AI秘書! AI秘書ですわー!!


「こんカロナー! 目標金額一億円、いつかお嬢様になりたい系B-Caster、竜胆寺カロナですわー! 皆様ごきげんようですわー!」


”おっ配信きたな。こんカロナー”

”そろそろ同接も落ち着いてきたなー。こんカロー”


「先日は謝罪配信を行いましたが……さて! 今日はアレですわ、AI秘書の発売日ですわよ! 皆様のおかげで、スパチャが貰えるようになって、おかげさまで余裕をもってAI秘書を執事&メイドで2体買えるのですわ!!」


 AI秘書。BCDの新機能、AIに諸々の補助をしてもらえるという代物だ。

 動画の編集、アーカイブの整理整頓、おすすめのダンジョンの選出、推しの配信を踏まえたスケジュール管理。その他、BCDで出来る事であればなんでも手伝ってくれる。

 さすがにダンジョン攻略自体には参加してくれないが、モンスターの情報を教えてくれたりコメントの表示位置をいい感じに調整してくれたりとサポートはしてくれる、と、事前発表にはあった。


「というわけで、事前購入と事前DLは済ませてありますの。時間になったらアクティベートして即使用可能ってやつですわ!!」


”今日は他でもAI秘書の配信してるとこ多いね”

”事前DLえらい。こういうのって当日買ってからDLすると混み合うからなー”


「名前を付けられるようなのでそれも楽しみですわね! あ、でも執事はセバスチャン、通称セバスで決定ですわよ?」


”お嬢様的に外せないなw 元ネタ知らんけど”

”それ元ネタなんなの?”


「一説によると、とあるアルプスの少女のアニメに出てきた執事さんの名前らしいですわ。元々は英語やスペイン語の男性名で、聖セバスティアヌスに由来するとかなんとか」


”へぇー”

”あれ、じゃあメイドさんの名前はどうするの? ロッテンマイヤー?”


「19世紀、メイドの名前はメアリーやジェーンというのが普通だったらしいですわね。日本で言う花子みたいな感じで、奇抜な名前は思い上がっていて生意気、とかされていたようですわ」


”初めてお嬢が賢く見えた”

”お嬢様知識についてはそこそこ詳しいカロナ嬢”


 とはいっても、執事のセバスはともかくメイドは折角だし可愛らしい名前を付けてみたい。セバスは憧れなので譲れないけど。


「……さて、それではメイドをどういう名前にしましょう? ニクとかイチカとか?」


”あえてカロナ嬢よりお嬢様らしい名前にしてマイオドールなんてどう?”

”日本人な名前にするという手もあるな。絹江とか”

”一時的に仮の名前ってことでカリーナとかつけとく? あとで変えればいいっしょ”

”そもそもメイドさんの見た目に寄るんじゃない?”


「ふーむ、皆さん結構なアイディア出しますわね。でも確かに、メイドの見た目によるというところは大いにありますわ」


 うんうん、と頷くカロナ。

 そして、このAI秘書――タイプを切り替える他、大まかな性格の設定や、見た目のカスタマイズもできるのだ。


「というわけでぇ! 名前より先にどういうメイドさんにするか! ですわね! ちなみに執事はモノクル老執事ですわ!! 昔は傭兵で、私が幼いころから時に優しく時に厳しく接してくれる頼れる『爺や』で! おやおやいけませんよお嬢様そのようなことを……旦那様には内緒ですよ? というような幼き頃の秘密のやり取りをですね!」


”お嬢、急に早口になったな”

”あれ? 倍速再生してたかな?”

”爺や憧れわかる”


「ンンッ。あるいは、クールでそっけないタイプで黒髪赤目のイケメン。実は悪魔という――」


”お嬢、それ以上良くない”

”配信者なんだからアニメキャラの再現はちょっと”

”しかもそれちょうどそれもセバスだった気がする。アウト!”


「……たしかに配信に乗る可能性を考慮すると既存のキャラクターに被せるのは良くありませんでしたわね。じゃあ悪魔設定はナシで、やはり老執事ということにしておきますわ。でも片眼鏡モノクルで武器は糸、いいですわよね」


”セバスじゃあないけど見た記憶があるがまぁそれくらいならセーフ?”

”神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震える準備はOK? の人か”

”AI執事が一緒にダンジョンで戦ってくれたらいいんだけど、そういうのはないからねぇ。アドバイスはくれるらしいけど”


「むぅ、それは片手落ちになってしまいますわ。まぁ執事は老紳士として。メイドは有能か無能か……ドジっ子メイドというのも捨てがたいのですわよねぇ」


 実際現実に居たら大変なドジっ子メイドだが、ここはVR。お茶をぶち撒けられてぶっかけられたり転んでお皿を割られたりしてもすぐに片づけられる。


”お嬢がドジっ子なところあるし、有能メイドで大丈夫じゃね”

”メイドもドジっ子だと執事が可哀そうだと思います”


「お待ちくださいまし? どうして私がドジっ子だって証拠ですの?」


”調子乗って痛い目を見てから一度もマルチ行ってないよね?”

”先日のミカド嬢うっかりミラー配信を忘れたと申すか”

”うっかりお嬢様としてチャンネル登録者数1000人超えたお嬢様がなんか言ってる”

”謝罪寿司で醤油を忘れていくスタイル”


「うぐう! そ、そうでしたわ……」


 不満を表明したらあっさり論破され、カロナはしゅんと小さくなった。


「……って、ハッ!? 時間ですわよ! こうなったら実際にメイドはカスタマイズしながら作っていくとしましょう!」


”キャラクリエイト配信だー!”

”メイドさんを1から作るのか、いいね!”

”俺達のメイドさんをつくるぞー!!”


「私のメイドですわよ!? あげませんからねー!?」


 と、カロナはBCDの購入済みDLCダウンロードコンテンツの画面を開き、AI秘書を起動した。



――――――――――――――――――――――――――――

(執事はセバスチャン(老執事)として、メイドさんどうしようか悩みますわぁ……!! 皆さまはどのようなメイドがお好きでして?

 ストックがないので、今ならダイレクトに反映される可能性アリアリですわよ!)

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