アウトホールシティ
宮塚恵一
Chapter1:End Game of "Two-Way" Lee
隠された一刀(前編)
アドレナリンが迸る。世界が煌めく。
舌舐めずりをし、僕は対戦相手の
対戦相手の意識はもう天国で、僕は高笑いをあげて刀によって開いた相手の胸から心臓を鷲掴んだ。
心臓を高らかに掲げる。同時に観客の響かせる声が身体に染み渡る。
「
「ジャック! ジャック! ジャック!」
勝利した僕二人は観客の目線を独り占めにする。この闘技場で観客の
僕は高く掲げた心臓を床に叩きつける。そして闘技場で歓声を浴びている僕の二人の
「云十回目の優勝、おめでとう」
「今回はまあまあ手強かったですね」
言いながら、鼻で笑った。
「でも僕の敵じゃないですよ」
「素晴らしい」
オーナーは五指に嵌められた宝石を輝かせて、大袈裟な身振りで僕を称えた。オーナーは絵に描いたような成金趣味だが、そこが逆に解りやすくて良い。
「頼もしいね。君の活躍こそ、この
「そう言うならもっと強い奴を寄越してくださいよ、ボス」
「違いない。実はもう次の対戦相手は決めてある」
「大会優勝してすぐだってのに人遣いが荒い」
「ははは。そう言うな」
オーナーは背後に控えていた使用人に指示を出した。それと同時に、僕の携帯端末が反応する。端末を確認すると、オーナーから
普通に生活して使っても百年は使い切れない額だ。
オーナーは、僕が振込を確認したのを見ると、にやりと気味悪く笑った。
「
「確かに」
ここ、
剣闘士は
文字通り、命懸けの闘いだ。
闘うのが
その
僕は二人の
人の姿こそしているが、剣闘士の殆どが使用している遺伝子操作によって産まれた
当然、一人の剣闘士につき
慣れてしまえばピアノの演奏と同じだ。人間は訓練すれば左右で別の言語で別の文字を書くことだって出来るようになる。
左右の手で別の動きをすることと、二体の身体を操るのには、僕にとってそう違いはない。
それぞれが刀を手にした二人の
「で、次の相手ってのは」
「こいつだ」
僕はオーナーの示した対戦相手の
「まだ子供じゃないか」
そこに情報が記されていたのは、まだ年端も行かぬ少女だ。当然、これまでも子供の剣闘士を相手にしなかったわけではないが、オーナーがとっておきの相手のように言うものだから拍子抜けしてしまった。
「この少女の姿が
「それも面白いな。その趣向も考えてみよう。ワイドバグを覚えているか?」
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