枯れ尾花を揺らす者
「あのー……この先の廃寺に幽霊がでるって話。本当なんですか?」
私の経営する小さな民宿を訪れた客が、夕食の時間にそんな事を聞いてきた。とても若い男女の客で、多分カップルか何かだろうと私は思った。
「ええ、まあ。……あまり大きな声では言えませんが、以前あの寺の敷地内で首を括った人がいるとかなんとか。ここを訪れたお客様の中にも、苦悶に満ちた男の姿を目撃したという方々が何人もおります」
「ええー!」
「コワーイ!」
大袈裟に彼等は驚いてみせた。だがそれは、自分たちが楽しむ為の雰囲気作りにも見える。きっと食事の後はそこに肝試しでもしにいくつもりだろう。ウチにくる客はほとんどがソレ目当てなのだ。
私は二人への夕食を出し終えると、裏手に回りアルバイトとして雇っている地元の青年に声をかけた。
「この後お客様が二人、あの寺に行くらしい。だからいつもみたいに適当に怖がらせてやってくれ。若いし、きっとSNSとかで騒いでくれるだろう。……全くいい時代になったもんだよ。広告一つにウン十万とか払ってたのが馬鹿らしくなるね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます