名人の領域
将棋とは、常に相手の数手先を読む競技である。それが名人ともなれば、先読みの精度は更に高くなる。で、あるならば。この二人が壮絶な読み合いを繰り広げるのも、当然の結果と言えるだろう。
「……参った!」
後に世紀の一戦と語り継がれる将棋の対局。白旗を揚げたのは、顎ひげを蓄えた体格の良い男性・亀田名人だった。
「ありがとうございました」
そう返したのは、対戦相手である茂手杉名人。イケメン棋士として女性ファンの多い彼は、爽やかな笑顔を浮かべる。
「がはは!まさか俺が読み合いで負けるとはな!気に入った!茂手杉君、今夜うちに飲みにこないか?カミさんもあんたのファンなんだよ」
「それは光栄です。では、是非」
彼が答えた瞬間、亀田は茂手杉を張り倒した。その様子を見た周囲が静止に入る。
「離せ!俺くらいの名人になりゃあこの後の展開も読めたんだよ!こいつ、うちのカミさんと浮気しやがった!」
「やれやれ。あなたが読めたのはそこまでですか。やはりこの対局、僕が勝つべくして勝ったらしい」
頬を擦りながら立ち上がる茂手杉は勝ち誇ったように笑う。そして懐から携帯電話を取り出した。
「僕はその浮気がばれて妻に半殺しにされるとこまで読みましたよ?」
そう言ってすぐ、彼は妻へと電話をかける。そして、まだしてもいない浮気の言い訳をつらつらと並べ始めるのだった。
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