社会に裏切られた俺、冒険者で成り上がる
三口三大
第1話 裏切りの連続
最初に俺を裏切ったのは両親だった。
母親はいわゆるカルトにはまっていて、幼かった俺は、自分たちと違う考えを持つ同級生は『悪魔の子』だと教えられ、それを本気で信じていた。
それが原因で、同級生にいじめられるも、『彼らに屈することは悪魔に屈すること』と教えられ、我慢することを強いられた。
また、父親は母親がヤバい状態にあることを知りながらも、俺を残して家を出て行った。
そしてすぐに別の家庭を持ったらしく、街で幸せそうな父親を見かけたときは、黒いドロドロした感情が溢れて出た。
俺を地獄に残し、自分だけ幸せになったことを今でも恨んでいる。
次に俺を裏切ったのは、小学校の担任だった。
あの人は、『皆仲良く』と普段から言っているくせに、いじめられている俺を助けなかった。
多分、俺が何も言わなかったから、見て見ぬふりをしていたんだと思う。
当時の俺は、『先生』を高尚な存在として捉えていたから、いつか助けてくれることを信じていた。
俺が、『先生』もただの人間であることを知るのは、もう少し先の話である。
先生と言えば、中学の担任も俺を裏切った。
さすがの俺も、中学生になり始める頃から、自分の母親と共存していくことは難しいことに気づく。
だから担任に、母親がカルトにはまっていることや、それが原因で人間関係に苦労したことを相談した。
そしたら担任は、『ありのままの
その言葉を信じていたが、誰も俺を受け入れることは無かった。
いじめはなかったものの、気味悪がって誰も近づかなかった。
この世界に自分を受け入れてくれる人間はいない。
そのときから、誰かと生きることを諦め始めた。
高校の担任も裏切り者だ。
母親との絶縁を考え始めていた俺が、その方法について相談すると、担任は『勉強を頑張って、良い大学に入れば、良い会社に入れるし、一人でも生きていける』と言った。
だから俺は、勉強を頑張り、母親の状況を理解していた伯父の力も借りて、良い大学に入った。
入学後は母親とも絶縁し、一人で生きることにした。
しかし、一人の生活は大変苦しく、生活費や学費を稼ぐために毎日バイトをしていた。
そして、勉強もバイトも頑張ったはずなのに、就活では思うようにいかず、結局ブラック企業にしか就職できなかった。
良い大学に入れば、良い会社に入れるが、中には例外もあることをしっかり教えて欲しかった。
また、実績を優先し、適当な会社を勧めてきた大学の職員のことは今でも許していない。
彼らが俺に対して真摯であれば、俺があんな奴らに苦しめられることは無かった。
あんな奴ら。つまり、会社の人たちのことだ。彼らのことは未だに恨んでいる。
上司がパワハラ気質で、学歴コンプレックスをもつ人だったから、毎日、いたずらに怒鳴られた。
「大学を出ているはずなのに、こんなこともできないなんて、どういう教育を受けてきたの?」
嫌味に苦しむ俺を見ても、先輩はフォローしてくれなかった。
人事部の人に相談したが、『人は怒られて成長する』、『今は辛くとも、そのうち慣れる』、『とりあえず、3年は頑張ってみよう』と言われ、耐えることを強いられた。
そして結局、メンタル的に仕事が続けられなくなって、俺は会社を辞めることになった。
会社を辞めた後、俺の手元に残ったのは、『うつ病』と書かれた診断書だけだった。
俺のそばに、期待を抱かせた人々の姿は無い。
一人きりのワンルームで、俺は俺が関わってきた全ての人を、そんな人々を生み出したこの社会を恨んだ。
皆、俺を期待させるだけ期待させて、結局最後に裏切った。
この社会に俺の味方はいない。
全員が敵だ。
しかし、そんな社会に復讐することもできず、涙を飲むしかなかった。
それから死ぬことを考え始めた。
さっさと死んで、この苦しみから解放されたかった。
上司は俺のことを『腐ったミカン』とか、『社会のお荷物』と言っていた。
その通りだと思う。
俺が生きていたところで、この世界にプラスになることはない。
でも、自殺する勇気が無いから、毎日、死ぬ理由を探して、街を徘徊した。
そして、俺は見つける。
俺の死に場所を。
それが、『ダンジョン』との出会いだった――。
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