第44話 水圧で潰す

「とりあえず、水だ。僕は水魔法使いだからな!」


 なにごともやってみなければ始まらないさ。

 僕は意味がないと知りつつ、人形たちを水の“檻”で包み込んだ。


 相手が人間なら、これで窒息してくれるんだけどなあ……

 あんのじょう、紫雲院シオンには笑われてしまう。


「なにそれ? 人形は窒息しないよ? ぷー、くすくす」


「まあそうおっしゃらず」


 ぷー、くすくす、なんて笑い方するやつはじめて見たな……

 口にして煽ってやってもよかったけど、今はやめておく。


 そうだなあ、人形は窒息しないだろうなあ。

 んじゃまあ、とりあえず……


「潰れてくれよ。そうおっしゃらずに!」


 水圧操作――深海海底もかくやの超重圧を与えて、人形をまとめて押しつぶす!

 潰れる、潰れる、見るも無残とはこのことだ。

 ひゃっほー、ホラー人形どもがスクラップだぜ!

 僕が気分よく笑っていると、シオンが文句を言う。


「男の子ってホント野蛮。とりあえず壊せばいいって思ってない?」


「当たらずとも遠からずかな。今のであんたの攻略法を思いついたよ」


 シオンが、きょとんと人形の目を丸める。

 僕としてはね、不滅の存在なんてこの世にないと思っているから、言ってやるさ。


「茶番は終わりだ。気味の悪い人形劇にはお引き取り願おう」

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