魔法使いが死んだ夜
ネコシャケ日和
第1話
人は未知に魅せられる。
我々は知らないことに惹かれ、分からないことに恐怖する生物だ。
その連続が人の歴史であり、未知を既知とすることで人は人たり得てきた。
最たる例が魔法だろう。
百五十年前まで魔法使いや魔女の存在は未知でしかなかった。
火を使わずに暗闇を照らし、遙か遠くを水晶に映し、時に空さえ飛ぶ。
不可能を可能にするそれは神のみわざか悪魔の企みか。それらが真剣に議論されていた。
しかし研究が進み、魔法が術者の魔力を発火点としたエーテルの再構築によって発生するものだと分かると、人々の興味はあっけなく科学に移った。
なにせ使える人間が限られるのだ。才能がなければ使えない魔法を磨くより、確実に使える科学を解明する方がよほど有益だった。
その流れで一世紀半前まではなにかあれば呼ばれた魔法使い達は職を失い、魔法はほとんど継承されず、術者達はその数をめっきり減らした。
暗闇を照らしたければライトを使えばいいし、遠くを見たければ写真を撮ればいい。空も飛行船に乗れば飛べるのなら、限られた者しか使えない魔法の価値はほとんどないと言って良いだろう。
その結果科学が主役となり、魔法は街中で使うことすら法で禁じられた。
存在すら忘れかけられていた魔法使い達だが、彼らはひっそりと生き残り、細々と新たな魔法を編み出し、内密に受け継いでいた。
彼らは近代の魔女狩りと言われる科学技術の発展とは違う体系を作り上げていたのだ。
そして今、魔法と科学の融合が脚光を浴びる中、我々人類は再び未知と遭遇する。
誰も知らない新たな魔法という未知と。
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