メイドメイド。
そして、カロナはようやくメイドさんを作っていく。
視聴者のカロナイト達の意見を取り入れつつ、設定を決めていく。心なしか執事より設定できるパラメータが多いのは、きっと開発者の趣味だろう。
「猫耳については明確にせず、髪型が猫耳っぽいやつにするとかどうでしょう?」
「インテーク、という髪型ですね、お嬢様。こちらが参考画像です」
「あ、そうそうこれ。そんな名称ついてるのですわね。勉強になりますわぁ。ありがとうセバス」
”早速執事がサポート仕事を! さすセバ”
”さすセバ。参考画像付きは分かりやすいな”
「……これ、地味にメイドのカチューシャと競合しますわね?」
「素直に猫耳の方が合いますか」
「猫耳メイドでよさそうですわね」
”やった! 猫耳採用!”
「それで年齢はお姉さんだけど、ちびっ子。うーん、これは紅茶淹れるの大変そうですわね。うん、だから紅茶はセバスの仕事ですわよ! よろしくて?」
「お任せください。いつでもお淹れしましょう」
「……っ、……っ! うん、よ、よろしくお願いしますわっ!」
”ガッツポーズ隠せてないお嬢かわいい”
”お嬢、セバスに紅茶淹れさせる口実か?”
”すらっとしたクール美少女はー?”
「クール美少女なら私がいましてよ? キャラ被りしちゃうので却下ですわ」
”ん?”
”え?”
”は?”
「ちょ!? 私、クール系美少女のお嬢様ですわよねぇ!?」
疑問符で埋め尽くされたコメント。しかし実際ミカド嬢の配信で暴走したり、うっかりしまくったりと、クールとは似ても似つかないので視聴者の方が正しいだろう。
圧をかけてみるカロナだが、その様はますますクールから遠かった。
「……ともかく! セバスでキリッとした心を、ほんわか癒すコンボでいきますわ! 私を甘やかしてくれて、よしよしと頭も撫でてくれちゃう包容力あるメイドさんなのですわ!」
「包容力。……ふむ」
「安心おしセバス。ちゃんとお胸は『脱いだら凄い』に設定しておきますから」
「……トランジスタグラマーですな。いえ、私からは特に言うことはありませんが」
セバスが少し喜んでる雰囲気を感じ、カロナはニヤついた。
「ところで、トランジスタグラマーとはなんですの?」
「なに、ただの老人語でございます」
と、パラメータを弄っていく。あえて髪色は未設定で、他の設定からのAI生成に任せることにした。
「それと、少し裏の顔もある、の設定も採用ですわ! 女は秘密のある方が魅力的ですのよ。……でも私の事が嫌いなのはナシ! 私の事は愛してッ!! 愛に飢えてる女、竜胆寺カロナですわぁッ!!」
「おいたわしやお嬢様……紅茶のお代わりはいかがですか?」
「いただきますわ。……はぁー、落ち着くぅ……」
セバスの淹れた紅茶を飲み、一息つくカロナ。
「名前は見た目を確認してからつけましょうか。後付けで決めますわ」
「では、決定ボタンで生成してくださいますか、お嬢様」
「よろしくってよ」
決定ボタンを押すと、『生成中……』とウィンドウが表示され、しばらくするとセバスの時と同じくポリゴンがカタカタと集まり扉が作られる。
そこから、小柄ながらも女性らしい体つきの猫耳メイドが現れた。ふわりと肩ほどまでの黒髪。地味要素としてそばかすがあるようだが、それも魅力的に見える。黒縁眼鏡ごしにくりっとした黒目がカロナを見上げつつ、太めの猫尻尾が揺れた。
「……これは間違いなく化粧で化ける美少女ですわね……!」
「ああ、わたし、お嬢様にお仕えする日をずっとずっとずぅぅっと待ち望んでおりましたっ! お嬢様お嬢様お嬢様っ」
愛しくてたまらない、と、メイドは嬉しそうに目を細めて、カロナを抱きしめた。椅子に座っていたのでその高さはちょうどメイドの胸の位置だ。
「お、おおっ、せ、積極的ですわねっ! そしてこの膨らみ……こ、これは良いものですわぁ!」
「でしょう」
「なぜセバス様が得意げなのですか? ああ、お嬢様。わたしに名前を付けてください。どんな名前でも構いませんっ! お嬢様から頂けるお名前ならば、何でも最高です!」
「んんっ! で、では、そうですわね……その黒い瞳から、オブシディアン……黒曜石。うん、コクヨウなんてどうかしら?」
「はぁぁ、素敵な名前をありがとうございます。これよりわたしはコクヨウと名乗らせていただきますね、お嬢様!」
ぎゅむっとカロナを抱きしめるコクヨウ。
これR判定でBAN食らったりしませんわよね? と、カロナは柔らかい感触に包まれながら思った。
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