マイナスのレッテルからの成り上がり〜下着泥棒の冤罪で居場所を失った俺だが、氷の女神様は真実を知っている〜
タキテル
第1話 学校に居場所をなくした瞬間
俺はある出来事をきっかけに高校生でありながら人生のドン底に転落した。
地の底の底。二度と這い上がれない状況になっていた。
「ち、違う。俺じゃない。無実だ。信じてくれ」
必死に無実を主張する俺、
「違うも何もその手に持っている下着は何? それが動かぬ証拠でしょ」
「いや、だからこれは違うんだ」
「何が違うのよ」
「いや、だからこれは……」
握りしめていたパンツを今更隠したところでもう遅い。
俺が否定すればするほど周囲の女子たちは怒りの感情がヒートアップしているのが目に見えていた。
サイテーとか変態とかそんな罵倒が集団で襲い掛かった。
誰も俺を庇ってくれない。数の攻撃で俺は完全に戦意を喪失した。
認めたくないけど、認める他なかった。
この場を収めるために俺は力なく膝を床に付けた。
「俺がやりました。どうもすみませんでした。許してください」
負けを認めたとも言える発言に女子たちに土下座をする。
当然、女子からの批判は凄まじい。いろんな物を投げられて俺は痛がる様子を堪えて土下座を続ける。
「ふざけんな!」
「死ね! 峯岸!」
「女の敵! 消えろ」
「二度と学校に来るな!」
どんなに罵倒を浴びさせられようが俺に言い返す言葉も気力もない。
こうするしかなかった。俺が罪を被ればこの場を収めることが出来る。
今はほとぼりが冷めることを願うしかない。
だが、それが大きな間違いだったかもしれない。その日から俺は下着泥棒としてマイナスのレッテルを貼られてしまったのだ。
こうなってしまった経緯は俺の人を疑わない性格が災いしていた。
人を信じる癖があった俺はよく友達に騙されることが多かった。
友達のついた嘘を真に受けてからかわれていたが、ただのおふざけとして特に気にすることではなかった。
「おい。アイドルの〇〇ちゃんが近くにいるって言っていたのにいないじゃないか」
「そんなわけないだろ。峯岸はまた騙されたのか。本当、単純だな」
友達は騙された俺の姿を見て小馬鹿にしながら笑った。
少しイラッとすることもあったが、遊びの一環としてこそまで怒ることではないとその場に合わせて作り笑いをする。
良く言えば真面目だが、悪く言えば騙されやすいというのが俺の特徴とも言える。
高校二年生に進級していつもと変わらない生活を送っていたが、あるきっかけで俺は自分の単純な性格が災いをもたらすことになる。
「あの、私と付き合ってくれる? ずっと好きだったんだよね。峯岸くんのこと」
そう告白してくれたのは
同じクラスのギャルの一人だ。派手な金髪にネイルをしている可愛い女子だ。
クラスの中では間違いなく一番可愛い存在の女子である。
ついに自分にも彼女が出来る時が来たのだと俺は二つ返事で了承した。
「こちらこそよろしくお願いします」
本当に自分のことが好きな女性が現れたと思った。しかし、それは大きな嘘であることを知ってしまう。
「峯岸君。ちょっと更衣室に忘れ物しちゃってさ。悪いんだけど取って来てもらっていいかな?」と、若草は俺にそうお願いしてきた。
「更衣室に? でも男の俺が女子更衣室に入るわけには……」
「大丈夫。今は誰もいないからサッと入ってサッと取ってくれば問題ないよ。お願い。彼女が困っているんだよ。助けてくれないの?」
甘い口調に手を合わせてまるで小動物のような目をしていた。
「わ、分かった。何を取ってくればいいの?」
俺は若草から下着を取ってくるようにお願いされた。
不用意に水を浴びてしまい、現在はノーパンだと言う。変に動けないため、俺に予備の下着があるから取って来て欲しいとのことだった。
「更衣室を入って左側の二段目の中央に私のカバンがある。そこに予備の下着があるから急いで取って来てほしい」
彼女が困っているんだ。俺は力になってやろうと正義感の中、女子更衣室へ向かった。
誰かに見られたら一巻の終わりだが、ここはスピードとの勝負である。
「ここか。急いで任務を終わらせないと」
更衣室付近には誰もいない。今のうちに更衣室の中へ入り、若草のカバンへ向かう。
入って左側。二段目の棚。その中央。これか。俺は目的の物を見つけて手を伸ばした。
だが、その時だ。手を伸ばした瞬間、パシャリとフラッシュがした。
え? 撮られた? 窓に目を向けるとスマホのカメラレンズがこちらを向いていた。
やばいと思い、俺は更衣室から撤退しようと扉に手を伸ばした。
「え? なんで? 開かない」
ガチャガチャとドアノブを回すが開かなかった。外から鍵を掛けられたらしい。
出るに出られず、完全に閉じ込められてしまった。
「くそ。なんで」
この状況が一番まずいことは容易に分かる。だが、閉じ込められるだけで終わらない。
窓から何かが更衣室に投げ込まれた。
球体状のものが破裂して中からガスが漏れ出したのだ。
「こ、これってまさか……」
ガスを吸ってしまい、眠気に襲われた。間違いない。これは催眠ガスだ。
意識が朦朧とする俺は力なくその場に倒れてしまった。
そこから意識が無くなり次に目覚めた時は最悪の事態になっていた。
ガヤガヤと女子たちの喋り声と共に更衣室に入る物音がする。
「きゃー」と言う悲鳴を耳にしたことで俺は目を覚ました。
「ちょ、誰かいる。男よ! 痴漢?」
「あなた、三組の峯岸真拓ね。ここで何をしているの!」
「え? 何って? なっ! ど、どういうこと?」
上半身を起こすと俺は女子の着替えや下着などを布団代わりにして寝ている状況だった。訳がわからず、周りの女子たちよりも俺の方が困惑していた。
「ありえない。下着に囲まれて気持ちよく寝ているなんて」
「まさか下着泥棒?」
「随分、堂々とした下着泥棒ね」
有る事無い事、女子たちの口は止まらない。
「ち、違うんだ。これは何かの間違いだ」
女子たちは俺を囲むようにして見下ろすように見ていた。
これはもう逃げられない。今、起こっているのは女子更衣室で俺が下着を物色していたと思われる光景だった。その言い逃れのできない状況に女子たちは攻め立てた。
「言い訳くらいなら聞いてあげるよ。あなたはそこで何をしていたの?」
「言い訳って俺はただ頼まれただけだ」
「頼まれた? 誰に?」
「若草だよ」
俺が名前を出したことで女子たちの視線は後方へ向けられる。
「伶奈。峯岸にそんなこと頼んだの?」
女子たちの奥から若草が前に出る。
誤解が解けると思い、その場にいた若草の存在に安堵した。
すぐに俺は若草に駆け寄る。
「よかった。若草。俺が無実だと証明してくれ。お前に頼まれた下着を取りに来ただけだって」
すると、若草は一瞬、暗い表情を見せた。それはまるでゴミを見るような突き放す目だった。
次の瞬間、若草は俺の身体を押した。その反動で俺は尻餅を付いてしまう。
「わ、若草?」
「はぁ? なんで私があなたにそんなことを頼まなきゃいけないの? 意味が分からないんですけど。気安く近づくなし。変態が移るっての!」
心にもない発言に俺は困惑しながらもナワナワを震えていた。
ここで若草に突き放されたら俺の無実を証明することは出来ない。
たった一つの希望が消えかけた瞬間だ。
「な、何を言っているんだ。冗談はよせよ。そんな冗談面白くないよ。彼女の頼みで俺はわざわざ……」
「彼女? なんで私があなたのような変態野郎と付き合っていることになっているの? 冗談は辞めてくれる? 苦し紛れに私を言い訳にするなんてマジ迷惑。最低よ」
若草の発言で女子たちは賛同するように俺に暴言を吐いた。
無実が晴らせず、女子たちは現行犯としての事実が染み付いていた。
若草は女子たちの奥に引っ込み、口パクでゆっくりと俺に何かを言った。
その口の動きから見て「バーカ」と言っているように聞こえた。
この瞬間、俺は全てを悟った。ハメられたんだと。
何もかも俺をこの状況に陥れるために仕組まれたものだと理解した。
後は知っての通り、下着泥棒と認めて土下座をしてから酷いものだった。
たった一瞬で俺の評価はマイナス。地の地へと墜ちた。
■■■■■
新作!
現代ファンタジー系初挑戦です。
少しドロドロした展開が続きますが、
主人公の峯岸が成り上がる姿を見守って下さると幸いです。
展開が遅いですが、ご了承ください。
続きが気になると思って頂けたら是非★★★をポチッと
よろしくお願いします!
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