第19話 いつでも手合わせができますね

「というわけで、学園長に話はとりつけたわ。同好会長」


 放課後、僕は空き教室にいた。美琴もいっしょだ。

 部室を持たない魔法剣研究会は、空き教室を間借りして集会するのだ。

 話題は、新同好会員の紹介と、部活動対抗戦について……なのだが。


「なななな、なんてことをしてくれたんですか!? 有栖川先生!?」


 悲鳴を上げたのは先輩だ。

 先日、僕と美琴を勧誘した同好会長が青い顔をしている。


「大会出場なんてむちゃくちゃです! うちは本当に、ただ魔法剣の技術を研究するだけの、お遊び同好会ですよ!?」


「同好会だとしても、活動には実績が必要よ。男なら腹を決めなさい」


「理不尽だ! っていうか、その話を聞いて、ほとんどの同好会員が退会しましたよ! 誰も残っていませんよ! 人員不足ですよ! どうしてくれるんですか!?」


「うれえる必要はないわ。去る者は追うな。それは私たちの旅路に必要のない人材よ」


「旅路ってなんですか、旅路って……いい歳してマイワールドに浸らないでくださいよ」


 同好会長と有栖川先生が、噛み合わない会話を繰り広げる。

 いやま、そうなのだった。

 僕と美琴が入会した以外に、魔法剣研究会の新人はいない。

 そしてまた、わずかに活動していた会員たちも、学園長が提示した大会参加の条件をおそれて、退会してしまったのだ。脱兎のごとく!


「同情しますよ。先輩」


「あ、でも、ふたりきりなら、いつでもまつりくんと手合わせができますね!」


 どこまでも前向きな美琴の発言を、僕は聞かないことにした。

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