第8話
「それより王子、ここにはいったい何しに来たんですか?」
「君に会いに来た、って言ったら?」
「ご冗談を」
「兄上が、最近ふしだらになっているという噂を聞いてね。本当かなって思っただけ。さすがの本業をおろそかにしているわけではないよねって希望を抱いて来てみたら、これってわけ」
これ、と王太子を指でさしておられます。
「王族の恥だよね。うちは、割と浮気に厳しいほうなのに。母上も潔癖だし、父上は、母上に頭が上がらないし、おまけに下には、王太子をつけ狙う輩がうようよいるし」
「輩って…」
確かに陛下は、子だくさんです。
第2王子のほかにも歳の近い王子たちが、2人ほどいますし。
「自分は、絶対に大丈夫って思ってるんだろうね。そんなこと、ないのにさ。ね?」
「……まぁ。自分から墓穴を掘らなければ」
「掘ってるから、こんなことになってるのに。成績も落ちてるらしいし、何しに来てるんだか」
「つかの間の自由を楽しんでいると、本人は言ってましたけど」
「自分の立場を何だと思ってるんだか…まぁ、僕には、やりやすくて、ちょうどいいけど」
王太子を見る王子の目は、ずいぶんと冷たいです。
一応、兄弟であるというのに、それほど王族というのは、大変なんでしょうか。
私には、兄弟というものがいないので、分かりません。
ですが、気持ちは分かります。あの王太子の弟じゃあ、苦労もするのでしょう。
私でさえ、イライラすることが多かったのですから。小さいころからずっと一緒にいる王子は、もっと苦労されていることでしょう。
「あんまり君を野放しにされると、困るんだよね」
「野放し?私は、ペットですか?」
「大事な人だよ。国にとっても僕にとってもね。だから、変にほかのやつに絡まれても面白くない。少しは、盾になってくれると思ったのに、兄上があんなんじゃあ、つけ入るすきを与えているようなものだもの。そりゃあ、慌てて帰ってくる羽目になるよね」
「はぁ…?」
よくわからないが、とりあえず予定より早く帰って来たということでしょうか。
「確かに留学から帰ってくるの早かったですね。もう少しゆっくりしていかれたら、よかったのに。あちらのお姫様は、どんな方でしたか?」
「興味ある?」
「お姫様ですもの。すっごく気になります。とてもお綺麗な方と聞きました」
「まぁね。外見はね」
「聡明な方と聞いてますが」
「王族の悪口なんて言う人、ほとんどいないよ。陰ではごちゃごちゃ言われてるけどね。まぁ、僕みたいな人」
「なるほど」
めちゃくちゃ分かりやすいです。
つまり、綺麗で聡明で、素晴らしい姫君ということですね。
「すっごく個人的にお会いしたいです」
「僕はやだな。同族嫌悪で、疲れちゃった」
「…同族嫌悪?」
「向こうは、君に興味深々だったけどね。宝石姫って呼ばれてて、有名だよ」
「ああ。うちの名産品ですからね。そう呼ばれても不思議ではありません」
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