93「無敵の人vs世界最強」3


 壊れない。ディランのバスターソードは壊れていない。武器の性能が凄く優れたものなのか、このディランという人物の力量が今まで戦ってきた連中と桁外れなのか。いや、その両方か……!


 ギン!ガギンガギン! 大鉈とバスターソードが何度も激しくぶつかり合う。お互いの武器は壊れず。


 「言っておく。俺ぁ車とか乗り物と同じで、エンジンかかる本気出すまで時間を要するんだ。だからもうしばらくの間だけ、このレベルの範疇での全力でいかせてもらうぞ!」


 一方的にそう告げるとディランは一歩で数メートル下がり、掌をこちらに向ける。そこから強烈な電撃波が放たれた。咄嗟に鉈で防いだが、金属であることから鉈を持つ手と体が感電してしまう。

 あいつ、あの体型からして近接戦特化かと思いきや、魔術とか遠距離も使えるのかよ!まぁ考えてみたら「念動力テレキネシス」を使えるし、これくらい出来てもおかしくはないか。


 「俺が使える魔術は電気と、もう一つ!そらァ!!」


 バスターソードを地に突き刺して自由となった手から、ピカっと眩しいのがきて、反射的に目を閉じてしまう。


 ドゴオ!! 腹部に強烈な衝撃、続いて焼ける痛みが襲った。眼を開くと僕の体は空中へと押し出されていた。ディランの手からは極太の光線が放たれている。直前の眩しいやつからして、光属性の魔術を放ったってわけか。

 光の奔流が僕の巨躯を上へ上へと押し出していく。大した魔術の威力だ。近接戦ダイレクト遠距離リモートともに長けているバランス型の戦闘タイプ。


 「アメリカ・世界どっちも一位を名乗るだけはあるな………何でも出来るぞって示してるつもりか?俺には無い力を見せつけて優位に立ったつもりでいるのか、一位さまよォ………調子に乗ってンじゃねーぞ!」


 ドパァン! 腹筋におもっくそ力を入れて、光の奔流をはじきとばした。直後グンと見えない強力な力に引っ張られる感触が。地上を見るとディランがこっちに掌をかざしてやがった。


 「またあの念動力か………ちょうどいい。今からテメェんとこへ行こうとしてたとこだ!」


 ディランの念動力に引っ張られるのを逆手に取ってやる。馬鹿力を発揮して、念動力の流れをこちら側に変えた。結果、逆にディランが僕の方へと引き寄せられるという、真逆の現象が起こった!

 自身の想定外のことに驚愕の顔を浮かべるディランだったが、そこは世界一の探索者のプライドか、すぐに迎撃態勢に入って常人の倍はあるサイズの拳を振るってきた。

 

 バキッ! ディランの拳を紙一重で躱し、カウンターパンチを奴の顔面に叩き込んでやった。ディランは凄い勢いで地面へ落下していった。

 常人なら首が千切れとぶ威力のパンチ。しかし奴の頭はどこにも飛んでいってない。ズドォンと大きな激突音がしてその方を見ると仰向けで倒れてるディランが。奴がいる地面は陥没していてクレーターが生じている。

 いちおう加減無しの「ちょっと」強いパンチを叩き込んだのだが、


 「プッ!効いたぜ、今のカウンターパンチはよぉ」


 見ての通り、ディランはまだピンピンしてやがる。汎用スキル「耐久強化」、しかもレベルMAX。それによって体の頑丈さが化け物級へと跳ね上がってる。中途半端な攻撃じゃ奴をダウンさせるのは無理と思った方が良いな。

 

 「ギアがまた上がってきた………次こそは俺の攻撃ターンとさせてもらうぜ!

 二つある固有スキルのうち一つ、攻撃技に特化した俺の切り札、その一つ目―――」



――ディラン視点――


 俺、ディラン・バッキンダンがサクヤキリサメと戦う、前日の夜。


 ピッ 「俺だ………あん?こんな時間に呼び出しか?ウヅキの件でまだ何かあんのか?………何だと!?それはマジなのか!?」


 唐突な報せに力みが入り、思わずスマホを握り潰しそうになった。それほど衝撃的な報せだった。

 報せその1、俺が立ち上げたギルドの一員であるウヅキオサカベが来日先のホッカイドーで日本の犯罪探索者に殺害された。殺ったのはサクヤキリサメとかいう、探索者・一般人無差別に大量虐殺したというクレイジーな殺人鬼。当然聞いたことも無い名前の元探索者だ。

 報せその2はそのサクヤキリサメがアメリカに移ってきていたのが発覚したこと。ウヅキを殺してまだ二日しか経ってないうちにどうやって渡米したのか。

 報せその3、同人物が巨大企業ミクロンソフトCEOの長男と末っ子を探索者協会ニューメキシコ支部ギルドを殺したんだと。

 普段であれば驚く報道だが、この時の俺はマディランのガキどものことなど頭から抜け落ちていた。ウヅキの死亡報告がいちばんの衝撃だったからな。


 ウヅキが殺されただと?アメリカ3位、世界でも11位のアイツが、日本で不覚をとったというのか?サクヤキリサメとかいう、米国こっちじゃ無名の犯罪探索者ごときに……っ


 この日の夜、俺は屋敷を飛び出し、俺を全面的に支援しているワシントン支部(五大ギルドの一つ)に顔を出した。ギルドには支部長のほか、よその五大ギルドの支部長たちも来ていた。

 夕刻、日本探索者協会から緊急の連絡が入ったと第一に告げられた。内容は屋敷での電話で聞いたのと同じ。ウヅキを殺害したほかホッカイドーの自衛隊員を大勢殺し重傷を負わせて逃走したというサクヤキリサメ。

 そいつはそれ以前からも多くの事件を起こしていたとか。始めは自分が通っていた高校ハイスクールのクラスメート、教員を惨殺。その次は自分が所属していたキタカントー支部の探索者・職員を皆殺し。さらには同支部が管轄していた探索エリアにて、日本では有名な配信探索者のライブ配信中に(どうやったかは知らんが)一般人を多数虐殺。

 それからひと月ほど経って、日本トップと言われているパーティ「リベルタ」の祝賀会に潜り込み、そこでまた多くの探索者を虐殺した。詳しいことは知らんが、「リベルタ」のリーダー(日本ランキング2位、世界19位)の春村・Aアンドレア・オルトラを再起不能にさせたうえ、日本1位ならびにコウアンの長官を務めていたミスターマチムラを1対1で下し、殺したと聞く。

 

 「十王」の一人を殺す程の力を持つ犯罪者だと?ウヅキが殺られるわけだ。サクヤキリサメ、おめェはいったい何なんだ……!?


 日本で起こったことを簡潔に聞かされた後、俺はギルド長たち以外にも同席している金髪眼鏡の壮年男、ベイガム・マディランに正式な依頼を出された。

 生死は問わない、サクヤキリサメを潰してほしいと。憎しみでぎらついた瞳、ガサガサの声、漂う負のオーラからして完全に私怨による依頼だ。

 この手の依頼は基本受けないようにしていたのだが、俺としても今回は黙っちゃいられない事情ゆえ、依頼を受けることにした。

 腕の立つうちのギルド所属、それも弟分として接してきた探索者が殺されて、心中穏やかでいられるわけがない。協会も俺と同じ意見らしく、トップランカーおよび「十王」候補にまで上りつめた探索者を殺したサクヤキリサメを超危険人物とみなし、処理する方針を発表した。


 そして奴の処理役を頼まれたのがこの俺、ということになる。各ギルド長が、ミスターベイガムが、アメリカが。サクヤキリサメを倒せと俺の背中を押した。

 言われなくともやってやるさ。うちのギルドの者を手にかけた報い、アメリカを舐めたことへのけじめはしっかりつけさせてもらう……!


 翌日早朝。アラスカ州にキリサメの住居があると聞きつけて、ギルドが手配した飛行機でアラスカの地にやってきた。住民たちの被害を考慮して、人気が一切無い更地に移動。俺の「念動力テレキネシス」は数キロ先の獲物を捕らえることが出来る。同行者の中には奴の気配を感知出来るEBBの捜査官がいるから、ここに立って待つだけでいい。

 そして大きな鳥に乗って空を飛んでいる奴を発見して、「念動力」でこの地へ引きずり下し、今に至る……。


 ここまでの戦いを通して思ったこと。俺が言うのもなんだが、デタラメな野郎だ、キリサメの野郎は。想像の斜め上を超えてやがる。体質の問題上いきなりフルパワーを出せないとはいっても、徐々にギアを上げ続けてる俺の力を次々と簡単にいなしてやがる。ウヅキを殺したって話に信憑性がますますついてきた……!

 

 (やるな……だが、世界最高位の探索者の力は、こんなものじゃないぞ!!)


 今出せる全力の念動力を発動、キリサメをこっちに引き付ける。引き付けたところで素手か魔術かで一気にケリをつける―――


 ―――――


 な…!?俺が、奴の方へ引き寄せられてるだと?アイツ、俺の「念動力」を逆に利用して、攻撃してくるつもりか!なんて奴だ………馬鹿げてるにもほどがある力を発揮しやがる。

 面白ぇ、俺に正面からぶつかって来る人間は、おめェが初めてだ!サクヤキリサメ!!

 迎撃のパンチを放つも巨体に似合わぬ機敏な動きで躱され、カウンターパンチをくらい、地面におもいきり激突した。

 この俺が、人間相手に血を流してやがる………何年ぶりだ?体中が痛ぇ、「耐久強化」を使ってるにも関わらずだ。レベルMAXじゃなかったら俺の首は千切れてたかもな………えげつない威力だ。ウヅキもコウアンのミスターマチムラとの一対一を制したってのも頷ける。

 コイツは強い。「十王」の一二を争うほど、もしくはそれ以上か。


 「―――――」


 何だ……俺が見上げている?あんな殺戮犯罪者をか?バカな、俺はディラン・バッキンダン、世界でいちばん強い探索者だ!

 俺を見下ろしていい人間なんか、この世に一人もいてはならない!!


 「――次こそは俺の攻撃ターンとさせてもらうぜ。二つある固有スキルのうち一つ、攻撃技に特化した俺の切り札、その一つ目 」


 『飛刃ひじん


 スキルを発動した瞬間、剣や槍、斧、大振りの剣といった幾種類の刃武器が、俺の周囲に顕現した。刃物は全て実物ではない。俺のエネルギーを糧に具現化させたものだ。遠距離型の斬撃を魔術として放つ攻撃特化のスキル。一つ一つが雷や光で出来た刃。


 「行け―――」

 

 俺がゴーサインを出した瞬間、顕現した全ての刃がキリサメ目がけて飛んでいった。


 「力の差と、数の差に絶望させてやる、小僧が」


 雷・電気で出来た刃物たちが、キリサメを取り囲み、一斉に襲い掛かる。刃一つ一つの威力がさっき奴を空へ押し出した光の奔流と同じ。それをいくつも同時にくらえばいくら奴でも終わ―――


 「ぬゥううン!!」


 獣のような咆哮とともに、奴は回った。思いきり回った。一回転どころじゃない。二、三、五………もっとだ。終わらない。止まらない。ずっと猛スピードで回り続けてやがる。

 まるで竜巻ハリケーン、魔術で出来た刃がいくつもいくつも打ち落とされ消滅していく。


 「まだだ、俺の攻撃は激しくなるぞ……!」


 溜めていた力を、ここで解放する。出し惜しみしてる場合じゃない。再び「飛刃」を発動。今度は百を超える数の斬撃・刃物を一度に顕現させた。


 「切り刻め!!」


 俺の号令に百を超える刃が一斉に飛んでいった。その超回転もそう長くは持つまい。回転が緩んだが最後、お前は蜂の巣と化す。


 ギギギギギギギギギギギギギギン!!


 ―――

 ――――

 ―――――


 「………馬鹿な!?」


 奴の猛回転は未だ止まず。俺の超攻撃があんなデタラメな動き一つで防がれてる。一つも通用していない。

 

 「~~~~~っ」


 プライドに火がつき、スキルで顕現した武器(両手剣ロングソードを手に俺自らが攻撃に出た。


 「せらァアア!!」


 両手持ち、頭上まで振り上げからの一気に振り下ろし。脳天に当たれば頭蓋が真っ二つに割れるだろう。脳天以外でも当たれば致命傷は避けられまい。つまり俺はこの男を殺すつもりで―――


 「やあっとテメェが来やがったか」


 ドゴン!! 渾身の一振りが空ぶると同時、腹部にえげつない衝撃をくらった。

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