究極のナルシシズム

 それが恋だと自覚したのは最近になってからだった。何気なく眺めていたスマートフォンのフォルダ。そこに写っていた一人の男性が私のハートを撃ち抜いた。だが、同時にそれは叶わぬ恋だということも示していた。

 教師と生徒だとか、妹と兄だとか、そんな次元の話ではない。私は彼に会うことは出来ないのだ。絶対に。

 ならばせめてと、画像フォルダの中にあるとっておきの一枚、彼の自撮り写真に私は優しく口付けをする。この愛が伝わるように優しく……。そんな願いを込めながら、私はゆっくりと目を閉じた。


「…………うわっ!」


 目を覚ますと、俺は驚きのあまりスマートフォンを投げ出した。なにせ、いきなり自分の自撮り写真が眼前に現れたのだ。驚きもするだろう。


「あれぇ。ちゃんとベッドで寝たはずなのになあ?それに、もしかして俺スマホにキスしてなかったか?……うへ」


 最近、このようなことが増えた。もしかして何かの病気だろうか?不安に駆られた俺はすぐさま病院へと向かった。

 一通りの検査をした高齢の医者は、俺に向かって淡々と診察結果を告げた。


「あー。解離性同一性障害……まあ、いわゆる『二重人格』というヤツですな」

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