名案

 ある日、私の中に名案が生まれました。


 嗚呼、さうだ。


 勇者が生まれたというのなら、力をつける前に消してしまえばいいのだ。


 やはり私は天才でした。


 やられる前にやり返す。そうすればやられることは決してない。


 まるでコロンブスの卵です。にわかに未来が開けたような気がして、私は晴れやかな気持ちになりました。


 私は取り急ぎ、セイクレッドハイム付近にいる配下たちに連絡を取りました。連絡は水晶を通じて行います。


 電波が悪いのか、なかなか中継が繋がらず苛々しました。


 思わず水晶を破壊してやろうかと思ったところで、手下のオーガが映り込みました。


 オーガの好物は人間です。とりわけ、子供の肉を好んで食べるそうです。


 この種族ほど勇者の討伐に向いている魔物はいません。ですので、私は彼らに勇者の生まれたとされる村を襲うよう指示をしました。


 私だって生きていかねばなりません。


 生きるために自身の脅威となる存在を消そうとするのはごく自然ななりゆきかです。だから迷いはありませんでした。


 さあ、勇者たちを喰い殺してきなさい。


 そう伝えると、彼らは背を向けて消えていきました。


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