お嬢様キィーーーーーーック!!

「さて、どうするか……だな。俺達だけで倒すか、このまま援軍を待つか」


 ヤマトがスライムを打ちつつ考える。

 幸いカロナから伝授されたスライムゴルフ技能のおかげで、耐久に不安はない。


「ぐぬぬぬ……」


 そしていけないと分かるとなんか無性にトイレ行きたくなってきた。が、それを言うわけにもいかない。なんかこう、先ほど大丈夫と言ったばかりでそれは負けた気がする。


「……こ、こうして考えている間にも、虎視眈々と私達の賞金を付け狙う輩どもが向かってきているのですわ! ええい、考えるより動け! ですわぁーーー!!」

「カロナ嬢!?」


 堪え切れず、カロナがヒュージスライムに向かって飛び出した。投げつけられたスライムは、傘で受打ち返す。


「回復するより早く削れば宜しいのですわよね! なら、こう! これを! こうですわ!」


 サバンッ!! とスライムに傘を突き刺す。そして、ボバッ! と開く。ミスリル制の日傘は、スライムの体を押しのけながらなんとか展開してくれた。ものすごいバネである。


「だめだカロナ嬢、武器を取り込まれるぞ!?」

「そこが狙いッ!」


 そして傘を取り込もうとヒュージスライムが動く。


「ここでこうッ!」


 ぐるんっ!! と傘を回しながら、引っ張る。傘の内側に入り込もうとしていた分のスライムが、抉られ、傘によって掻き出される。


『ピギュイイイイイイ!!!?』


「うわすっご、メッチャ効いてる!? か、カロナ嬢に続け! あの抉れた部分からコアを叩くんだ!」

「了解だリーダー!!」


 開いた傘の形に大きくえぐれたスライム。そこに、ユウタがバールを突き刺した。


「くらえ、俺のエクスカリバール!!」

「それをさらに私のミスリルメイスでカコーン、っとぉ!!」


 サクラがバールを更に押し込む。バールの先端が、ヒュージスライムのコアに肉薄する。武器を手放した二人が、ヒュージスライムの触腕に狙われている。


 《ダンジョンブレイバー:コメント》

”ヤマト! 上!”

”あぶな”

”上上上上上上上上上!!!!!!!!!!”


 と、ヒュージスライムの触腕が水魔法を放ってきた。ウォーターボール。だが、ただの水ではなく、当たればHPを削る攻撃魔法だ。


「む!……ここかあ!!!」


 だが、これをヤマトは剣の腹で打ち返した。カキーンと。そしてスライムの触腕は、己が放った水魔法で、打ち返された水球にボシュッと抉られた。

 その隙に武器を手放したユウタとサクラが後ろに退く。


「おぉ、できた!!」

「やりましたわねヤマト様!……え、ホントにできるんだ……」


 《ダンジョンブレイバー:コメント》

”打ち返したぁああ!?!?”

”ちょまっ、ホームラーーーーーーンッッッ!?”

”ピッチャー返しktkr”


 《竜胆寺カロナちゃんねる:コメント》

”は?”

”マジで魔法打ち返しやがったぞ!?”

”すっげ。マジか”

”お嬢、今ホントにできるんだとか言った??”


 真髄を掴んだ。とヤマトはぐっと剣を握りなおす。

 だが、まだヒュージスライムから触腕が伸びて魔法を放とうとしている。


「カロナ嬢! トドメを頼む! 俺が防ぐ!!」

「かしこまりましてよ! どっせぇええええええい!!!」


 攻撃を察知し、カロナめがけて水魔法の球が降り注ぐ。それはヤマトが打ち返す。攻防一体のピッチャーライナーで触腕を削っていく。


 カロナはヤマトと共に突撃。傘を閉じ、ヒュージスライムに刺さったエクスカリバール、を更に押し込んだミスリルメイス、を更に更に押し込むべく突っ込む。

 フェンシングのように、玉突きのように、ロケット鉛筆のように。


 ガチンッ! とコアにエクスカリバールが届く。


「もう一押しッ!! お嬢様キィーーーーーーック!! ですわーーーーーーー!!!」


 スカートをつまんで少し持ち上げ、前蹴りで傘を蹴り込む。

 その衝撃で、ガゴッ、と石にヒビが入る音がした。


 ビキ、バキンッ!! とヒュージスライムのコアが割れる。

 そして、それがダンジョンコアも兼ねていたようで――Congratulation!! とダンジョンクリアのエフェクトが浮かび上がった。


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