第76話  高いハードル?

 茉白ちゃんは心配そうに見ている。


「石田美波ちゃんだって」


「え………」茉白ちゃんは固まった。


「美波ちゃん、ゴメンね書き込みを読んでなくて。僕は原稿を書くのに必死だから、コメントを読む時間がないんだよ」


「そうだったんですか………知りませんでした………ずっと無視されてると思ってました………」


「ごめんよ、どんな話か聞かせてくれるかなあ。茉白ちゃんも僕の横に来て一緒に聞いてくれるかなあ」


「うん、いいよ」茉白ちゃんは僕の横に座った。


 美波ちゃんは何度も瞬きしながら目の前の僕らを見ている。


「さあ、話してみてよ」僕は優しく促す。


「私と仲間5人でバイクのサークルを作っているんです、でも私以外は学校に内緒で免許を取ってます、許可が降りないんです。もしバレたら処分を受けてしまいます」少し悲しい表情だ。


「だから学校にバイクのクラブを作って欲しいと嘆願したんです。クラブに入ったら免許を取る許可をもらえるようにお願いしました。学校はそのクラブが有意義なら認めてもいいと言われました。そして星七先輩にアドバイスしてもらったらと勧められました。だから何度も書き込みをしたんです、でも無視されていると思ってました」少し俯いた。


「そうなんだ、ゴメンね気が付かなくて」


「美波ちゃんだっけ、どうして学校で話してくれなかったの?」茉白ちゃんは不思議そうに聞いた。


「え〜!だってみんなが認める校内のベストカップルだし、リア充だし、近寄り難いし………インキャの私なんかがお願いとかハードルがビルよりも高いです」


「クフフ………」僕は思わず吹き出してしまう。


「ほら、やっぱり笑ってる」唇に力を込めて怒っている。


「違うんだよ、ゴメンね、僕も高校に入りたては自分の事をインキャだと思ってて周りが眩しかったよ、だから美波ちゃんと同じさ」笑ってしまった。


「嘘でしょう?」美波ちゃんは瞳を大きくした。


「私もそうだったわ、だから人前に出る事が嫌だったの」微笑んでいる


「え〜………校内最高のベストカップルがインキャだったんですか?」


「そうだよ」


「どうしたらそんな風になれるんですか?」美波ちゃんは首を横にした。


「多分、茉白ちゃんと付き合えたからかなあ………僕は茉白ちゃんから沢山の勇気や幸せを貰った。言うのは恥ずかしいけど、やっぱり恋の力かもしれないな」


「私もそうだわ、星七君に素敵な人って思われたくていっぱい頑張ったかも………」


「そうなのか………私はお二人が美男美女だからなんの苦労もなく、皆んなから祝福されてカップルになったんだと思ってました」


「美波ちゃんも誰かを好きになったら、きっと力が湧いてくると思うわよ」


「マシュー先輩、私でもなれますか?………その………もっと綺麗に………」


「うん、大丈夫よ、安心して」茉白ちゃんは優しく微笑んだ。



「ところで気になったんだけど、どうやってここに来たの?誰かに聞いたの?」


「私、星七先輩に直接話をしようと思い、一大決心をして図書館へ行ったんです。ドアを開けようとしたら中の話が聞こえてきました。伊豆に二人で行くことを聞きました、でも場所がどこかは分かりません。そんな時一真さんんがきたんです、一真さんのバイクはウチで買ってくれたんですよ」


「君のお家はバイク屋さんなの?」


「あ、すみません、私の家は石田オートってバイクショップなんです。バイクの好きな人が集まってきます。だからバイクサークルを作ったんです、でも私以外は学校に内緒で免許を取ってます、もしバレたら処分されるので内緒なんです。みんな同じ東栄高校なんですけど、バレないように校内では話をしないようにしてるんです」


「そうか………うん………それで?」


「一真さんはナビの使い方が理解できてませんでした、私が教えたんです。その時にここの住所が分かったんです。私は住所をこっそり記録しました」


「それでこの場所が分かったんだ」茉白ちゃんは納得している。


「私思ったんです、星七先輩とマシュー先輩の決定的瞬間をカメラで撮ったら、きっと私達に協力しないと仕方がなくなると思ったんです、もちろん浅はかな考えだとは思います、だけど………」


「それでここに来たんだ、もしかしてバイクで来たの?」


「はい、私の愛車ハンターカブで来ました、近くに停めてます」


「ゴメンね美波ちゃん、僕が早く気が付いていればこんなに遠くまで来なくて済んだのに………」


「いえ、私が勝手に思い込んで来ただけですから」


「話したい事は分かったよ、どうしたら良いか考えてみるよ、少し時間をくれないかなあ………」


「本当ですか?ありがとうございます、皆んな喜びます!」


「待ってよ、本当に力になれるかまだ保証できないから」


「話を聞いて頂いただけでも、ここに来た甲斐がありました。あのう………星七先輩の連絡先を聞いても良いですか?」


「うん、もちろん良いよ」僕はスマホを出して美波ちゃんと繋がった。

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