第12話

「お前が言わせたんだろうっ!!!記者どもが、すでに嗅ぎつけて、写真を撮っていた」

「え」

「そこは、国家権力でねじ伏せたが」

「さすが父上」

「貴様は、本当にろくでなしだ。なぜ、いつも私の、王族の品位を落とすようなことをする。なぜ、弟たちよりも劣っている」

「私なりに頑張っているんです」

「そうか?私には、お前が頑張っているようには、とても思えないが」

「父上は、忙しくて、全然相手してくれないから…私が、どれだけもがいていて苦しんでいるか分かってないんだ」


何を拗ねた幼児のようなことを言っている。

ここまで、精神的に幼い男だったか?


「お前は、成績もよくないし、顔もよくない」

「ひどい…」

「それにその髪と目だ」

「……」

「王族は、ほとんどが、銀髪に青い瞳を持って生まれてくるというのに…」

「私の髪と瞳の色など、どうでもいいでしょう…」


ヴィクターは、私の息子の中で唯一、茶色の瞳と髪を持っている。

母親譲りのその色を、ヴィクターは幼いころは、母親似と誇らしく思っていたようだが、徐々にコンプレックスを抱くようになった。

第2王子やほかの弟王子にまで、手を上げるようになった。


「国民から見て、どう思うかが重要なのだ。銀髪に青い瞳は、王族の証。王族の血筋が流れている証拠だ。だから、平民はおろか貴族にすら、その色を持つ人間はいない。分かりやすい象徴こそが、重要であると、なぜわからない」

「ですが、私は王太子です」

「そうだな。だが、それもナターシャ嬢が、お前を選んだからだ」

「……」

「でなければ、誰がお前なんぞを王太子にするものか」

「そんなに…あの女が大事だというのですか」

「そうだ」

「…あんな女、なんの魅力もないのに」

「お前、そんなことを侯爵の前で言ってみろ。…私が、お前を切ってやるからな。さぁ、行け!お前が媚びるべき相手を見失うなっ!」

「……」


背を向けた息子の顔は、私には分からない。

反省してくれるといいが。

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