第3話 襲撃
パトロールはいつも通りだった。
上空を飛ぶドローンからの情報が指揮官機に集められる。
指揮官機には情報収集と伝達の為に複数のアンテナとパラボラアンテナが通信パックと呼ばれるバックパックに付いている。そこには情報処理用の高性能演算回路があり、人工知能が走っている。
「もうスタンバイ状態の無人兵器も電池切れでダウンしてるだろうし、この地域も安全は確保されたと言えるか・・・」
指揮官は冷静に周囲の分析を行う。事実、危険性を感じる熱源は無い。だが、休眠モードにして、待機している可能性もある。かつての敵地において、油断は禁物だった。
制圧地域の無力化は想像以上に難しい事だった。
無人兵器に地雷、そして民衆に隠れた元軍人のテロリスト達。
配給こそ続けているが、民衆の多くはそれで満足してはいない。
モスクワを拠点として立ち上がった大ロシア帝国に共感を覚える者は少なくない。
彼らは周辺の都市にシンパを派遣して、民衆の中で勢力を拡大しつつあった。
無論、情報収集をして、予防をしているが、キリが無い。
結果として、彼らは戦力である軍の部隊に攻撃を仕掛けてくる。
戦場に放置された無人兵器の復帰はもっとも簡単な事だった。
すでに燃料、電池切れの個体にそれを与えるだけなのだから。
待機状態の無人兵器はセットされた敵情報を感知すると起動する。そして、即座に攻撃を仕掛けて来る。
『二時!熱源!ミサイル!』
4号機が襲撃を受けた。
至近距離からの対戦車ミサイル。回避不可能な距離だった。
鎧のような人型戦闘機ではあるが、本体で防げるのは10ミリ口径前後の銃弾まで。
対戦車ミサイルなら木端微塵に吹き飛ばされる。
だが、対策をしないわけがない。腕には戦車の装甲と同様の盾が設置されている。
対戦車ミサイル一発なら、何とかこれで防ぎ切れる。
ミサイルは盾に命中して激しく噴流を吐き出しながら、爆発する。
一撃で人型戦闘機は吹き飛ばされ、転がるが、破壊されたのは盾だけで本体には目立った損傷は無かった。
「4号機、大丈夫か?」
隊長は周囲を警戒しつつ、倒れた4号機に声を掛ける。
その間に発射地点にあった無人兵器を仲間が破壊する。
4号機は無事に立ち上がった。盾は破壊されたが、機体の右側が煤けたぐらいだ。
無事とは言えないが、パトロールは終わった。
機体を整備に預け、ポチ達はブリーフィングルームに移動する。
ここでパトロールの情報共有と指導が入る。
やはり問題は敵の無人兵器であった。
破壊時の画像情報から、敵無人兵器は軽自動車程度の車両に対戦車ミサイルを搭載した物だ。基本的に待ち伏せ専用の兵器ではあるが、すでに電池は切れていると想定されていた。だが、画像には外部電源が設置されているようなので、電池切れの機体に何者かが電源を与えたのだろうと予測された。
「テロリストの活動が活発化している。バッテリーなど、奴らにとっても貴重なはずなのに、こうして、使っている。奴らの資金源が何なのか不明だが、大変危険な事態だと考える。今後は無人兵器を虱潰しに破壊する事になるだろう」
戦場にどれだけの無人兵器が眠っているか。考えただけでも恐ろしい。
ウクライナ戦争でドローンが当たり前となってから、世界は無人兵器の開発、製造を進めてきた。そして、今次世界大戦においては有人兵器の百倍以上が戦場に投じられたと言われている。そして、彼らに命令を与えていた国家の多くは滅亡し、彼らに停止を命じずにいる。
暴走した無人兵器は彼方此方で被害を出している。戦争がまだ終わってないかの如くに。
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