コラボの打ち合わせ
それから数回メールをやり取りして、今日は直接BCD上で打ち合わせとなった。場所はダンジョンブレイバーの共有ホーム、応接室だ。
ファンタジー風味のある応接室は、『冒険者ギルドの応接室』をイメージしてコーディネートされているらしい。
「カロナ嬢、コラボの誘いを受けてくれて感謝する」
既にビジネスの堅苦しい口調はとっぱらい、ロールプレイで接することになっている。ヤマトから差し出された手を握り握手するカロナ。
「いえいえ、こちらこそお誘いありがとうですわ、ヤマト様。それと」
と、ヤマト以外の2人のプレイヤーにカロナが視線を向ける。
「サクラよ。よろしくね、カロナさん」
「ユウタだ。ジョブは盗賊。よろしく」
カロナは初見だが、ダンジョンブレイバーのメンバーの2人だ。「こちらこそよろしくお願いしますわ」とにっこりお嬢様スマイルを返す。
尚、カロナの後ろにはセバスチャンとコクヨウが立って控えている。
「それにしても、執事とメイドか。いいな……うん、実にいい」
「ええ。そちらの受付嬢さんも――『分かって』ますわね!」
ダンジョンブレイバーの方にもAI秘書がいた。タイプ『受付嬢』。テーブルについて、さりげなく今回の議事録を取っている。
「世界観が解釈一致、とでもいうのかしら。完成度高いですわね」
「そちらもな。お嬢様のイメージにこれ以上なくピッタリだ。いいなぁ二人体制……ウチももう一人導入するか? といっても受付嬢が2人に増えても役割が完全にダブるしなぁ……」
「であれば、次はギルド長ですわね!」
「ギルド長! そりゃいいや。たまに難しいダンジョン攻略を押し付けられたりしたら最高だな! そのネタ使わせてもらおう」
と、AI秘書の話で盛り上がるカロナとヤマト。
この2人には『ロールプレイが大好き』という共通点があった。
「さて、それでは今回のコラボ配信についてですが……どのような『設定』でいきましょう?」
「そうだな。冒険者ギルドに訪れたお嬢様となると……護衛依頼か?」
「ダンジョン攻略のための護衛でダンジョンブレイバー様を雇うのですわね!」
「ああ。でもそれだとこちらの目的である安価な遠距離攻撃方法を教えてもらう流れが難しいな……悩ましい」
「むむむ。確かに」
そしてこの打ち合わせ。ただの顔合わせではなく、配信におけるロールプレイのための打ち合わせであった。
「なぁリーダー。ロールプレイなしに普通にコラボしたらダメなん?」
「カロナさんも、素直に教えてくれるだけの方が楽じゃないかしら?」
そう至極真っ当な意見を述べるユウタとサクラに、やれやれと仲良く首を横に振るカロナとヤマト。
「ロールプレイするからいいんじゃぁありませんの。ねぇ?」
「ああ。マルチの突発コラボじゃないんだ、チャンネルのテーマは守らないとな。視聴者の為にも」
「まぁ私は元からお嬢様ですけれど。オーッホッホッホッホ!」
「フッ、分かっている、俺も元から冒険者さ」
ヤマトはさておき、カロナは自分の動画口上の『いつかお嬢様になりたい』を忘れている節があるが……
「セバス。セバスには何かいいアイディアはあって?」
「む、そうですな。それでは僭越ながら……『
「おお。AI秘書ってそういう質問も答えてくれるのか、知らなかった。
「そうですねぇ、ギルドでカロナ様を臨時教官として雇いますか?」
「臨時教官、そういうのもいいな……!」
いいなこれ。と頷くヤマト。
ともあれ、その後普通に設定のすり合わせを行った後、今回の打ち合わせは特に波乱もなく終わった。
―――――――――――――――――――――――
(次回、コラボ配信!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます