元奴隷種族、サーブが英雄になるまで
さいだー
空はどこまでも晴れ渡り、種族問わず同じように太陽は降り注ぐ
この世の中は平等らしい。
そうお父さんとお母さんは言っていた。
でも、アイルは違うと言った。
この世の中には差別があふれていると。
差別と言うものが何なのか、そもそもが僕にはわからないから、結局は平等なのかどうなのか僕にはわからない。
アイルはいつも僕に色々な事を教えてくれる。
読み書きも教えてくれたし、数の数え方も教えてくれた。
そのお陰でいま自分が、九歳であることを正確に知っている。
オルドと自分の名前を書くこともできるし、簡単な文字なら読むこともできる。
アイルもまだ完ぺきには読めないみたいだから、先生がそんなだから仕方ないよね。
お父さんとお母さんは自分の正確な歳を知らない。
自分の名前を書くこともできなければ、文字を読むこともできない。
これは僕たち、黒目黒髪の種族が学校に通う事が難しいからだとアイルから聞いた。
難しい事はよくわからないみたいだけど、それがこのアリスベイズでは、当たり前の事で、ずっと昔から続いている事らしい。
「おい。オルド!なにボーっとしているんだ。早く馬小屋の掃除を終わらせないか」
「はい。すいません。すぐに終わらせます」
「全く、これだからサーブは」
「ちょっとヤメスさん。サーブはマズイですよ。マグナ、マグナ族。彼らはマグナ族です」
馬の管理を任されている金髪碧眼のアリスベイズ人の二人がそんな事を言い争っているが、僕は気にしない。
幼い頃から繰り返されてきた光景だからだ。
もしかしたらコレが差別と言うものなのかもしれないなと、昨日アイルから教わったばかりの言葉の意味をかんがえる。
「ほら、サーブでもマグナでも良いからとっとと手を動かせ!」
「はい。わかりました」
僕は笑顔でそう答えるとスコップを手にとって馬のフンの掃除を初めた。
「日が暮れる前には終わらせておけよ!」
「はい。ヤメスさん」
それだけ告げると、アリスベイズ人、ヤメスとロンゲルは馬小屋から出ていった。
ごちゃごちゃよけいな事を考えていても仕方がない。ちゃっちゃと仕事を終わらせて、アイルから僕のまだ知らない事を教えて貰おう。
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