第66話

「ゲホッゲホッ……! クソっ、バケモノどもが……!」


◆生きてるゥ〜

◆お前もしぶといなw

◆なんで幻獣が統率取れてんだよww

◆ぶっ殺すと心の中で思ったら、すでに自分が殺されそうになっているんだッ!

◆今ノハ危ナカッタ……

◆死んでも最後までやり遂げろよ?

◆逃げるのは許さん

◆なんだよこの幻獣動物園w

◆地獄へようこそ!


 ベヒーモスに投げ飛ばされてドアに突っ込み、部屋の奥までいって地面にひれ伏す。

 しかしただの部屋ではなく、ギラギラとした太陽が睨み、灼熱の砂の海が永遠と続くの部屋であった。


「部屋に砂漠? いや、ダンジョンと同化してるのか……。なら――」


 そんなことを考察している矢先、地面から大きなモフモフの耳を生やし、クリクリしている狐が現れる。


『ルルルルル……』


◆砂漠の狐?

◆普通よりでかいフェネックだな

◆かわよ

◆剥製にして飾りてェ〜

◆俺は標本派かな

◆待て、ここにいるということは……

◆逃げろ殺し屋!


 ――ザザザザザザ……!!!


 フェネックの周囲の砂が波打ったと思うと、次の瞬間砂が隆起して襲いかかってきた。

 刀やクナイが砂に効くわけがなく、ただただ逃げ回ることしかできていない。


「ほんっ、とうにっ! この家イかれてる!!!」


 降り注ぐ日差しと吹き荒れる砂混じりの熱風、そしてどこにいても襲いかかる砂を相手に、もはや殺し屋の余裕は消え失せていた。

 毒を吐いている暇もなく、次の攻撃が仕掛けられる。アリジゴクの狩場のように円錐状に地面が沈下。さらに暴風も吹き荒れ、中心に引き込まれそうになる。


「ダンジョンってわかったならこっちのもん……! 【縮地】!!!」


 パッとその場から姿を消し、嵐の外へと飛び出して逃げることに成功する。が、


『オ、オ、オ、オ、オ』

「あ、あぁ……」


 小さい山なら一口で食らうことができそうなほど大きな口を開ける軟体生物が、空から降ってきた。


◆サンドワームじゃね!?!?

◆怖eeee!!!

◆キッ……

◆↑は? ワームちゃんは可愛いだろうが!

◆おい誰かレールキャノンもってこい

◆サンドワーム「巻き込まれろよ……!」

◆オワタ

◆解散解散

◆誰か殺し屋の心配したれよw

◆さ、流石に同情するよ……


 ――ボシュゥゥウウウウンッッ!!!!


 超巨大なミミズ型幻獣……もといサンドワームは殺し屋を喰らうことなく、地面へと潜っていった。

 呆然とする殺し屋は一瞬頭が真っ白になるが、一つの答えにたどり着く。


「(外した……? いや、違う。影で囚われた時も、牛の幻獣に掴まれた時も、今この瞬間だってそうだ。殺そうと思えば殺せてた。今、わたしは――……!)」


 ギリッと下唇を噛み、己の無力さを実感する。

 別個体のフェネックや棘の生えた大きなトカゲが現れたり、サンドワームと機会を窺っているが、殺し屋は再び立ち上がった。


「オモチャになるつもりはない……! 絶対リベンジに来てやる……! 【神脚蹴り】!!」


 魔法を使い、ドンッと大きな音と砂煙を立ててその場から高速移動をし、元のドアを抜けて廊下に脱出する。

 外にはまだ幻獣がいる。正面玄関も塞がれているが、殺し屋には考えがあった。


「(リビングに暖炉があった。あそこなら直接外と繋がっているはず!)」


 廊下を抜け、リビングへと到着した殺し屋は再び霹靂鳥やベヒーモスにロックオンされる。だが、決死の思いで攻撃をくぐり抜け、暖炉に飛び込んだ。

 灰まみれになるが、考える暇もなく煙突を登って行く。そして――


「や、やった! ……え」


 目の前に広がるのは、雲ひとつない星空。……雲ひとつない。だが、眼下には雲がある。

 地上が霞んで見えないほどの標高の高さ。そして空にはジンベイザメやリュウグウノツカイ、巨大なホウネンエビや燦々と輝く白銀のガが空を飛んでいた。


◆バ ッ ド エ ン ド

◆幻獣一同「逃げるな卑怯者ォ!」

◆ヤバすぎだろこの家マジで……

◆教訓・サクたんには関わるな

◆〜Fin〜

◆今サクたんに関する依頼を全て破棄しました☆

◆バカな殺し屋を失ったな……

◆お前のことは忘れないゾ

◆大儀であった


「あ、あぁあ……」


 殺し屋は脱力して、その場にへたり込んで動く意思・逃げる意思をなくしたのであった……。



###



「ふわぁあああぁあ……。よく寝た〜〜!!!」


 朝目覚めた僕は大きく伸びをし、寝ぼけ眼で部屋を見渡す。

 すると、あまり部屋から出てこないペットのフェネックが首を傾げながら見つめていた。


「珍しいね! えへへ、みんなおはよ〜」

『ルルゥ、ルルルゥ?』

「なになに? 付いてきて欲しいの? 甘えん坊さんだなぁ〜」


 僕のパジャマを咥えて引っ張り、リビングへと連れていかれる。

 何かあるのかとキョロキョロしてみると、何やら天井に見慣れないものがぶら下がっていた。


「…………テ……コロ、シテ…………」

「……黒いてるてる坊主なんて吊るした覚えないけどなぁ。ま、とりあえず朝ごはん食べよ〜♪」

「……ヒイン……」


 僕は気にせず朝ごはんの用意をするのであった。



[あとがき]


殺し屋襲撃編終わり!

今回出てきた新幻獣ちゃんら、今後出るか出ないかわかんないからここで紹介するよ〜!

(※読まなくても大丈夫です)


◾︎鳴砂狐ヴァイドフェネック

 振動を使って岩を砕いたり、音響浮遊方を使って砂を操るフェネックだぞ。歌が上手。可愛い!


◾︎サンドワーム

 みなさんおなじみデッケェやつ! 胃の中は虚空間となっているらしく、出てこれた生き物はいないみたいだ。


◾︎オオモロクトカゲ(仮)

 現実にいるモロクトカゲのでかいver。体表の溝を使い、圧縮した血をそこに流して加速・放出するトカゲ。???『俺はお兄ちゃんだぞ!』


◾︎リュウランカゲロウ

 幼体はアリジゴクと同様に罠を張っているが、嵐を操って広範囲の生命体を罠に落とす。成体は「嵐の神」と称されているぞ。


◾︎豊潤蝦ホウジュエビ

 現実にいるホウネンエビのバカデカverだ。この幻獣が通過した田畑は未来永劫豊作になるらしい。


◾︎ヒルメヤママユガ

 燦々と輝くガ。光線を発射したり、触れたら発火するくらいの高温の鱗粉を振りまく。「日の女神」と称されている。モフモフで可愛いぞ!


こんなもんですかね!

次回もお楽しみに〜。

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