痛いですわぁ!?」
「そもそもバンド演奏をするメンバーが集められませんな」
現実を容赦なく突き付けてくるセバス。
「大人しく歌ってみた配信で満足するべきです」
「……な、なんとかなりませんの?」
すがるようにセバスを見るカロナ。さらにセバスは現実をつきつける。
「そもそもライブということは、練習に練習を重ねて、ライブに耐えうる歌唱力、パフォーマンス力を身に着ける必要があります。歌ってみた配信であればカラオケ音源で十分ですが、ライブではライブ用の音源を購入する必要もありますね」
「……そ、そうですの? セバスが演奏とかできませんの?」
「本業の演奏AIでもないので。銃声を奏でる方が得意ですな。……まぁ、練習すれば聞けない事もない、レベルでしょうか?」
できないことはない、といったところだ。コクヨウあたりは練習して仕上げてくる可能性が高い。
「それに、演奏をAIでと言い出したら、AIアイドルの方がお嬢様よりいい歌を歌いますぞ。電子の歌姫をご存じで?」
「うぐう!!……弱音の方なら、あるいは!」
「その方、歌以外の仕事に定評がありますよね。まぁそれも良いでしょう。ですが……お嬢様。サビ以外もしっかり覚えられますか? それもダンス付きで」
「……ッッ!!」
先日の歌枠でも、歌えないところを代わりに歌ってもらうという赤ちゃん級の出来栄えでコクヨウによる介護配信だったというのに、さらに振り付きのダンスとは……カロナの心は折れた。
「むむぅ、確かに歌の練習をするより、ダンジョンに潜って稼ぐ方がいいですわね……」
「まぁライブ背景にしてちょっと豪華な歌枠、程度であればよいのではないかと」
「それですわ!」
ということで、また歌枠をすることになった。
が、ホームのライブ環境が5000円~3万円くらいする代物だったので、やっぱり普通のカラオケ歌枠となり、セバスはマラカスを振っていた。
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(4万字残ってたやつが残り1万字切りましたわ?
なんか普通に間に合いそうですわね……!?)
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