まおうのにっき
月狂 四郎
魔王death
魔王です。
この日、私にとって最悪な出来事がありました。
だからこの手記を始めようと思います。
遥か南にある弱小国、セイクレッドハイム――その夜空に世にも珍しい流星群が見られたそうです。
そのさまはとても美しく、たくさんの人々が流れる星を眺めては願いを捧げたと聞いています。
私ですら、この日は星に願いを捧げたくなりました。
ですが、私は神に嫌われている。
流星群の見えたセイクレッドハイムで、勇者と呼ばれる男子が生まれたとの報告を受けました。
セイクレッドハイム駐在員の配下がわざわざ中継で報告してきました。純粋なる忠誠心でそのようにしてくれたのでしょう。
ですが、嗚呼、それが私にとってどれだけ過酷なことだったか。
彼が勇者生誕の報をそのまま握りつぶしてくれていたら、私はどれだけ穏やかに生きていくことができたか。
――いよいよこの日が来たか。
諦念とともに、やりきれない気持ちがこみ上げてきました。
勇者たちの凶悪さはよく聞いていました。その記録は書物にも残されており、物語の中でしか存在しえないはずの暴君のはずでした。
曰く、彼らは何度殺しても蘇り、曰く、より強くなって帰って来る。彼は私たちが死ぬまで向かってくるというではないですか。
私の配下にもグールという存在はありますが、それですら肉体の限界を超えれば動かなくなります。
ですが、奴らは煮ようが焼こうが神のご加護とやらを受けて復活してくると聞いています。なんて恐ろしい奴らなのでしょう。
そういった背景もあり、遠く離れた地で勇者が生誕したと聞いた時には、いよいよ私の人生も終焉を迎えるのだと思いました。
これからは殺されると確信しながら毎日を送っていくのか。そう思うと絶望しか沸いてきませんでした。
嗚呼、私はこれからどうなるのでしょうか。
ですがその不安も恐怖も語られることなく、畏れを知らぬ魔王として玉座でふんぞり返っていなければいけないのです。
この気持ちがあなたに分かりますか?
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