執事とメイドのいる配信
「お嬢様。
「ええコクヨウっ、構いませんことよ!」
カロナは嬉しさを隠しきれずに、でも本人的には冷静を装って優雅に返事した。
”お嬢、ウッキウキで草”
”メイドさんに髪のお手入れしてもらえるとかお嬢様だなぁ”
”VRだから意味はない。だが、それが良い!”
コクヨウがカロナの髪に櫛を入れる。先の方から少しずつ、だんだんと頭の方へ遡って。畑を耕す鍬のように、少しずつ少しずつ丁寧に。
「あぁー、心地よいですわぁ……ふふっ、うふふっ」
「お嬢様の髪はわたしが手を入れなくてもスベスベで、櫛通りもようございますね。……ちゅっ」
「ええ。自慢の縦ロールですわぁー……ん? なにかしまして?」
「いえ何も」
”あっ、裏の顔(察し)”
”なるほど設定どおり”
”髪の毛に口付――(コメント削除されました)”
「ん? まぁ良いですわ。さて、それでは執事とメイドに
「かしこまりましたお嬢様。では、このセバスが、AI秘書のカタログスペックについてご説明させていただいても?」
「よろしくってよ! 私はカタログを穴が開くほど読み返して熟知していますが、皆様にも分かるようにしっかり説明して頂戴?」
「はっ、かしこまりました」
セバスの胸に手を当てながら腰を曲げる礼に、カロナは無駄にキュンキュン悶える。そろそろ慣れてほしいところではあるが、今日いっぱいは大目に見てほしい所存。
「AI秘書は、探索者の皆様の活動をサポートさせていただくことができます。例えば……配信回りであれば、アーカイブの整理。簡単な切り抜き動画の作成。サムネイルの撮影。コメントフィルターといった機能もございますね」
”サムネの撮影とか切り抜きの作成いいなぁ”
”コメントフィルター……あっ、さっきの……”
”うーん、それでも5万円は結構するなぁ、って思った。特にお嬢みたく2人目でも5万かかるのはなぁ”
「ふむ。お値段についてですね。AI秘書は『デブリ』技術を用いて作られた成長するAIです。このため1人に料金が発生するのは仕方ないところがありますね。武器と同様に考えてください。譲渡も可能ですし、特化した使い方をすればその方向に伸びるため複数運用にも意味はありますね」
”ああ、デブリ技術使われてるのか”
”ガチで成長するやつやん。いいなぁ”
”引退するときに譲れるのはちょっといいな”
「ある意味では人型のモンスターのテイムであるため、中級程度の武器と同程度の扱いであると考えていただければ。武器も予備は持っておくと安心でしょう?」
と、セバスがコメントを拾って回答する。『デブリ』とは、ダンジョンを産み出してしまう電子の
そして、その最新技術の粋がAI秘書なのだ。
「つまり、セバス達は『生きたAI』といっても良いんですのよ。むしろ食費や給金が不要な分、超お買い得な秘書なのですわ!」
「ほっほっほ。お嬢様の言う通りお買い得ですな。補足ありがとうございます」
「おーっほっほっほ、よろしくてよ!」
”なるほど。性格のリセマラとかするのはやめた方がいいな”
”普通のゲームだと引退するのも悲しくなるヤツ……!”
”BCDはダンジョンが生まれ続ける限り国が運営してくれるから”
「とはいえ、プレイヤーや武器と同じといってもダンジョンへの持ち込みは現状禁止されております。いずれは解禁される可能性もありますが、あくまでAI秘書はサポートとしてお考え下さい。ああ、配信システムを通じてモンスターの情報をお伝えしたり、謎解きのお手伝いをすることはできますよ」
”いわゆる有能視聴者枠ってことか”
”スパチャは送れないけどな”
”あ、でもオートポーションはできるんじゃないか?”
「はい、ポーションの使用許可があれば可能でございます。こちらはデフォルトではオフになっています」
「ま、まぁそれは追々考えますわ!」
お金を自動消費する機能は、デフォルトでオフになっている。
カロナもこれについてはオンにする気はない模様。だってお金がないんだもの。
「今はまだ、おすすめのダンジョンをお教えするに留まる程度ですね」
「お嬢様が以前引っかかりそうになった、初見殺しダンジョンを忠告することもできますよ!」
「あ、あれは無事攻略できたから無効ですわぁ!?」
というか、コクヨウは髪を
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(実家に帰省するので今年最後更新になるかしら?
というわけで、本年中はありがとうございました。来年もよろしくお願いします!
……あと、このお話のタイトル、略称がどうしたものかしらと思ってますわ!
「おじょダン」だと、他のお嬢様系ダンジョン配信モノと被りますわよねぇ……?)
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