第74話 ラブホ?

 一人で伊豆までの道を走るのは気持ちよかった。初めての冒険みたいで楽しくなっている。時間に余裕があったので綺麗な景色や面白い物があると、一眼レフカメラで写真を撮った。不思議に思う事があるとパッドを出して検索した。


「こんな事が出来るのは全て琴音さんのお陰なんだなあ………僕は何て恵まれてるんだろう………」改めて琴音さんに感謝した。


 ナビを見ながら別荘へ到着すると可愛いウッドハウスだった。少し広めのウッドデッキが付いていて、茉白ちゃんが待っていたように手を振って迎えてくれた。


「星七君………よかった無事に到着してくれて」ほっとした表情だ。


「やっと来たか星七っち、待ってたぜ!」サングラスをおでこに乗せた佳さんがニヤニヤしている。


「それはどんなキャラ何ですか?」


「もちろん、イケてる女スパイ!」変なポーズで固まっている。


「ぷっ………すっごく分かりにくいです」僕はクスクス笑った。


「なんだ………いいと思ったんだけどなあ………そんな事よりバーベキューの準備を始めるから手伝って」ウッドデッキの上を片付け始めた。


「了解!」リュックを中に置いて佳さんの手伝いを始める。


 茉白ちゃんはキッチンで野菜を切っている。僕は炭を起こし始める。火起こしは結構難しかったが何とかなった。


「さあ、始めようか!………でも遅いなあ………」


 佳さんは道路の方を見ている、すると一台のバイクが入って来た。


「あれ?そいとげ?」僕と茉白ちゃんは不思議そうにバイクを見た。


「遅いぞ一真!」佳さんが睨んでいる。


「御免なさい………途中で道に迷っちゃって………」


 僕はホッとした、琴音さんへそいとげも一緒だと言ってしまったからだ。僕はそいとげを見て嬉しくなった。


「さあ始めよう、茉白の誕生パーティを!」


「星七君、そいとげくん、そこのクーラーから好きな飲み物をとってね」茉白ちゃんが薦めてくれた。


「「ありがとう」」僕とそいとげは飲み物を選んだ。


 佳さんは缶ビールをプシュっと開ける。


「えっ、佳さんはビールなんですか?」


「うん、星七っちも飲む?」


「いえ、僕は未成年ですから」


「そんなの大丈夫だよ、私はいつもママの晩酌に付き合ってるからね、バーベキューにはやっぱりビールでしょう!」


「いいなあ………」そいとげがのみたそうだ。


「一真はまだダメだよ」佳さんが睨む。


「は〜い………」そいとげは残念そうコーラをプシュッと開ける。


 僕と茉白ちゃんもコーラを開けてみんなで乾杯した。


「あのう………これ………プレゼントの代わりです」


 そいとげは和菓子を差し出す、ケーキのように蝋燭を立てられる。


「おっ、いいねえ一真、よくできてるじゃん」


「ありがとうそいとげくん」茉白ちゃんは嬉しそうに蝋燭を立てて火をつけた。


 茉白ちゃんが吹き消すとみんなでハッピーバースデーの大合唱だ。


「ねえ、星七っちのプレゼントは?」佳さんが聞いてきた。


「えっ………」僕は項垂れる。


「佳ちゃん!………いいの星七君は、私の為にこんな遠くまで来てくれたんだから」


「ふ〜ん………」佳さんはニヤニヤと僕を見ている。


 バーベキューは楽しく終わりになった。みんなで片付けて部屋へと入る。


「さて………一真、そろそろ行くか?」


「いいんですか?本当にいいんですか?」


「しっかり準備してきたか?」


「はい!」そいとげは緊張して唇を噛んだ。


 僕と茉白ちゃんはキョトンとしている。


「では、私と一真はこれより視察に出発する、後の事はよろしくな星七っち!」


「えっ、何処へ行くんですか?」


「ラ・ブ・ホ、ねえ一真」


「お供いたします」敬礼をしている。


「佳ちゃん、何言い出すの!流石にそれはダメでしょう!」茉白ちゃんは普段見せたことの無い厳しい表情だ。


「大丈夫だよ、今書いている小説の取材で見てくるだけだから、なあ一真」


「はい、残念ですが………それでも嬉しいです」コクリと頷いた。


「本当なのそいとげ君!」茉白ちゃんは強い口調だ。


「俺はまだ………彼氏に昇格出来てないんで………」寂しそうに言った。


「佳さん、もしかして僕と茉白ちゃんを爛れた関係にさせようと思ってませんか?」


「それは………ヤホー君次第だよ」赤松部長、いやセクハラ部長が復活した。


「僕は部長の策略には乗りませんよ」少し笑った。


「ヤホー君、このキャラは君にプレゼントするよ、そうしたら茉白に安心してセクハラできるだろう?」ニヤリと横目で見ている。


「佳ちゃん!」茉白ちゃんは佳さんを思いっきりつねった。


「痛い!痛い!一真、早く逃げるよ」


 二人は慌てて逃げて行った。僕と茉白ちゃんは顔を見合わせる。少し気まずい雰囲気になってしまった。

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